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   午後一時開会
○委員長(中島眞人君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、浜四津敏子君及び松崎俊久君が委員を辞任され、その補欠として山下栄一君及び本田良一君がそれぞれ選任されました。
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○委員長(中島眞人君) 休憩前に引き続き、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 午後は、まず本案について参考人の方々から意見を聴取することといたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず江草参考人から御意見をお述べいただきます。江草参考人。
○参考人(江草安彦君) 江草でございます。少々時間をいただきまして、意見を述べさせていただきたいと思います。
 私は、医療関係者審議会のもとに設置されました欠格条項検討小委員会の座長を務めまして、昨年の四月から五度にわたって審議を続けてまいりました。その経過を思い出しながらお話をさせていただきたいと思います。
 この欠格条項検討小委員会は、それぞれ医療を提供する側の専門家、医療に関する学識経験者、医療の提供を受ける側の方々、さらには障害者関係団体の皆さん、こうした方々の御意見を求め、ヒアリングを行いながら検討を進めてまいったのでございます。
 その要点をまず申し上げたいと思います。
 見直しの具体的な方向につきましては、一般的に心身に障害のある者について業務の一部を適正に行うことが可能である場合がある、心身の障害を絶対的欠格条項として一律に門戸を閉ざすことはよろしくないと、こういう考え方が一つあるわけでございます。一方では、医療は患者さんに対する医学的侵襲、つまり診断、治療などでございますが、医学的侵襲を含むものでありますから、安全かつ確実にこれを行わなければいけない。この二つのものを満足させるような結論を得ようということが小委員会での流れであったわけであります。その内容を少しずつ御説明をしてみたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、一律に門戸を閉ざすことはよくないという場合には、一律じゃなければどこまでいいのかということになるわけであります。
 そこで、私どもは、細かくそのことについて議論をしたわけでございます。その議論の中には、常に患者の安全の確保ということが念頭にあるわけでありますけれども、例えば、我が国での議論はさておきまして、外国の例、米国、英国、ドイツ、スウェーデンの例でございますが、そこでは一体どのような形で欠格条項的なことを取り上げておるのだろうかということであるわけであります。そうしますと、それらに共通したものは、患者及び公衆に対する安心感、安全、こういうところを強調していることがわかったのであります。
 それは、違う表現でございますと、患者さんと医療提供者との側に信頼関係がなければいけない。信頼関係を確保するためには意思が疎通しなければいけない。ところが、意思の疎通はお互いに言葉で話し、目で見、そして耳で聞くのが一番よろしいかと思いますけれども、例えばそれを手話によるとかあるいは口話法を使うとか、あるいはその他さまざまな機器を使うことも可能ではないかというふうなことから、信頼は必ずしも一般的な信頼を確保する方法でなくてもいいのではないかというふうなことも議論をしたのであります。
 そして、では見直しをするとなれば相対的欠格条項ということになるわけでありますが、相対的欠格条項の運用のあり方についても活発に議論をいたしました。もし見直しが進むと、それまで医療に従事することを志そうとしていたけれども絶対的欠格条項があるために断念していた、この人が志願することもあるだろう。そのときに、みずからの進路を選択したり、みずからが行い得る医療行為の限界を判断するためには、予測可能な運用基準がなければだれがこれを決めるのかということになるわけであります。
 この運用基準についても議論をしたわけでありますけれども、これも病状が違う、あるいは時間がたちますと病状が変わってくる、障害が変わってくる。そしてまた一方では、医療の水準や障害者の障害を補う技術の水準が変わってまいります。そういうことを考えますと、枠にはまったような相対的欠格条項を設けるのではなくて、その都度患者さんの安全ということを考えながら、医療の厳粛さを考えながら判断を積み重ねて、その積み重ねた結果がやがて現実的な判断基準になるのではないか、こういうふうなことになったわけでございます。
 もう一つ重要なことは、医師あるいは看護婦、歯科医師、こうした職業は国家試験を受けて当然その資格を認められるわけでありますが、それ以前に、六年間前後の医学生あるいは歯科医学生あるいは看護学生としての生活を送ります。その臨床実習をどのような形で体験したのかということも非常に重要なことになるのではないかということも議論したわけであります。
 したがいまして、見直しに付随して考慮すべきこととしては、教育環境の整備、あるいは第一次的に障害者を受け入れることになるのが大学等の教育機関であるわけでありますが、この受け入れのための環境整備をどのように進めるかというふうなことも同時並行して考えなければ、この欠格条項の見直しは絵にかいたもちになるのではないか、こういうことも議論されたのであります。
 いずれにいたしましても、小委員会は、障害者に対して医療の世界への門戸を開放するという結論を導き出したわけでありますから、これについてはまことに画期的であったと喜んでおるところでございますが、問題は、これをどのように浸透させるかというところに今後の問題があるのではないかというふうに考えております。
 以上であります。

○委員長(中島眞人君) ありがとうございました。
 次に、金子参考人にお願いいたします。金子参考人。
○参考人(金子晃一君) 金子でございます。私の方は、お手元のレジュメにございますように、新潟県立小出病院といいまして自治体系の病院で、総合病院の中で精神科の医者をやっておる者でございます。
 本日は、精神障害など障害を持つ患者さんの医療を担当しているという医療提供者側としての立場、また医師という資格を持っているという医療職の一員として、今回の法律案に関しまして一言御意見を述べさせていただきたいと思っております。
 私のところにも、現在外来の受け持ち患者さんが約七百名ぐらい個人的にいらっしゃいますけれども、その中にも医療職の方はいらっしゃいまして、幾つかのことがございました。
 例えば、ある看護婦さんは、精神分裂病という精神疾患を発病されて、非常に激烈な幻覚、妄想状態になりました。残念ながら、非自発的、つまり強制的な入院治療もやむを得ないような状態になったことがございます。ただ、この方に関しましても、十分に休息をする、また適切な治療を行うことによって障害を残さずに病気は治癒しております。それで、現在はきちんとお勤めをなさっています。
 また、最近の事例でございますが、医者の中にも当然ながらうつ病などになる方もいらっしゃって、約半年間、適正に業務が行えないという状態になった方がいらっしゃいました。ただ、この方に関しましても、きちんと治療をした結果、病気の方は治りましたし、またストレスを感じるという環境を調整するということによって、つまり職務の場所を変える、質を変えるということによって、その方の能力が十分に発揮されるような場所で現在も医者を続けていらっしゃいます。
 逆に、ある検査技師の方は、職場の方から見ていわゆるうつ病の症状が非常に強い、早くかからせたいんだと。ただ、御本人はそういったように精神科にかかったりすることによって自分の検査技師としての資格が奪われてしまうのではないかと非常に不安になっていらっしゃいました。結局は、その方は医療にかかる機会を逸したまま首をつられて亡くなってしまいましたけれども、そういったような、病気になった、障害を持ったことによって自分の資格が奪われてしまうのではないかというような危険性というか、危惧を御本人たちが持ってしまうというのは非常に不幸なことだというふうに思っています。
 今回の法律案に関しまして、評価できる点を幾つかまず述べさせていただきます。
 一つは、絶対的な欠格事由から相対的欠格事由へと改正されたことです。障害者の方々の自立と社会参加という理念に基づいて、絶対的な欠格事由、つまり一律に資格を与えないということではなくて、相対的な、個別個別なその方の状況に合わせた資格のあり方を検討するということは評価に値するものと思っております。
 それから二点目は、相対的欠格事由の的確な運用ということでございますが、つまり、具体的な相対的欠格事由を的確に運用するということは、言いかえれば限定的に適用するということでもありましょうし、これは障害を持った方々にも資格取得に関して門戸を広げるものであると理解しております。
 三点目は、資格試験の欠格条項の廃止でございます。これは、いわゆる医師や歯科医師の国家試験受験資格に係る欠格条項がなくなるようでございますが、このことに関しましては、障害者の方々が自分の能力を生かした形で社会へ参加する可能性が広がったものと理解しておりますので、これについては賛同させていただきたいと思っております。
 それから四点目ですが、意見聴取手続の整備ということでございまして、資格喪失該当の障害者の方々に対してあらかじめその旨を通知して意見を聴取するというのは、障害者の方々の権利を尊重するという意味で非常に重要だと思っています。これについても評価をいたしたいと思っています。
 ただ、残念ながら、いまだ不十分であると思われるこの法律案についてネガティブな面を幾つか述べさせていただきたいと思っています。
 一つは、疾病と障害ということですが、疾病を主因とする障害、つまり病気による障害が多いわけですけれども、その疾病の症状が障害の程度に大きくかかわるものが多いわけです。つまり、病気が治ってくれば障害の程度も当然軽くなるわけでございまして、原則的には十分な休養と治療が優先されるべきであって、安易にそのときの疾病の症状による障害によって欠格というような適用をなすべきではないと思っております。
 二点目は、資格試験と欠格事由ということですけれども、資格試験に合格された方でも該当者には免許を与えないことがあるということになっておりますけれども、疾病が主因たる障害においては当然ながら、先ほども申し上げましたように、疾病に対する治療が優先されるべきであって、資格の取り消しが優先されるべきではございません。これは当たり前のことだと思っています。
 ただ、相対的な欠格事由につきましても、具体的なガイドラインをどう定めるかということが問題だろうと思っています。個々の事例について、一般的から個別的へ、抽象的から具体的へというのは非常にいいと思うんですけれども、ただ、社会規範や、例えば今回は医者の診断書が必要だということになっておりますけれども、その診断する医者の恣意的な判断要素が入り込む懸念があると思います。
 それで、大事なことは、診断に係る具体的で障害当事者にもわかりやすいようなガイドラインの策定が必要ではないかと思います。今後、早急に政省令とその運用に関するガイドラインの策定委員会を設置した方がいいと思いますし、それはまた障害を持った方々自身の参加を含むものであった方がよろしいかと思っております。また、このガイドラインは、障害を惹起する疾病に着目するものではなくて、つまり、例えば精神障害だからとかいうのではなくて、業務の遂行能力やその補助手段に着目したものになってもらいたいと思っております。その意味では、資格種別によって障害を特定するというのは望ましくないものと考えています。
 次に、意見聴取は免許権者からの独立性を持つべきと思っております。欠格を理由とする免許拒否処分には行政不服審査法が適用されるというふうに言われておりますけれども、免許権者の方々が指定する人だけではなくて、障害当事者を含め公平性や中立性に配慮する必要があると思っております。また、もう一つは、欠格にも期間限定という考え方があってもいいのではないかと思っております。つまり、障害の程度や補助手段によりまして、それも日々障害の程度は変わり得るものでございますし、また補助手段は進歩するものでありますから、業務遂行能力というのがそれにつれて変わってくるわけです。ですので、ぜひ期間限定のような欠格といいますか、免許停止の処分もあっていいのかもしれないと思っています。
 それからもう一つ、意見聴取の際には診断書作成医師を同席した方がいいのではないかと。ただ、当然ながら、これはその意見を聴取する障害を持った方々の求めに応じてということになるかと思いますけれども、先ほどもございましたが、その方々と信頼関係がある治療関係を持っている医者がその方のことをきちんと的確にまた判断し御説明する機会も必要なんではないか、診断書一枚だけでは不十分だろうと思っております。
 それから次ですが、異議申し立てと再審査の規定。一回、欠格ということになりますと、なかなかその後の手だてがございませんように感じます。一定期間の免許停止処分などにつけ加えまして、免許拒否処分に関して異議申し立てと再審査の規定が必要だろうと思います。
 さて、その次ですが、先ほどの江草参考人からもございましたが、教育や就業環境の整備。つまり、いわゆる卒業試験とか国家試験の場合は欠格条項がないわけですけれども、入学の時点で障害を理由にはねられてしまっては問題があろうかと思いますから、ぜひその旨を、厚生労働省管轄ではないかもしれませんけれども、文部科学省などにおいて各教育機関にこの趣旨が周知徹底されるような施策を望みたいと思っています。
 それから、最後ですけれども、見直し規定が必要だと思います。我が国が今後、真のバリアフリー国家を目指そうとするならば、将来的に欠格条項をなくして、より個別性に着目した対応に移行すべきです。また、相対的欠格に関する具体的なガイドライン策定や、また教育のあり方、就業環境の整備などにおいては、今後一定期間を要します。この法律が国民と障害を持った方々にとってさらによいものになるためにも、見直し規定や附帯決議が必要であると考えています。
 医療職の資質や業務遂行能力というのは、疾病や障害に特定されるものではなく、その病気や障害を持った人が医療業務を遂行することによって、むしろ病気の方々についての理解や援助が推進されるのではないかと考えております。
 今回の法改正をきっかけといたしまして、障害を持った方々の完全参加と平等が実現することを希望しております。
 以上です。

○委員長(中島眞人君) ありがとうございました。
 次に、吉本参考人にお願いいたします。吉本参考人。
○参考人(吉本哲夫君) 御紹介をいただきました吉本でございます。
 御紹介いただきましたほかに、日本障害者協議会などの仕事をしておりますので、日本障害者協議会が出しました欠格条項に関する文書も先生方にお配りさせていただきましたので、御参考にしていただきたいと思います。
 今回の改正に当たりまして、私は大変大きな期待を持っているわけです。それは、この機会に、戦後さまざまな障害者施策ができた中での差別とかそれから偏見というようなものをなくしていく出発になればなというふうに思っているからであります。
 戦後、障害者、家族の努力もありまして、児童福祉法を初めとする大きな施策が制定、改善されてきました。
特に、国際障害者年は、御存じのように、これまでに例を見ない法制度の創設、改正もありました。しかし、全体を見ますと、障害者にかかわる法制度というのは、生活保護法に示されたような憲法規定が示されておりませんし、不服申し立て等の請求権も規定されていないというものであります。そうして、日本国憲法に示された権利としての社会保障という理念がどこにも位置づけられていないというようなことが大変大きな問題だと私は考えています。そのために、国民共通に享受すべき法制度から障害を理由に排除、差別されて、そして障害者のための法制度からも精神障害者など一部の障害者が除外されているという現状であります。
 今回の改正案では、確かに、御指摘が今ありましたような栄養士免許や調理師免許などでは障害を理由とする欠格条項は廃止することになりましたし、視覚、聴覚、音声言語の絶対評価をやめるということ、あるいは法律上の表現に障害の種類を含めない、さらには欠格の判断に、業務を適切に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができるかどうかという能力に視点を当てた位置づけをされているということなどは、私たちは評価できるものだというふうに思っています。
 しかし、さまざまな問題点がありますが、特に私は、この法改正の機会に障害者への一切の差別と偏見をなくしていくし、それから自立と社会参加を保障する出発にしてほしいというふうに思っています。これは、この法改正が非常に新しい方向での改正になっていくということの期待からでもあります。そして、国民は平等な社会参加の権利があり、差別と偏見をなくし、自立と社会参加を保障することを明確にして障害者が参画をして障害者施策を推進していく、そういう機関をぜひ設立してほしいというふうに思います。
 二つ目は、請求権の明記であります。
 先ほども指摘をしましたけれども、これは現実に障害者がさまざまな施策を受けるときに、窓口であろうがあるいはそういう福祉の機関であろうが、さまざまな圧迫を受けて実際に利用するということが非常にできないという状況がある。これは、請求権を明確に出して主張していく、そういうことを制度として保障していくことが必要ではないか。この法案でも、免許を与えられなかった場合に免許権者が求めに応じて意見を聞くということになっているというふうに見ておりますが、法改正に当たっては、これはもっと積極的に直接審査請求ができるような総合的機関をここでも設置されるようにお願いをしたいと思います。
 第三は、欠格条項から「心身の障害により」というものをどうしてもこれはなくしてほしい。これは、医師法などの改正案では、業務遂行能力の有無が資格制度取得の条件であるわけでありまして、心身の障害により業務が適切にできない者という表記をする必要があるのかということを私は申し上げたいと思います。歴史的に言えば、この文言を残すことによって現実に障害者は、苦しい思いを持って暮らしてきた障害者は、障害があるということは能力が劣る者という偏見をこの法律を残すことで合理化するのではないかという心配を私は持っております。
 確かに、このようなことを申し上げますと、実際に具体的に医師法の場合でも、取り組んでいけばやっぱり障害があるということで免許の取得が難しいのではないか、あるいは医師としての開業が難しいのではないかと、江草先生が先ほどおっしゃったようなことが起こることもないことはないと思います。しかし、これは全体として障害を理由にしてそういう規定をしていくのか、あるいは医師としての能力を重視した判定をしていくのかということで違っていくのではないか。
 私の経験からいいますと、ある養護学校から総合学園の私立学校に転校して医者になりたいという女性がありました。そして、成績が優秀で、無条件で医学部に転入できることになっておりました。ところが、入り口で医学部長が、あなたは松葉づえをついて医師になれるのかという指摘があって、結局は医師になることができませんでした。今回はその条文はなくなっておりますけれども、しかし資格を取得した後の医師となっていく場合に、そういうようなものが残らないのかということを私は危惧しております。
 同様なことは、国家公務員法や地方公務員法の中に、心身の故障により職務の遂行に支障があり、またはこれにたえない者は、その意に反して降任または罷免することができる、これは分限規定の中にあるわけですけれども、こういう指摘をしております。これは憲法と障害者
雇用促進法にも反するのではないか。こういうような法制度が、今度の欠格条項に限らずさまざまな形で存在していることをぜひ認識していただきたいということを申し上げたいと思います。
 今、アメリカ、イギリス、スウェーデンなど各国で障害者差別禁止法が制定されております。まさに世界の流れになってきております。アジア太平洋障害者の十年推進地域会議が実施した国際てんかん協会などの障害者国際組織へのアンケートでも、ほとんどが我が国では欠格条項は存在していない、あるいは絶対的な差別条項はないという回答が返ってきております。このような国際的視点に立って、障害を理由とする差別的な欠格条項の廃止に向けて抜本的な改正をされるように要請をしておきます。
 第四に、法律の見直しの問題です。
 障害者にとって重要であるにもかかわらず、この改正案は、一部の障害者と組織がインターネットで入手した程度でほとんど知らされておりません。討論は始まったばかりでありますし、障害者が参画した法案づくりをぜひ目指していただきたいと思います。そのために、この欠格条項見直しを早い機会に、大きな障害者団体の参加によって検討していただくことをお願いしておきたいと思います。
 最後に、障害者の差別と偏見をなくし権利を保障する総合的な権利保障法として、障害者基本法の全面的な見直しを行うようにお願いをいたしまして、発言を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○委員長(中島眞人君) ありがとうございました。
 次に、金参考人にお願いいたします。金参考人。
○参考人(金政玉君) 御紹介いただきましたDPI、障害者インターナショナル日本会議の金と申します。きょうは貴重な時間をいただいて、大変ありがとうございます。
 私ども、障害を持つ当事者団体の立場から、このたびの障害者に係る欠格条項の見直し改正案について意見を述べさせていただきたいと思っております。
 四点あるんですが、まず一点目です。
 障害者を含めた基準策定に関する検討委員会の設置を私たちは求めたいと思っています。
 このたびの障害者に係る欠格条項の見直しに当たっては、九九年の八月に旧総理府の方でとりまとめをされて、それが政府の方針になっておりますが、障害者の欠格条項の見直しに関する対処方針というものが出されました。幾つかの見直しのための対処方針があるのですが、私たちが最も注目をしていたのが、従来、障害者をあらわす規定によって一律に障害名などが特定されて制度から除外をされて門前払いになってきた経過があるわけですが、そういった障害者をあらわす規定から障害者を特定しない規定に改めましょうということが言われておったと思います。
 そういった障害者をあらわさない、障害者を特定しない規定ということが具体的に見直しなり改正案の中でどのような規定になっていくのか。それが具体的に運用にかかわる規定のところで最もあらわれてくるということを思っていましたので、このたびの改正案についてそういった観点から見るときに、確かに法律本文においては、心身の障害によって、各資格などの名称があるわけですが、資格などの「業務を適正に行うことができない者」とされている。そういった法律本文においては確かに障害名だとかを特定するような表記は特にありません。
 ただ、私たちが最も今関心を持っておるのは、実際の運用を定めるところになる省令事項のところであります。その省令事項に具体的に各障害の機能の名称が挙げられておりまして、例えば視聴覚障害ですね、音声言語、精神、それぞれの機能の障害によって、業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者というふうになっております。この障害の機能の名称が挙げられているということは、私たちが先ほど申し上げた、特に注目をしている、従来から挙げられていましたように障害をあらわす規定とどのように実際に違うのかどうなのかということが、私たちから見ると非常に判然としない、はっきりしないところがあります。
 やはり、従来、これまで絶対的欠格事由ということでそもそも試験を受けることができない、そういう制度上の規定によって門前払いをされてきた苦い経験があります。そういった中で、本当に具体的な基準づくりのところでこれから実際どうなるんだろうかということは、やっぱり障害を持つ当事者の立場からいいますと非常に大きな関心であり、また障害の機能ということが名称として挙げられていることによって、やはり同じように障害を理由にやっぱり対象の外に置かれてしまうんではないかという不安は引き続き持たざるを得ないというふうに思っております。
 私たちは、基本的に、こういった免許を与えるか与えないかという判断のときに、具体的にはどういう説明によって自分たちの申請に対する結果が出されるのかということが一番やっぱり大きな関心になると思うんですね。そういった観点からいいますと、私たちは、今の改正案においては実際の業務を適正に行えるかどうかを判断する場合に、厚生労働省が選任をされた医師と担当職員などの判断によって決定されるということになっておるものですから、やはりそういった枠を一たん超えて、いわゆる基準の策定に関する検討委員会というものをきちんと設置して、そこに障害当事者の代表なり法律専門家なり医師の専門家、そういった関係者の方々にきちんと入ってもらって、そういう検討委員会の判断によって最終的に免許を与えるかどうかのそういう決定がなされるという方が、本人にとっても納得のできる説明がつけられていくんではないかなというふうに思っております。
 それとつながる話でありますが、仮に国家試験に首尾よく合格したとして、免許を与えられるかどうかという判断のときに、実際にそういった臨床実習などの業務を行えるかどうかという判断の結果、免許を与えるか与えないかということになる場合があると思います。そういった国家試験を受けて合格したとしても、実際には最終的な免許が与えられるかどうかという判断がまたそこで違ってくるということがやっぱり起こらないような仕組みがどうしても必要だと思います。
 その仕組みをつくるに当たっては、本人の側に立って、本人の意見聴取をする場合に本人が信頼できる、本人の障害を十分に理解されているお医者さんだとか、そういった社会的なサポートを行う専門家、支援者などに同席していただいて、本人と一緒に、自分にとってはこういう例えば補助的な手段を使って業務を適正に行うことができるんだということを十分に主張できるような、そういった意見聴取の場を必ず設定していただきたいというふうに思っております。
 三点目に入りますが、このたびの改正案の中では、補助的な手段のこともそれなりに言われていると思います。ただ、この補助的な手段のための条件整備というものが、じゃどこまでこの改正案の中で言われているかといいますと、私たちから見ると非常に不十分なところがあるかと思います。
 簡単に言ってしまえば、補助的な手段と言ったときに、補助的な器具なり補助者をつけるということが、本人の必要に応じてそれがどこまで踏み込んで条件整備されるかということが問題であります。補助的な器具並びに要約筆記者だとか手話通訳者だとかそういった方たちを本人の必要に応じてつけて、資格取得前の教育養成機関だとか資格取得後の実際に医療現場に入っていく中で、事業者の側の受け入れ体制をどのように条件整備としてサポートしていくのか、公的な措置としてそれをどこまで行うのかということが最も課題になるのではないかと思います。そういった意味で、今の現行制度の中で国なり地方公共団体がしっかりそういう補助的な手段の条件整備を図るためのそういう法的な措置を行うようになっていくための担保がやはりどうしても必要なのではないかなというふうに私たちは思っています。
 特に申し上げたいのは、現行の障害者基本法が九三年に制定されて、障害者プランが二〇〇二年度末に終了するわけですが、既に来年でもう十年になろうとしています。その障害者基本法の中に、この欠格条項の見直しにかかわって、それにかかわるところで、例えば障害者基本法の第十条のところの在宅障害者への支援などについて規定されている部分があります。それは日常生活の制限を受けないために、日常生活用具の給付などについて第十条の二のところでは定められています。あと第十五条のところでは、障害者雇用の促進について定められています。そういった日常生活の支援と障害者雇用の促進にかかわる条文のところに、このたびの障害者の欠格条項の見直しに当たって実際の条件整備を担保するためには、国及び地方公共団体は障害者の資格などの取得に伴う社会参加の促進に必要な補助的な器具、補助者の配置などの適切な整備を図らなければならないというような事項、そういった表記をぜひ障害者基本法の関連条項のところに盛り込んでいただきたい、それを担保にして補助的な手段の条件整備を図ることがぜひ必要であろうと思います。
 そういったことが条件整備としてきちんとなされていく中で見直し規定をきちんと盛り込んでいっていただいて、一定期間の中での実際の具体的な事例を踏まえて、本人が必要としている補助的な手段を使って実際にそういう資格などを取得できるような事例がどのようにあるかないかということも含めて、実際にそれを検討していくための場として見直し規定をぜひ入れて、そういった検討会の設置などを、障害者、当事者の代表も含めてぜひ設置をしていただきたいというふうに思っております。そういうことで意見として述べたいと思います。
 以上です。
○委員長(中島眞人君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。

 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○阿部正俊君 それじゃ、委員長の指示でございますので、座ったままでさせていただきます。
 今もちょっと迷っているんですが、実はお話しする前に、自分の体験をやっぱり言った方がいいかなと思うんですが、高校を出るときに、大学を受けますときに、お医者さんになろうというふうな意思もありまして、幾つかの大学に問い合わせました。その理由は、私、小さいときのけがで左の目が全く見えません。というようなこともありまして、果たしてそれで医学部でできるのかなというふうなこともありまして、照会したんです、往復はがきで。
 そうしたら、大学十校ぐらいに問い合わせたんですが、大体三分の一ずつに分かれまして、三分の一の大学は、そもそも無理ですよというふうなことをはっきり言ってきた大学が三つほどございました。あともう一つは、やんわりとお断りいただいた学校が三分の一ほどありました。というのは、大学でそういったような形で障害を持って、障害といいましょうか、左の目が見えないで勉強をやっていくのは無理ではないでしょうかというふうな、やんわりとの御忠告でございました。あとの三分の一は何の返事もありませんでした。
 そんなふうな経験で、実はその後いろんな経過はあるんですが、結局お医者にならずに今日に至っているんですが、いろんな状況があったんですが、それからすると、今日こうした形で、目は見えないという状況じゃありませんので、見えますのでそれには当たらないんですが、少なくとも私が経験したようなことはまずなくなるのかなというふうに思いますときに、一定の前進といいましょうか、三十四年前の話でございますが、感慨を覚えるものでございます。
 それで、具体的に参考人の方に二つほどお伺いいたします。
 一つは、江草参考人にお伺いいたしますが、安全確実という概念があるけれども、結局は信頼の問題じゃないのかなと、こういうことで言われましたですね。信頼といいますのは、逆に言いますと、お医者さんも患者さんも両方が嫌いならば、これは逆に言うと、端的に言えば嫌いなら別な人を選べるということが前提にならないとやっぱり信頼というのは出てこないんだと思うのでございます。
 あともう一つは、お医者さん自身が、仮に障害を持っていた方が、ある行為をしたときに間違ったら、それはそのお医者さんの自己責任ですよというような中で初めて、安全確実というのはだれかが保障していくものじゃなくて、そういう関係の中で初めて実現できるものではないかなと、そんなふうに僕は理解したんですが、そんなふうなことでいいのかどうかということ。
 それから、あと金子参考人にお伺いしたいんですが、完全参加と平等というのがよく言われます。これはスローガンとしては私もよくわかるんですが、ただ、一人一人理解が少し違いますし、あと本当の意味でのそれはなかなか容易じゃない。永久のスローガンといいましょうか、夢もあるような気もするわけです。実際問題として、福祉という言葉が適当かどうかはともかくとして、障害を持っている人とそうでない方同士がつき合っていくことが結局ノーマライゼーションかなと、端的に言えば。ある権利とか請求権とかということもさることながら、日常的なおつき合いということを考えればそこかなと。
 そうすると、いわばAさんとBさん、片やある障害で片や別な障害を持っているかどうかは別にして、Bさんがいわば持たない人としますと持たない人は、Aさんとつき合っていくためにはBさんの方も何がしかの受容といいましょうか、受認と言っちゃうとちょっと変な話になりますけれども、受け入れていくというふうな心の広さみたいなものがやはりないと、障害を持った人たちとのつき合い、つまりノーマリゼーションというのは実現できていかないんじゃないのかなという。必ずしも、もちろんそれを裏づける法的な措置なりあるいは施策なりということが別途考えられますけれども。
 もう一つ、やはり国民的な風土の中でやっていきますと、受け入れていくといいましょうか、どこまで受容できるかということを考えないとなかなか事がうまくいかないんじゃないかなという。法律上の権利とかなんとかということだけですべて片づけられる問題じゃないんじゃなかろうか、それが一国の文化であり、我々のこれから考えていかなきゃならない社会なんじゃないかな、こんなふうな気がするんですが、それぞれちょっと別な観点ですが、お二人にお伺いしたいと思います。
 じゃ、江草さんからお願いします。
○参考人(江草安彦君) お答えさせていただきたいと思います。
 今お話がありましたように、信頼関係ということが一番基本になるわけでありまして、信頼関係のためには、患者さんの側から見るといい医者だと思ってくれればいいわけでありますが、そのときにいい医者というのは一体どんな医者のことを言うんだろうかということをここで改めて考えたらいいと思うんです。
 例えば、一般的に医学教育という場合に、オールラウンドな医者ということをどうしても念頭に置くわけですね。例えば救急の必要があるときにすぐそれに対応できる医者とか、あるいは倒れておる方があったならば、それが子供さんであろうが年寄りであろうが適切な治療ができると。そういうふうなことを考えてもらうことは大変医者にとっては光栄なことではあるが、実は余りにも分野が広くてそのようなことはできない、そのような期待にはこたえられないというのが普通ではないかと思うんです。そこで専門分化して勉強しようという人もおるけれども、そのことによって自分のできる範囲はここですよということを決めることもあってもいいんじゃないかと。
 実は、御承知かと思いますが、多分ことしでありますが、我が国の国立大学の医学部を二人の車いすの方が卒業をなさったんではないかと思っております。そのうち一人の方は私存じ上げておりますが、この方ははっきりと御自分で、外科医になろうとは思っておりません、それからまた体力的にもなかなか難しいと。そういうことで、金子先生からおしかりがあるかもしれませんが、学問的興味もあるので私は精神科医をやりたい、こういうことをおっしゃった。精神科医の方は別にメスを持てなくてもいいんですし、少々耳が聞こえなくてもいいんじゃないかというような言い方もできる。
 それから、私自身、実は小児科医でございますけれども、今や私は元小児科医になってしまって、病院の誤りなき診療が全体で続けられているかどうかということに気を使うという立場になっておりますね。そうしますと、医者というものはというのにかなり思い込みがあるんではないか。初めから理論的な研究をする医者もいてもいいし、あるいは公衆衛生医もいてもいいし、さまざまな医者の姿というものがあるんじゃないか。
 そういうことを考えたときに、何か頭から、入学のときも卒業のときも医師免許状のときもすべてのことができることを願って、それに当てはまるかはまらないかということで欠格条項ということを使い過ぎるんじゃないか。こんなことを私も思いましたし、実は小委員会の中では議論がございました。
 以上です。
○参考人(金子晃一君) 阿部先生の御質問にお答えしたいと思います。
 完全参加と平等というのは確かに非常に聞こえのいいスローガンであるのかもしれませんが、もともとどなたかがおっしゃいましたけれども、障害という言葉自体が非常にネガティブなイメージを持っている。むしろ、私が考えますれば、その人の特徴だと思うんです。
 例えば、走るのが得意な人もいれば計算が得意な人もいる、それと同じように、物を見るのがちょっと不得意な人もいれば立っているのが不得意な人もいるということだろうと考えています。ですから、御本人さんと周りの方がそれをきちんと認識して、何か困難なことがあった場合には個別個別に話し合って解決方法を探るというのが筋なのではないかということですね。
 そう考えると、根本的には欠格条項というのは要らないのだという話にはなってしまうんですけれども、ただ一足飛びにそこまでは行かないでしょうから、ぜひ今回の改正においても少しでもそこに近づけていただきたいというのが一点です。
 それからもう一つは、障害の方を受容する。受容という言葉も、特徴というふうに考えれば当たり前のことなんですけれども、その人が得意なことを能力をうまく発揮して社会に何かしらの参加ができるような形を本人さんも含めてみんなで一緒に考えていくという考え方が必要なんであって、ある特定のグループの人が障害者であって、その人たちは私たちと別という考え方自体が間違っていようかと思います。
 先ほど江草先生の方からもお話しありましたが、私も昨年椎間板ヘルニアで一カ月ぐらい入院しておりまして、それは肥満体型がもとなんで自己責任なんですけれども、いまだに一時間以上立っているのはちょっときついんです。ただ、精神科の医者だから曲がりなりにも商売を続けていることができますけれども、そういった自分のやっぱり能力とか限界とかをきちんと認識した上で参加していくということにすれば、余りこの欠格ということも厳密に考えなくてもよろしいのではないかと思っていますし、また社会全体もそのように変わっていくと思います。
 以上です。
○阿部正俊君 ありがとうございました。
 時間ですので、やめます。

○堀利和君 民主党・新緑風会の堀利和でございます。
 きょうはありがとうございます。時間も余りありませんので、早速お伺いしたいと思います。
 精神科医としての専門家の金子参考人にお聞きしますけれども、乱暴な言い方をすれば、私自身視覚障害者ですけれども、身体障害者の場合にはそれなりに福祉なりさまざまな施策が進んできましたし、身体の場合には外形的にも、あるいは数値化する形でかなり客観的な測定といいますか判断ができるんです。しかし、精神障害の場合には、例えば御案内のように精神保健福祉法の関係ですと精神疾患という定義になりますし、障害者基本法ですと精神障害という規定になりますし、これは法律で明確ではありませんけれども、雇用促進法の分野になりますと障害回復者というような見方をするんです。つまり、一人の立場の人を三種類で見るという、非常にそこがまた難しいのかなと、施策のおくれもあって大変だと思うんですね。
 そこで、今回は相対的欠格事由になりまして、個別の判断になるわけですけれども、そういう意味でも精神の方に対しては非常に難しいのではないだろうか。そういう意味で、判断基準を求める場合にもどういうふうにしたらいいのかなということ、そして意見聴取も含めてどういう方々がその聴取の場にいた方がいいのかなとか、その辺のところをひとつお聞きしたいのと、障害というのは障害者基本法でいいましても固定ということが一つの要件なんですね。この場合には、精神障害という場合もある種固定としての福祉という概念でつかむことができるんですけれども、精神障害状態の場合に、先ほどのお話のように変動しますから、たまたま試験を受けている最中とか悪い状態に遭ってしまったとか、いろいろこれは変動があって、資格を取った後も先ほどのお話のよ
うなことも起こり得ると思うんですけれども、そういう意味で、状態の変動というものをどんなふうに配慮していったらいいのかということ。
 さらには、資格を持って働いている方が状態の悪いところに陥ったときに、周りにわかってしまうと働けないんじゃないかという先ほどのお話ありました。そうしますと、一体、本人の立場に立ってだれがそのことをいい方向に措置というか手助けできるかと。常に本人からというのは難しい面があると思いますけれども、その場合にどういう周りのサポートが必要なんだろうかということを含めて、まずお伺いしたいと思います。
○参考人(金子晃一君) 堀先生の御質問にお答えしたいと思います。
 まず第一点ですが、精神障害という方の規定が実はいまだ不明確でございます。
 精神障害者、当事者の方々の中には障害と呼ばれたくないという方々も大勢いらっしゃるし、また、そうではなくて、きちんと我々を障害者として認定をしてもっと福祉を充実してくれという方もいらっしゃると。意見相半ばというところがあるわけですけれども、医学的に見ても、先ほど申し上げたように、精神疾患に伴うものがほとんどでございますから、その症状によってかなり障害の重症度も、つまり生活の不自由さも変わってくるということがあります。そういう点では、精神障害というものを、障害の程度を把握する場合には、一定の例えばスケール、評価基準というようなものだけでは非常に難しい点がございます。先ほど私が申し上げたように、例えば医者の簡単な診断書一通でこの人の資格を取り上げるとか資格を上げないというようなことを決めるべきではないと思っております。
 そのためには、その方の例えば今までの生活の歴史であるとか、病気の成り立ちであるとか、これからの治療のめどや予後やいろんなものをその担当の医者がきちんと参加した形で検討するのも一つの方法だろうと考えているのが一点です。
 それからもう一つは、先ほどの阿部先生の御質問とも通ずると思うんですけれども、職場においてある方が精神疾患を罹患して障害の要件に当てはまろうとするときにどう対応したらいいのか、またいち早く精神科医療にアクセスをするためにはどうしたらいいのかということですけれども、それはやはり国民的な啓発というのがまず第一に必要だろうと思っておりますし、その中で一番おくれておりますのは職場です。実は、地域のお母さん方は割と簡単に、頭が痛いから、目が回るからといって私のところに来てくださいますけれども、会社の中堅の管理職のような方々はなかなか来られません。それはなぜかというと、その会社での、職場での地位や身分やそういうことを気にしておられるからなんです。
 そういったことは非常に問題でございまして、今後、今回の件とは関係ないかもしれないですけれども、職場におけるメンタルヘルス、啓発普及というようなことも非常に大事な論点だろうと思っております。それが成りますれば、日本の国もかなり精神疾患、精神障害の方々に対するいわゆる差別、偏見もある部分では軽くなっていくのではないかと思います。
 以上です。
○堀利和君 次に、金参考人にお聞きしたいんですが、職務を的確に遂行するのは当然だと思うんです。それはもう金参考人もそのとおりに思われていると思います。障害者だから患者の安全を損なっていいというふうには、これは絶対になるわけがないですから、当然前提は患者の安全が前提なんですね。
 その上で、職務を遂行するに当たって、いわゆる障害を補完するさまざまな機器なりあるいは人的補助、これがあればできる、これがなければできない、まさにここが問題だろうと思うんです。
 それで、身体障害の場合などはわかりやすくて、ある程度そういった援助機器、サポートするさまざまな支援機器がどういうふうにしたらいい、どういうふうにできるかという、また可能だと思うんですが、一つに人的補助者、補助ということもありますけれども、この場合、医療職というかなり専門の仕事において人的補助といいますか、補助者が果たして本来業務の中でどこまでやっていいのか。これ以上は本来業務ですから、補助者が、介助者がやってはいかぬというものはあると思うんですけれども、その場合に、障害者雇用促進法では、既に一般民間企業の場合には介助者制度というのがございます。医療という極めて専門的な職種においてその辺のところは、極めて具体的ですからお答えしにくいかもしれませんけれども、どんなふうにお考えでしょうか。
 例えば、私が看護の仕事に携わった場合に、筋肉注射はできるかもしれないけれども血管注射はできない。指示をして打てよというわけにいかぬでしょうから、そういう意味で医療専門職の介助というのはどういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(金政玉君) お答えします。
 ただいまの堀議員の方からの御質問ですが、私自身が御存じのように医療現場に直接携わっているわけではありませんので、そんなに専門的な視点からのお話はなかなかできない部分がありますけれども、ただ、私どもとして把握している事例の中で、例えば中途障害の方で、お医者さんになったときは特に障害を持っていなかった方が中途障害によって聴覚障害になられて、実際に患者さんとのコミュニケーションが通常では難しいという方がおられます。その方は精神科医なんですが、そのときに、患者とのコミュニケーションの際に、その医療現場のスタッフに来ていただいて手話通訳を交えてコミュニケーションをやっていると。それで何か問題が生じたかといえば、決してそうではない。むしろ、そのお医者さんを頼りにして手話通訳でコミュニケーションができるということで、かなり遠方からも聴覚障害を持たれている患者さんが、年間四百人を超えるぐらいの患者さんがそのお医者さんを頼りにして診療に来られているというようなこともあります。そういったコミュニケーションの問題というのが一つ大きな問題としてあるかと思います。
 これは、コミュニケーションそのものはそんなに、医療的なそういう専門的な知識がどこまで必要かどうかというのは確かにあるでしょうけれども、やっぱり手話通訳者なり要約筆記者をきちんとつけて、それで今ファクスなりハイテクの流れの中でさまざまなそういう機械もあると思います。そういった意味である程度のそういうサポートは十分にできるのではないかなというふうに思っております。
 あともう一つの、これは考え方の問題ですが、障害者の社会参加というものを例えば医療現場で促進していくためには、もっと幅の広い考え方が必要だと思っています。
 今、医療の現場ではチームによって仕事をされている場合が多いわけですから、直接医療行為が仮にできなくても、きちんと国家試験に受かって、そういう必要な知識などを身につけてチームワークの中で仕事ができる部分がこれからの課題としてはもっと検討されていくことが必要だと思いますし、そういった職務を適正に行うことができる障害者の方はこれからむしろふえていくことが必要なんじゃないかなというふうに思っております。
○堀利和君 ありがとうございました。

○沢たまき君 公明党の沢たまきでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 どうしたら障害者の方々の完全参加と平等が実現できるかというのが国際障害者年のテーマでもございました。今回の改正は完全参加の大きな一歩として皆様方にも評価をいただいていると、私自身もすばらしいと思っておりますが、ただ問題は、これによって何人の方が免許、資格を取得して、それをなりわいとすることが出てくるかが大変重要だろうと思っております。また、多くの方がこの資格を取るということを実現してこそ完全参加の道が開けると思います。
 そのために、障害者の方々がそれぞれの個性と能力を十分に発揮して、その能力に応じてどの分野に進むか、あるいは挑戦されるか、自分はどれに向いているか、まずそのスタートの判断が極めて大切じゃないかなと私は思うんです。
 そこで、短くで結構ですが、全参考人の方々に伺いたいんです。
 障害を持っていらっしゃる方々が的確な判断をされるための情報の入手、専門家の御指導が不可欠だと思うんですが、そのような相談の窓口あるいは教育指導の機会や制度の必要性について御意見をお聞かせ願えればと思います。
○参考人(江草安彦君) 江草でございます。
 お答えいたします。
 情報の問題は、患者さんと医者との間の情報というふうに考えてよろしゅうございましょうか。
○沢たまき君 その方が自分の思っていることと、それからお医者様だけではなくもっと大きな窓口、相談窓口という意味でございます、お医者さんも含めて。
○参考人(江草安彦君) はい、わかりました。
 それは障害というよりか疾患というふうに考えてみますと、疾患の分野によってかなり違うのではないだろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
 例えば、精神疾患でありますと健康と暮らしという両面から考えなければいけないということでございますし、また生活指導が全くないという疾患はありませんけれども、比較的その比重の少ない分野と重い分野とがあろうかと思うんです。
 したがいまして、一概には言えませんが、最近はどの医療機関でもメディカルソーシャルワーカーが大変活躍いたしております。制度的に言いますと、社会福祉士の方の活動が大変盛んであります。精神医療について申しますと、精神保健福祉士という方が総合的な窓口として対応をしておられるというふうに私は理解いたしております。
 したがって、これからは医療と福祉あるいは教育の分野にまたがった学習をしてチャンネルを持っておる専門家がふえつつあるということを注目して、これを強めていくということが大事じゃないかと思っております。
○参考人(金子晃一君) 沢先生の御質問にお答えします。
 私も小さいころ、きょうここにいらっしゃる釜本先生がサッカーで頑張っていらっしゃる姿を拝見しておりましたけれども、私は足が遅いので、そういったサッカー選手に自分がなろうというふうには思わなかったんです。ただ、それにはどのような世界があるのかという情報が入手されませんと、自分の個性をそこで判断して伸ばそうというような気持ちにはなかなかならないわけですね。そのために沢先生、今御質問があったと思うんですけれども。
 一番大事なことは、いろいろな教育機関の現場において、まず、その方が障害を持っていようと持ってなかろうと、その人の一番の特徴、個性、能力を生かしたような指導ができるか、また情報をお伝えすることができるかだろうと思っています。
 それからもう一つは、そういった障害について先生方が、教育機関の現場の方がそれぞれ専門家ということはないと思いますから、一番大事なことは、各地域において顔の見える形でのネットワークを形成するということだろうと思います。この障害、この病気についてはこの人に聞いたらいいかもしれないと、そういったようなネットワークを各地域でつくることが一番大事だろうと思っています。
 以上です。
○沢たまき君 ありがとうございました。
○参考人(吉本哲夫君) お答えいたします。
 一つは、今、厚生労働省の施策の中で地域生活支援センターというのが広がってきております。生まれ育った地域で生活ができるような、相談事業が軸になっておりますけれども、そういうものが基本的に地域に無数にできて、そこでいろんな相談をするということがシステム的には大事なことじゃないかというふうに思っています。
 手話にしても点字にしても、あるいはいろんな情報を取り入れる場合の方法として、最近はパソコン、それからファクスというようなIT機器を使って、非常に生活の幅も広がり、積極的に生きていくという方向でのあれが出てきておりますし、そういうものが制度としてはもっと充実することが大事だし、それから、地域で生活していく上で、やっぱり地域の人たちが障害者というのは特別な人間ではないんだと、人間としては平等なんだという思想が広がっていくことが非常に一つは大事なことではないかというふうに思います。そういう経験もたくさん広がってきつつあることを申し上げておきたいと思います。
○参考人(金政玉君) お答えします。
 私の先ほどの発言ともつながる面が多少あるんですけれども、この欠格条項の見直しに当たって一つの大きな課題になるのが、いかにして障害を持つ当事者の職域の開拓といいますか、ということがやっぱりこれからの大きなテーマになると思います。
 医療現場における職域の開拓というふうなことを考えたときに、先ほど私言いましたけれども、要するに国家試験に通ればそこで専門的な知識は十分に身についているということが証明されているわけですから、あとは、直接的な意味で適切に医療行為を行うことができなければ資格の取得はできないというふうに、しゃくし定規にやっぱり今どうしても私たちから見ると考えられてしまっているところがありますから、そういったいわゆる資格取得の要件のところの見直しが私はもっとあっていいと思っております。
 そういった意味で、きちんとした専門的な知識があってその上で、障害を持っていて直接的な意味で医療行為ができなくても、例えばカウンセリングの仕事だとか、そういった意味じゃ、患者さんの痛み、心の病などを、障害を持っていることによって、さまざまな社会経験によってそういう同じ思いに立てる、そういった障害者の側の方というのは非常に多いと思うんですね。そういった立場からも、むしろカウンセリングの仕事なども含めた職域の開拓、拡大ということが、これからそういった資格取得の要件の見直しなどを通じてぜひ行うことができればいいのではないかなというふうに思っております。
○沢たまき君 金子先生に伺いたいんですけれども、今まで国家試験に合格したにもかかわらず絶対的欠格事由となっていたために免許を却下されてしまった方々をまず何よりも最優先して対処していくべきだろうと思っているんです。そういうことがこれから挑戦をする方々に勇気と希望を与えることになって、そして完全参加という勢いにつけると思うんですが、いかがでしょうか、今まで取り消された方々に対しての対処の仕方について。金子参考人に伺いたいと思うんです。
 これでおしまいにします。
○参考人(金子晃一君) ぜひ、今回法律が改正されましたら、私も私のところにいらっしゃっている方で医療職につきたいという方には御説明したいと思いますけれども、そういった情報が隅々にまで行き渡るようにぜひ国としても、政府としても、厚生労働省としても取り組んでいただきたいと思っています。
 これを機会に、障害を持った方々も自分の夢をあきらめることなくチャレンジするんだ、できるんだということが広まっていくことを望みます。
 以上です。
○沢たまき君 ありがとうございました。

○井上美代君 日本共産党の井上美代でございます。
 私は、まず最初に、吉本参考人とそして金参考人に質問いたします。
 まず、障害者の差別を禁止する明確な規定を法体系の中に盛り込むということが非常に重要であるというふうに思っているのですが、この点についてどのようにお考えになっているのかということをお聞きしたい。そしてもう一つ、心身に障害のあることを理由に免許取得を許されなかった場合に、障害を持っていても業務に支障があるかどうかさまざま考えがあるわけで、私は不服の申し立てというのがきちんとできなきゃいけないというふうに思うんですね。やはり第三者機関が制度としてつくられなければいけないというふうに思っているんですけれども、行政不服審査法が適用されるなどというのもあるわけなんですけれども、お二人はどのように考えられるかということをお聞きしたいと思います。
 あと、江草参考人と金子参考人に質問をいたします。
 それは「心身の障害により」ということが条文の中にまだ残っているわけなんですけれども、この問題については吉本参考人から貴重な御意見がありました。また、金参考人からも、心身の障害という表記を削除するということと、心身の状況等の表記に変更していく必要があると、こういうふうに言われております。私は、これはやはり削除すべきだというふうに思っているのですけれども、そしてまた障害者団体等の要望もお聞きしておりますが、非常に強い要望があります。このことについて、江草参考人とそして金子参考人にお聞きしたいと思います。
 以上です。
○参考人(吉本哲夫君) 日本の福祉の法制度を見まして共通しているのは、制限列挙方式になっておりまして、法律の適用を受ける者はこれこれこれという制限された状態であります。今回の欠格条項でも、やっぱり基本的にはそういう差別法的な中身が明確にされていると。
 私は、法律をつくるときにまず大事なことは、原則は、すべての必要な人たちにこの法律の適用があるということを原則にして、そこに向かって、先ほどの参考人の皆さん方の発言もありましたような経過的にどうしていくのかというようなことの方向づけをしていけばいいのであって、原則として心身に障害がある者はということでいけば、そういうことでは私たちは納得できないんじゃないかと。つまり、差別禁止法という原則がきちんとしていけば、それが原則になって請求権のことについても明確に具体化していく作業ができるのではないかというふうに私は思っております。
○参考人(金政玉君) まず、差別禁止法との関係なんですが、私ども当事者運動においては、一九九〇年にアメリカにおいて障害を持つアメリカ人法が制定されまして非常に大きな衝撃を受けました。障害を理由に差別をしてはならないということが法文上明記されておるわけです。それを日本においても、私たち当事者運動の取り組みによって何としてでも実現していこうということでこの間やってきておるんです。
 また、私、去年の十月ころに行われたアメリカのワシントンの障害者法制に関する国際会議というものがありまして、その報告を受けて改めて衝撃を受けたんですが、今現在、障害者に対する差別禁止について定めている国が発展途上国も含めて四十カ国を超えているということが報告されています。
 これはもう、そういった意味でいうと、今の日本の障害者法制がそういう差別禁止規定ということにかかわって考えていく場合には、はっきり言っておくれているというふうに言わざるを得ないというふうに思います。やはり、障害を持つがために差別をしてはならないという、そういう禁止規定を、先ほども申し上げましたけれども、障害者基本法の目的、理念のところにしっかり明記しておく必要があると思います。
 そういった意味では、今、現状の障害者基本法では、障害者の社会経済活動への参加の機会を与えるものとするという、与えるという言い方になっているんですね。この与えるというのは非常に恩恵的な響き、ニュアンスが私はあると思っております。やはり、もっと権利としてそういう機会が保障されなければいけない。それについては、障害を理由に差別をされてはならないという禁止規定をしっかり明記していくということが国際的な潮流の中でもはっきり示されておりますし、日本においても非常に早急な課題として取り組まれるべき話ではないかなというふうに思っております。
○井上美代君 今、法案の質問をしているんですけれども、申し立ての部分の答弁がなかったんですが、お二人。免許取得を許されなかった場合の不服申し立ての問題ですが、お二人に。
○参考人(金政玉君) では、申し上げます。
 今それをちょっと申し上げられなくてあれだったんですが、まずそういった障害を理由に差別されてはならないという文言が、例えば障害者基本法に盛り込まれるということがあって初めて不服の申し立ての制度が本当に実効性のあるものになっていくというふうに私たちは考えておるところなんです。今現在、第三者機関というものがはっきりとした形ではないのが実情だと思います。
 私の最初の意見のところで述べさせてもらいましたが、障害を持っているがために業務が適正に行えるかどうか、補助的な手段の条件整備なりを含めて、そういう基準に該当するかしないかということを判断するときに、やはり可能な限り別な検討委員会をつくって、そういった障害当事者も含めた検討会の中で基準づくりに沿って適正に行えるかどうかの判断ができるような、そういう検討会の設置を行って、それに可能な限り第三者機関的な役割、機能を与えていくようなものに何とかできないものかなというふうに私どもとしては考えております。
○参考人(江草安彦君) 江草からお答えいたします。
 今回の改正は、心身に障害のある者がその業務遂行能力に応じて免許の取得等ができるようにしようというものであるわけでありますが、国民の安全の確保という視点からは、業務の適正な遂行を確保することもまた当然忘れてはいけないことであります。
 したがいまして、絶対的欠格条項については最初に申し上げましたように廃止するといたしましても、相対的欠格条項をすべて廃止するというわけにはいかないのではないだろうかと、このように私は考えております。
 以上です。
○参考人(金子晃一君) 心身の障害というのを明記すべきかどうかという点についてお答えしたいと思いますが、厚生労働省の方では、何も書き込まないと相対的欠格事由を明確にできないではないかといった御意見があるように伺っておりますけれども、その障害の個別性を考えますと、身体障害、知的障害、精神障害をとりましても、それをわざわざ書き込む必要は私はないと思っています。
 国民の安全を確保するという点におきましては、大事なのは障害よりは適性です。その適性をどこで判定するか、それは障害によりませんので、個別個別に判定をするようなシステムをつくり上げればよろしかろうと考えております。
 以上です。
○委員長(中島眞人君) さきの補足を吉本参考人から。
○参考人(吉本哲夫君) 請求権は、障害者の社会参加の重要な権利として明確にしていく必要があるのではないかというふうに思います。
 行政手続法等の中でもいろんな一般的な手続がありますけれども、今回、この機会に障害者基本法をそういう請求権、それから権利保障という基本的な理念を明確にした内容に改正していく手続をぜひとっていただきたい、その中で請求権を明確にしていくということをしていったらどうかというふうに思っております。
○井上美代君 ありがとうございました。

○大脇雅子君 社会民主党の大脇と申します。
 きょうは貴重な御意見をありがとうございました。
 とりわけ、障害は変わっていくもの、補助器具は進歩するもの。私は、やはり障害者の問題は高齢化社会の中における高齢者の障害としての扱いに通ずる施策だと考えますので、今回の法改正というものがどういうものを持ち、どういう方向でこれから歩み出すのかということは大変大きい私たちの社会の行方を示すものだと思っております。
 金参考人は、障害当事者を含めた基準策定に関する検討委員会設置を第一の要望となさいました。もう少し具体的に、そこで検討する課題とか、あるいはどういう構成にしたらいいのかとか、常設ということを言っていらっしゃいますが、それに対して御意見があったら伺いたいと思います。
 それから、金子参考人もガイドライン策定委員会というのを提案していらっしゃいますが、そういった具体的なイメージというか、そんなことについてお話しいただければありがたいと思います。
○参考人(金政玉君) お答えします。
 今の御質問の中で、私の方で第一に述べさせていただいた障害当事者も含む検討委員会の設置をということで、基本的に私どもとしては常設機関としてそれを設置して運営していくべきだろうというふうに考えております。これは、なぜ常設機関としてというふうなことを言っておるかということなんですが、前提として、ぜひこのたびの欠格条項の見直しに関する改正案によって見直し規定をきちんと入れていただきたいというふうに思っております。
 現状としては、従来、絶対的欠格事由ということで、そもそも先ほどのお話の中にも出ていますように、そういった資格取得をするための機会そのものを与えられてこなかったというのが現状であります。そういったいわゆる絶対的欠格事由によって門前払いをされてきた経過の中で実際に基準づくりを行うといっても、そういった事例そのものがやはり非常に決定的に少ないのが現状だと思うんです。
 いわゆる本人が、こんな必要な補助的な手段があればぜひ自分としてはその職務をきちんと行っていきたいし、その自信もあるといったことをやっぱり証明する機会の保障だとか、そういったことを基準づくりにぜひ生かしていってもらうような、そういうガイドラインの作成といいますか、そういったものも含めて検討委員会で常設の機関として行うことができないのかなというふうに思っております。
○参考人(金子晃一君) 大脇先生の質問にお答えいたします。
 障害を持った方々の専門家はだれかという話ですけれども、御本人だと思うんです。やはり障害を持った方々を一番わかるのは御本人さんたちだと思いますから、なぜその方々の御意見を伺わないで一方的に決められてしまうのか、また決めることが可能なのかというのは非常に疑問があります。ですので、私なんかは毎日患者さんから、また障害者の方から教えていただくような立場だと思いますけれども、そういった方々の知恵をいろんなところで活用すべきだろうと思います。
 それからもう一つは、個別性に着目するといろいろな課題が出てくると思いますから、そういった意味では臨機応変に対応できる委員会構成を考えますと、金参考人がおっしゃるように常設にした方がよろしいのかもしれません。
 それともう一つは、例えば身体、知的、精神というふうに障害種別に余りこだわらなくて、そのときそのときに、その障害のエキスパートである御本人さんたちをお招きした形で回答を得るようにしていけばよろしいのではないかと。私の頭の中では、大体具体的なイメージはそうなっております。
 以上です。
○大脇雅子君 このところ何かストレス社会で、うつ病は全地球上で今一億五千万人、さまざまな人格障害とか、あるいはPTSDと言いまして外傷後のストレス障害とか、これは精神障害とは全く違うということはもう明らかでございますけれども、しかし世の中ではなかなか境界が不明確で、さまざまな偏見とか差別というのもあり、それに適正な治療が行われないために精神障害の方へ進んでいかれるということもあります。
 こういった諸症状に対する対策のおくれというものが日本は大変ありまして、それがまた最底辺でさまざまな偏見などの土壌になっているのではないかというふうに考えますが、そういったことについて一言ずつ参考人の御意見を伺えればと思います。どうぞお願いします。
○参考人(江草安彦君) 江草から答えさせていただきます。
 確かに、今おっしゃいますように不安の時代でございますし、寄る辺なしと申しましょうか、お互いとお互いとがコミュニケートしにくい生活を大人も子供も送っておるというふうに思います。
 したがいまして、何かいい方法はないかということでございますが、私は家庭を大事にするということから始まらないと、幾らカウンセラーをふやしても、あるいは学校教育のやり方を変えてみても、やっぱり大部分の生活するところは家庭でございます。したがいまして、私は家庭重視というところにこの解決策を求めたい、こういうふうに思っております。
○参考人(金子晃一君) ただいま御紹介がございましたように、精神の障害を持つ方というふうに考えましても、実は国民の五十六人に一人がそうだというふうに言われております。今ほど、うつ病やPTSDは精神障害とは違ってという御発言もございましたが、実はそれぞれの病気にも、言い方は悪いかもしれませんが、ピンからキリまでございまして、うつ病の方でも障害を抱えた方はいらっしゃるし、普通に仕事をなされている方もいらっしゃるわけです。そういったことも含めまして、我々の周りにいらっしゃる方が簡単にカミングアウトできるような状況をつくるためには、やはり国としても取り組みが必要だろうと思っています。
 あさっての四月七日はWHOのメンタルヘルスデーというのに当たっておりますけれども、先生方の中でそれをどれだけの方が御存じかと思います。日本におきましても、厚生労働省やまた日本医師会さんもいろいろな行事を組んでおりますけれども、まだまだ国民に認知されているというところまでは至っておりません。
 ぜひ、私も現場の一員としてそういったことを地域の方々にお伝えしていく中で、その偏見や差別が少しでもなくなってカミングアウトしやすいような状況をつくっていきたいと思っています。
 以上です。
○参考人(吉本哲夫君) 障害者問題の中でも、精神神経障害の分野が最も政策の上では立ちおくれていると私は見ております。そういう点で、ここは国会でありますので、ぜひ行政的に精神障害者とか、あるいは新しく起こってくるさまざまな障害の問題について、医療の分野でも福祉の分野でも国家的にきちんと保障していくというようなことが制度的に確立されなきゃいけないんじゃないか。
 最初に申し上げましたように、障害者の施策の中でさえも精神障害者等は、新しい障害になった人たちについての制度的な保障はほとんどないという現状になってきておりますから、そういう点でも制度的な保障をきちんとさせていくということがとても大事なんじゃないかと
いうふうに私は考えております。
○参考人(金政玉君) 毎年、障害者白書なんかを見ますと、今、障害者の場合は御存じのように身体、知的障害、精神障害というふうに大きく三障害に分かれますが、障害者の人口の中で精神障害のふえ方というのが物すごく急激、今は二百万人以上を超えておるというふうになっています。そのうち最も大きな割合を占めるのは精神障害の割合ではないかなというふうに思っておりますが、そのこともやっぱり障害者分野において、今の社会のストレスが非常にたまりにたまっていく一つのあらわれというふうに言える部分もあると思います。
 私たちは、この欠格条項の問題に取り組む中で、確かに基本理念としてはノーマライゼーションの実現ということを声高には言っておりますが、ただ、幾ら声高に言ってもそれは実現しないわけでして、実際に個別具体的な欠格条項の問題に取り組むことによって一人一人の可能性を大切にする、そういった取り組みなり仕組みをつくっていこうということを言っておると思うんです。そういった仕組みづくりをすることによって、社会全体が一人一人を大切にする社会になっていくということを私たちは目指していきたいと思っております。
 以上です。
○大脇雅子君 ありがとうございました。

○西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。
 まず、江草参考人によろしくお願い申し上げます。
 これまで欠格条項によって、多くの若い人たちの中で、例えば医師になりたいとか看護婦さんになりたい、でもチャンスを与えられることなくあきらめてしまったというお話もたくさんお伺いしますし、本日も松葉づえのお話も出ましたし、阿部先生の大学のときのお話もお伺いをいたしました。
 今後、障害を持つ若い人たちが夢と希望を持って、例えば医療従事者として活躍していけるようにするためには、具体的にはどういう環境の整備が必要なんでしょうか。
○参考人(江草安彦君) 江草からお答え申し上げます。
 今、西川先生お尋ねの件でございますけれども、大学があるいは養成所が入学を容易にするということでなければ、チャンスはまずないわけであります。したがいまして、今、大多数の大学は入学案内に、障害をお持ちの方は受験のときから必要な条件整備をいたしますからお申し出くださいということを言っておると思います。私の大学でも毎回かなりの数の障害者の方の受験があります。点字での受験の方もあります。もちろん、車いすで来られる方はたくさんあります。それから、手話通訳を必要とする方もあります。
 入学いたしますと、大学によっては手話通訳の経費を大学側が負担しておると、あるいはまたクラスメートがやっておると、あるいはボランティアがやっておるというふうなことでございますので、意外に大学キャンパス内は障害者に対して受け入れ体制を十分整えつつあるというふうに思います。
 ちなみに、私どもの大学は医療福祉系の大学でございまして十学科ございますが、その中には看護あるいは心理あるいはOT、PT、その他さまざまな分野の学生たちが学んでおります。そして、お互いが、障害者を中心に暮らしておるわけではありませんが、障害者とともにエレベーターへ乗り、食堂で御飯を食べしておる間に身近なものとして感じておるというふうなことが言えるんじゃないかと思います。
 それから次に、学生たちが社会活動を活発にやっております。ことしは国際ボランティア年でもありますが、そのこともありまして、恐らく学生の二〇%ないし三〇%ぐらいはボランティア活動をやっておると思います。そうしますと、やっておる間に自分たちが全然違和感なしに見るようになると、こういうことがまず大事なんじゃないでしょうか。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 次に、金子参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどちらっと出たんですが、医師の診断書の必要性についてお伺いしたいんですけれども、医師の診断書の必要性。厚生労働省の考え方といたしましては、医師の診断書には、相対的欠格事由に該当する障害の有無のみならず、治療や投薬等により障害の程度が軽減される状況についても記載されることとしているから、医師の診断書の提出は必要であるということでございますけれども、この医師の診断書のあり方についてお考えをぜひお伺いしたいと思います。
○参考人(金子晃一君) 西川先生の御質問にお答えします。
 医者が診断書を書くと、それがどのぐらい細かい内容になるかにいたしましても、確実にその人の全人格、全生活を反映するものにはなり得ません。欠格としてその方が資格が取れない、そういった社会的なデメリットがその診断書によってなってしまうわけですから、その参考資料になるわけですから、かなりまさに緻密なものが必要とされるだろうと思います。
 例えば逆の場合、障害者の方が就労できないので年金をもらいたいという障害者年金の診断書というのがありますが、それについても障害の程度の有無や生活の能力、就労の能力について書き込むことになっておりますけれども、それはよろしかろうと思うんですね、その方のためのものですから。つまり、プラスになるための診断書と。逆に言えば、マイナスになるための診断書になり得るわけです、今回のものはですね。
 ですから、その診断書を補完するためには、その書いた医者をきちんと呼び出したような形で質問をするのがいいのではないかなと私は具体的なイメージの中では考えておりますけれども、ただ当然ながら障害者の方御本人とその担当医の間に信頼関係がある場合もあるでしょうけれども、ない場合のことが問題になります。その場合には、障害者の方の御意思をきちんと尊重した上で検討を進めるべきだろうと思っています。
 以上です。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 今度は、金参考人にお伺いしたいと思います。
 資格、免許を取得した障害者を受け入れる側の雇用主のあり方ですけれども、援助つき雇用制度、この必要性について具体的にお述べいただけたらと思います。
○参考人(金政玉君) 資格を取得した後の障害を持っている方が実際にそういう医療現場などに入っていく場合の条件整備にかかわることだと思いますが、雇用主に直接的な責務が生じるのはそれは当然だと思います。ただ、その受け入れの責任について、じゃ雇用主だけに全部を負わせていいのかどうなのかということになると、それでは私どもとしては到底限界があるというふうに思っております。
 やはり、実際に限られたそういう現場の中で、それぞれスタッフが職務について、その合間を縫って、例えば先ほどの手話通訳を同じ医療スタッフの方が手話を覚えて障害を持たれている例えばお医者さんなりスタッフのコミュニケーションを手伝うというのは、それ自体はすばらしいことなんですが、じゃ、それを全部の雇用主なり医療現場に求めていいのか、それだけで本当にできるのかどうかといえば、到底限界があると思います。
 そういった意味で、例えば手話通訳者を入れる場合でも別途の人件費がかかるわけですから、そういった必要な経費については、やっぱり公的な法律上の措置によってきちんと事業主をバックアップする体制づくりというものが国なり地方公共団体にぜひとも必要なのではないかなというふうに思っております。
○西川きよし君 援助の方。
○参考人(金政玉君) 援助については、これはアメリカで援助つき雇用制度というものが十年ぐらい前からもう既に取り組まれておりまして、従来、日本で言えば授産施設とか福祉施設などではいわゆる一般就労に向かう前の本当は通過施設としての位置づけがあるんですが、実態的にはもうそこで、要するに固定した形で施設の中だけで仕事をしていくと、一般就労にはつながらないという問題があります。
 それはアメリカでも同じ問題がありまして、もう十年以上も前から、そういった垣根を越えさせていこうということで、援助つき雇用者、支援者を、ジョブコーチという方をつけて、知的障害なり精神障害を持たれている方に実際に付き添って一般就労の中に入っていって、それで同じ従業員とのいろんな作業上の調整をしながら、それでその支援者、ジョブコーチという方がいなくなっても仕事はできていけるような、そういう工夫なり調整を支援していくというような取り組みがされていまして、日本においても、厚生労働省の方ではそういったモデル事業をこれから行おうということを取り組みとしては聞いております。
 ですから、こういった欠格条項の問題についても、雇用主の受け入れに当たって、いわゆる個別就労援助の体制づくりというものを、人材派遣も含めて、そういった専門的なアフターケアができるようなジョブコーチ的な役割の方たちをぜひ人材育成して、こういった欠格条項に当たるような中でのいろんな事例に、どのようにしたらできるかという観点から、そういった取り組みを非常に積極的に進めていく必要があるというふうに思っております。
○西川きよし君 もう時間が来ました。
 終わります。

○黒岩秩子君 障害者の雇用という問題については、受け入れ側も就職した人もとても大変なわけですけれども、今、障害者雇用促進法によって一年半の補助金が出ております。その補助金が切れるところでやめてもらわなければ困るといういわゆる悪徳企業者たちがいて、さまざまの障害者虐待事件が絶えないわけですけれども、この障害者の雇用について、一年半の補助金というようなものについてどのように考えたらいいか、金さんにお伺いしたいと思います。
○参考人(金政玉君) 今の特定求職者の助成金のことを言われていると思うんですが、この必要性は確かにあると思います。ただ、実態の中でこれがどこまで障害者雇用の促進に役立っているかといいますと、非常に私どもは疑問符を持っております。その結果が、法定雇用率は一・八%なんですが、いまだにまだ法定雇用率の平均に達していないというような結果が出ている以上は、そういった助成金のあり方、助成制度のあり方もやはり大きく見直していく必要があるというふうに思っております。
 私もよく職業安定所に行って障害者雇用の求人などを自分の経験でもって見たりしてきたことがあるんですが、ほとんどが契約社員の募集です。例えば、一年二年たったら改めて契約をし直しましょうというような、障害者雇用においてはそういう求人の出し方になっておるんですね。ですから、例えば一年二年たって契約期間が切れたから雇用契約を解約するということが起こっても法律違反ではないわけです。そういうことがあったとしても、そういうふうになってしまう。
 だから、そういったことでいいますと、その雇用助成金が本人がその職場に定着して雇用を通して社会生活を行っていくというような役割を果たすにはまだまだ不十分であると思いますので、もっと別な視点からの条件整備なりが適切なものとして本人の側に立って行われることが必要になっているというふうに思っております。
○黒岩秩子君 実は、その条件整備の件なんですけれども、先ほど金子さんが職場が一番ぐあいが悪いと言われたこと、大変よくわかりまして、実は新潟市におきまして、社会福祉協議会に勤めていた方が過労で倒れて診断書を持っていった。その診断書の封筒に精神病院の名前が書いてあったことでもう次の日解雇、臨時職員なんですけれども次の日解雇、そしてとうとう亡くなってしまったもので、今裁判に持ち込むようになっております。
 こういうこと、今まで差別とか言われてきましたけれども、現実の問題としては、先ほど金さんおっしゃいましたように、雇用主というよりは一緒に働く人たちがどれだけそのことに理解があるかということが雇用を促進する上で一番大変なことだと思うんです。
 私は十九年間保母をやってきまして、小さければ小さいほど障害者とのつき合いというのは簡単に溶け込めてしまうというものがあります。保育所で一緒にいた障害者の人たちが、学校へ行くところになると養護学校だとか盲学校とかいわゆる特殊学校と言われるところに振り分けられてしまう。そこのところでの整備の問題に関して皆さんどういうふうにお考えなのか、お一人ずつお答えいただければと思います。
○参考人(江草安彦君) 江草からお答えいたします。
 今おっしゃっておることは、私も小児科医でございまして、特に保育園に入るときからまた問題になるんですね。健常児の保育所へ一緒に行きたいということをまずおっしゃるわけです。ただ、問題は、障害というときの程度がさまざまだということは十何年保育所でお勤めでしたらおわかりになると思うのでありますけれども、私のように呼吸管理をやらなきゃいけないような重い障害のお子さんもあるんです。重症心身障害という方です。こういう方にみんな一緒というのは、先ほどの完全参加と平等と同じであって、大変理念的にはすばらしいことですけれども、現実にはお子さん自身も迷惑なんですね。当然、命を守るということは第一優先である、そういうふうな立場から考えるべきではないかということをまず思います。
 それからその次に、レッテルを張らないということが二番目の問題だと思うんです。障害がある場合には、障害という特性があるわけであって、決してこれは価値とは関係がない。だとするならば、その特性に応じた保育に力を注ぐべきだと。それがもしできれば、一つの保育所の中でそのことが可能であればそれが一番いいわけです。それがない場合にはどうするかという問題から障害児保育という問題がまた出てくるんじゃないでしょうか。
 それが小学校になり、中学校になって年齢が高ずるにつれまして、その特性が大きく食い違ってくるわけですね。そういう中で、今度は一方では食い違うことに対する批判を私はしております。しかしながら、やむを得ないという点もあるんですね。そうしますと、みんなと一緒にやれるところはやって、やれないところは別々にというやり方も考えていいんじゃないか。
 ここで、交流教育という言葉が学校教育にはございますが、さまざまな方法を知恵を尽くして考えなければいけないなと思っています。しかし、その根底には一人一人の子供の命がとうといんだ、価値は同じなんだという考えがなければ、今のようなことを言ってもそれは単なる技術的な操作でしかないですね。その点は矛盾するようでありますけれども、私は人間の価値の問題と、それから具体的展開の問題との間に若干の違いがあるというふうに思っております。
○参考人(金子晃一君) 障害によってラベリングをしないという今の江草参考人の御発言には賛成です。
 ただ、例えば幼稚園、保育所、また小学校におきましても普通教育を受けさせたい、なぜ特殊教育、特殊学級ではだめなのかというのは、やはり日本の社会のあり方にこそ根本があるのであって、一概にその父母、父兄の方々を責めるわけにはいかないと思っています。
 ですから、我々エキスパートがどういったように保護者の方々に説明をし、援助をするかというのがすごく大事なことだろうと思いますし、先ほど黒岩先生がおっしゃったように、小さな社会の中では障害受容なんて大げさなことを言わなくたって一緒につき合っていけるというのはあるんですね。実はそうだと思います。同じ家族の中に何らかの障害を持った方々がいても、例えば先ほど高齢者の問題ということでお話にも出ましたけれども、お年の方が足腰が弱って動けなくても、そういった方を何らかの形で援助をして、それによって生活が何とか成り立っているというのは家庭の中ではごく普通にもある風景ですから、社会が小さければ小さいほどそういった相互の交流というのが自然に行われるというのはありますし、翻ってみますと、職場のメンタルヘルスという問題に返れば、中小企業対策こそが一番大事なことだろうと思っています。
 厚生省と労働省が今回一緒になったわけですけれども、もともと中小企業対策として労働基準監督署等を経由した形でネットワークづくりが現在進んでいるように伺っておりますが、それがぜひ実効性を保った形で力を発揮してやっていただけるようになると、職場の中での障害者受容のあり方、また雇用促進のあり方も大分変わってくるのではないかと思っています。
 以上です。
○参考人(吉本哲夫君) 私、先週、地域で保育園の卒園式がありまして、そこで手話を使ってみんなで歌っているんですよね。非常に感動的な場面であったわけですけれども、保育園の保育にしろ学校教育にしろ地域にしろ、障害を持っている人たちにとって発達と健康を無視した環境の設定をしてはならないと私は思っているんです。やっぱり障害があることによって引き起こされるさまざまな困難を軽減、克服することと、それから人間としての発達ということがあわせ持って場面が展開されなきゃいけないんじゃないかと。
 地域で生活していくのも障害を持った人の特性、例えば知的障害の子供が学校へ行くときに必ずスーパーに寄ってレシートを持っていかないと学校に行かないというような特性を持ったお子さんもいたり、それから脳性麻痺の人たちが、援助するときに右から手を出せばきちんと握れるのに、左からだったらもう麻痺が強くて握れないというような、これなんかも経験を積んでいけば本当に地域の人たちが共同してやれるという条件もあるわけだし、やっぱり地域でそういう生活ができるような、そういう地域づくりがとても大事なんじゃないかと。学校も同じだと思います。
○参考人(金政玉君) 私は、そのことを考えるに当たって、やっぱり国際的な動向なり基準が障害者の人権についてどのようなことを言っているかということをきちんと見ておく必要があると思います。
 一九九三年、国連の国際障害者年が終わった年に当たるんですが、その九三年に障害者の機会均等化に関する基準規則というものが国連総会で採択されております。それにおいては、障害を持つがためにそういう機会の均等化が奪われないということをまず前提にしておりまして、社会への統合、それは単に障害者を障害でない人に合わせるということじゃなくて、障害者の特別のニーズに着目して、そのニーズを実現することを通じた社会への統合ということが言われているんです。
 その後に、障害児教育についてもサラマンカ宣言というものが採択されておりまして、そこでは、例えば通常学校の場合の中でも、障害を持っている子供さんであれば特別のニーズをきちんと通常学校としても受け入れて、インクルージョン教育、インクルージョン、要するに多様化に対応するための教育ということが理念としても言われております。
 そういった意味で考えますと、この欠格条項の問題というのは、障害を持っている本人の多様なニーズにどうやって具体的に対応していくかということが大きなテーマであるというふうに思っていますので、そういった視点からやっぱり同じ問題として考えて取り組んでいく必要があると思っています。
○委員長(中島眞人君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。
委員会を代表いたしましてお礼を申し上げます。(拍手)
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○委員長(中島眞人君) 速記を起こしてください。
 引き続き、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○堀利和君 午前中に引き続きまして質問させていただきます。
   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕
 補助的手段と言われておりますこの補助的手段とは具体的にどのようなものか、お伺いしたいと思います。
 先ほどの参考人の方からも、医行為、医療補助行為、本来業務そのものをもちろんやっていただくことはできないにしても、その業務を的確に遂行するために援助が必要だろうと。事例が紹介されまして、聴覚に障害のある精神科医の方が手話通訳、要約筆記などで適正にお医者さんとして仕事をされているという話もありましたけれども、やはり補助的手段ということについて、人的な補助ということについても、どういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。
 また、普遍的かつ実用的な範囲という定義もございますけれども、これはオシロスコープだけがいつも言われておりますけれども、その他にも何かそういう事例がございましたら御説明していただければありがたいと思います。
○政府参考人(伊藤雅治君) 医師等の医療関係の資格、免許におきましては、身体の機能の障害がある者について、臨床実習を受けた場合用いた補助手段などを勘案して決定することとしております。また、用いた補助的手段が現在の科学技術水準、一般的な医療水準にかんがみ、普遍的かつ実用的な範囲であるか否かを基準として免許を付与するか否かを判断することとしておりますが、具体的には、例えば、午前中申し上げましたが、聴覚の機能の障害者が聴診の臨床実習に際しましてオシロスコープを補助的手段として修了する場合は、これに該当するものと考えております。
 その際、人的な補助については、補助的手段として含まれることを全く否定するものではございませんが、臨床実習を通じて業務に必要な知識または技能をみずからのものとして修得したか否かを慎重に判断する予定としております。例えば、これは極端な事例でございますが、全く視覚の機能がない人のかわりに、例えば医師の場合にレントゲン写真を読むという機能を人的な補助手段として認めるかどうかということにつきましては、そういうことまでいきますとかなり議論があるわけでございまして、その辺のところにつきましては、先ほど申し上げましたように、業務に必要な知識または技能をみずからのものとして修得したか否かという観点から慎重に判断するということではなかろうかと思います。
 なお、お尋ねの普遍的かつ実用的とは、教育機関または医療機関におきまして一般的に用いることができ、かつ現実の業務遂行に使用の可能なものという趣旨でございまして、現在のところ、具体的な事例といたしましてはオシロスコープを申し上げているわけでございますが、今後、技術開発が進みまして、例えばレントゲン写真等の画像を点字のような凹凸によって表現する技術の研究開発も行われているとも聞いておりますので、そういうものが教育機関または医療機関において一般的に用いることができ、かつ現実の業務遂行に使用可能な段階に達すれば、将来的にはそのようなものも含まれていくということになろうかと思います。
○堀利和君 次に、精神機能障害の関連でお聞きしますけれども、認知、判断、意思疎通、こうした形での適切にできるかどうかということについての個別判断に際しまして、その判断基準というものが当然必要になるわけですけれども、それが具体的にどういうものかについて御説明願いたいと思います。
○政府参考人(伊藤雅治君) この精神の機能の障害ある者についての具体的な判断基準でございますが、これは、身体の機能の障害がある者については、臨床実習を受けたか否か、その際にどのような項目でどのような補助的手段を活用したかなどを勘案して決定することとしておりますが、精神の機能の障害につきましては、障害が業務遂行に与える影響の多様性、複雑性等について考えてみますと、判断基準を設定するということはより一層困難であるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、精神の分野の判断基準につきましては、個別に医師の診断書等を参考にしながら、個別具体的なケースを積み上げながら判断のあり方をできるだけ明確にしていきたいというふうに考えております。
○堀利和君 次に、意見聴取の件についてお伺いしますけれども、求めに応じて本人の意見聴取が行われるわけですけれども、その際に、意見聴取は本人だけなのかどうか。先ほどの参考人質疑の中でも、特に精神機能障害の方については、その病歴、さまざまな環境がありますから、主治医がやはりきちんと説明できる方がいいだろうという話もありましたけれども、そういう意味では、これは本人だけなのかどうかということが一つ。そして、不服の場合、どのように異議申し立てをしたらいいのか、できるのか。この場合もやはり第三者機関というもので双方が信頼できるような機関といいますか、そういう検討をするところがあった方がいいのではないかと思いますけれども、その点についてもお伺いしたいと思います。
○政府参考人(伊藤雅治君) 免許を与えないこととする場合の手続の一環といたしまして、この法律上の規定は、法律上の意見聴取は本人を対象とするものでございますが、しかしながら個別具体的に免許申請者がどのような能力を持っているかという点を判断するに当たりましては、診断書を書いていただきました主治医等から事情を聞くということは当然必要だというふうに判断しているわけでございます。また、意見聴取後に免許の申請に対する不許可処分がなされた場合には、行政不服審査法に基づく不服申し立てをすることが認められているところでございます。
 いずれにしましても、個々の申請者が有する障害について十分な理解がある部外の専門家による事実認定及び評価を行うことによりまして、いわゆる客観的な判断を行っていきたいと考えているところでございます。
○堀利和君 次に、教育養成機関についてお伺いします。
 文部科学省の担当者の方にお願いしたいんですけれども、せっかく絶対的事由から相対的事由に一歩でも前進したわけですから、これまでのように試験を受けるところまでたどり着けなかった、教育養成機関の受験、入り口で結局はじき出されてしまったという現実があると思うんですけれども、そのようなことがないように今回の改正に基づいて大学や専門学校等の教育機関の受験に際しての配慮、そして、当然、教育課程における配慮、こういうことについての文部科学省としての決意をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(工藤智規君) 私ども、障害のある方々への教育機会の確保のためにかねがね各大学を御指導申し上げておりまして、一つは各大学における受験に際しての制限的な扱いの見直し、それから受験に際しての特別の配慮、さらには入学後の教育、具体的には教育を受けていただくための配慮等をお願いしているところでございますし、大学におきまして午前中にも御答弁申し上げたようにいろいろ努力をしているところでございます。
 今回の法律を契機にして、さらにその趣旨の徹底に努めてまいりたいと存じてございます。
○堀利和君 次に、坂口大臣にお伺いしますけれども、障害によっては、私もそうですけれども、当然試験を受けるには点字で受けなきゃならない。午前中にもこのことが取り上げられましたけれども、そういう意味で、形式的な、機械的な平等でやるのではなくて、本当の意味の実質的な平等、優遇しろということでは決してありません、そういう意味での各種試験を受ける際のさまざまな配慮、体制というものをきちんとやっていただきたいということの御決意をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 専門的な知識でありますとかあるいはまた技能の修得状況でありますとか、こうしたことは客観的に評価をしなければならないと思いますが、その評価の仕方あるいはまた知識の程度というものをどのように見るかといったようなことにつきましては、これはそれぞれの障害者にとりまして、障害者の皆さん方が十分にそれを判断できる体制を整えなければならないというふうに思います。
 例えば目の御不自由な方でありましたら、点字でありますとか拡大した字でありますとか、そうしたやり方もあると思いますし、あるいは耳が聞こえにくい方に対しましてはそれに対する対応というものが必要でございますし、やはり障害によってマイナスにならないように資格をお取りいただく、国家試験なりなんなりの試験を十分に受けていただく、適正に受けていただけるような体制というのは当然のことながらこれは整えていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
   〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕
 かなりいろいろの側面から研究をして、そして議論を積み重ねないといけないというふうに思いますが、いずれにいたしましても、そうした周辺のことがなおざりになりましては、これは何のためにこの法律を通したかわからなくなりますから、この法律ができます以上、その周辺のこともあわせて誤りないようにしていきたいと考えております。
○堀利和君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 引き続き坂口大臣にお伺いしたいと思いますけれども、今回、主に医療職種の関係の資格を取得する際の試験においての欠格条項の見直しということなんですが、例えば医療職種とは別に、福祉関係の職種においても当然さまざまな資格がございますし、その資格を取るためには試験を受けなければならない。中には欠格条項というものが全くないものもあるんですね。それは非常に結構なんですが、ただ、障害によっては、試験は受けられるかもしれないけれども、試験の中身の一部にどうしてもその障害では乗り越えられないものがあるということも実際あるんですね。
 これはもちろん本来業務のどうしても欠けてはならないものであればそれはそれとしてかなり困難かなと思うんですが、そこはそこの具体的な判断によるとは思いますけれども、欠格条項がないにもかかわらず部分的なところがどうしても障害との関係でうまく整合性が合わない、そのために試験は受けることができるけれども落ちる、落ちるだろうということで試験を受けない、そういった福祉関係の仕事につけないということがあるんですが、そういう意味で、厚生労働省として、もう少し幅の広い他の職種、試験等について御検討を願えればありがたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂口力君) 今御指摘になりました例えば福祉職の国家試験の試験方法などにつきましても、これまでも社会福祉士などにおきましては点字試験などを実施してきたところでございますし、できる限りの配慮はしてきたというふうに思っておりますが、先ほども申しましたとおり、この法律ができます以上、それぞれの職種の皆さん方、そしてその障害ごとにそれぞれ異なるわけでございますから、それぞれの障害を持つ皆さん方がひとしく受験をできるようにし、そしてそれに格差が生じないようにしていかなければならないというふうに思っております。したがいまして、今御指摘になりましたこともよく検討をしながらこれから進めていきたいというふうに思っております。
○堀利和君 試験はもとより、実際に職務を遂行する上で、その本来業務との関係で障害がどのような形で受け入れられるのか、そういう内容に踏み込んだところでも御検討願って、職種、職場によってはチームで行うということもあり得ることでしょうから、そういう意味で、一人でもやはり夢がかなうような状況を実現していただきたいことをお願いしたいと思います。
 次に、先ほどの補助的手段、さまざまな科学技術に基づいての支援機器の話もございます。これは当然今回の法改正にかかわりますし、同時にもっと広い全般的な問題でもございます。そういう点で、障害者がさまざまな仕事につく、社会参加をする際に、それを円滑にするための技術支援機器、こういうものを政府としてぜひ前に進めていただきたいと思うんです。そういう意味では、厚生労働省はもちろんですけれども、総務省もあるいは経済産業省もこの辺のところは協力いただいてお願いしたいと思います。
 また、IT技術、このITについても、これによってパソコン等で大変社会参加が進むという側面と、これがある意味で、どうしても障害者にとっては逆にこのITを使いこなすことができないためにかえってそれがハンディになる、デジタルデバイドという形になる可能性もありますので、こういった情報機器がスムーズに使えること、まさにそういう意味では政府としてもこの辺のところをぜひ頑張っていただきたいと思いますので、その辺のところを厚生労働省、総務省、経済産業省、ぜひその御見解をお伺いしたいと思います。
○副大臣(桝屋敬悟君) お答えを申し上げます。
 委員から今お話がありましたように、IT化を初めとする技術革新が進む中で、障害者の社会参加をより促進するために、福祉機器の開発あるいはデジタルデバイドの解消ということは極めて重要なテーマであるというふうに思っております。
 委員も御承知のとおり、福祉機器につきましては、平成五年から福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律に基づきまして、厚生労働省と経済産業省が連携をしながらその開発等を進めており、厚生労働省におきましては、一つは国立リハビリテーションセンター研究所における介護機器、情報伝達機器の開発、あるいは財団法人テクノエイド協会を通じました民間への研究助成を行っているところでございます。
 それから、今、委員からも御指摘がありましたデジタルデバイドの解消でございます。厚生労働省といたしましても、総務省や経済産業省における電気通信やあるいは情報機器のアクセシビリティ指針の策定などに協力をしてまいりましたし、また十三年度の予算におきましては、重度の視覚障害者に対しまして、パソコンを使う際に必要な周辺機器あるいはソフト購入の助成を行うということとともに、パソコンを教えるボランティアの指導者を養成するということを計画しているところであります。
 今後とも、技術革新を障害者の生活の質あるいは社会参加促進という観点に立ちまして関係省庁とも十分連携をしながら取り組みを進めていきたいと、このように思っております。
○政府参考人(高原耕三君) IT革命の推進に当たりましては、障害のある方を含めすべての人々が情報通信技術を十分に利用できる社会を実現することが必要だというふうに考えております。
 昨年の十一月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法が成立いたしましたが、その中においても、情報通信技術の利用の機会または能力の格差の是正が積極的に図られなければならない旨、規定されておるところでございます。
 総務省では、旧郵政省時代よりこの問題を非常に重要な課題と認識いたしておりまして、平成五年には、身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律というものを制定いたしました。また、平成十年には、障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針を定める等いたしておりまして、デジタルデバイドの解消及びユニバーサルデザインの推進に積極的に取り組んでまいったところでございます。
 また、予算等の支援策といたしまして、字幕番組等の制作支援あるいは情報バリアフリー・テレワークセンター整備の推進、あるいは障害者向け通信・放送役務の開発提供事業の推進、あるいは電話リレーサービスの助成等、実施または実施予定といたしておるところでございます。
 このほか、研究開発として、高齢者・障害者向け情報通信機器の開発とか、通信・放送サービスの充実、研究開発助成金の交付、あるいは次世代のバリアフリーシステムの研究開発、視聴覚障害者向け放送ソフト制作技術の研究開発等、多くのプロジェクトを展開いたしておるところでございます。
 また、現在、厚生省とともに高齢者・障害者の情報通信利用を促進する非営利活動の支援等に関する研究会を開催しておりまして、これは五月に取りまとめる予定となっております。
 総務省内部におきましても、現在、総務大臣のもとに、この一月に、デジタルデバイド解消も視野に入れまして、総務省IT推進有識者会議を、この中には障害者団体の代表の方にもお入りいただいておりますが、設置いたしておりまして、情報バリアフリーの具体的な推進策等について七月に結論をいただくことになっております。
 いずれにいたしましても、今後とも関係省庁とも連携を密にしながら、さらに積極的に各施策を進めてまいりたいと思っております。
○政府参考人(太田信一郎君) 経済産業省としては、障害を補いつつ障害者の社会参加を支援する福祉用具の開発が極めて重要と考えております。桝屋副大臣が先ほど御答弁されましたように、平成五年に成立した福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律に基づき、先端的な福祉用具の開発あるいは実用化に対する助成等を行っているところでございます。
 また、堀先生からITの関係で御質問がございました。私ども経済産業省におきましては、障害者、高齢者等が使いやすいITの普及を促進するため、障害者、高齢者等が容易に使用できるような情報処理機器の基本仕様などを盛り込んだいわゆる情報処理機器アクセシビリティ指針を平成二年、十一年前に策定しましたが、昨年六月にその後の技術の進展に合わせて改定しております。
 本指針の中で障害者、高齢者等の個別の事情に応じた機能を搭載した機器について詳細なガイドラインを示すとともに、一般に販売されている機器につきましても、例えばマウスを使わずにキーボードで操作できるというような形で、障害者、高齢者等の利用に応じられるよう搭載すべき機能を示しているところでございます。
 また、平成十年度、それから平成十二年度補正予算にそれぞれ十億円、十五億円を計上しまして、障害者、高齢者等が使いやすいIT機器等の開発支援、あるいは高齢者のIT利用特性データベースの構築に取り組んでいるところでございます。さらに、平成十三年度予算におきましても、機器等の開発支援、データベースの構築に加え、先ほど申し上げました指針の各種機能を標準化する、あるいは障害者、高齢者等を支援する者への研修カリキュラムの策定等の施策を推進するため、七億五千万円の予算を計上しているところでございます。
○堀利和君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 このように、支援機器、技術によって社会参加、仕事ができるというふうになると思うんですね。片方で、先ほどからも言っていますように、人的支援ということも期待されるわけです。障害者雇用促進法の制度でも職場介助者制度というのがございます。しかし、私から見ましても非常にそれはまだまだ不十分でございますので、大臣、これを充実することで、人的支援を充実することで一層雇用促進も進むと思いますので、その辺についての御決意をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 障害者の皆さん方に就労をしていただくためには、やはりその環境整備ということが大事でございます。
 一つは、施設でありますとか設備でありますとか、あるいは機械器具でありますとか、そうしたものをどのように改善し、そしてそれを整備していくかという問題がございます。
 また、もう一つは、今御指摘になりましたように、介護をする人、ジョブコーチなどと呼ばれたりもしておりますが、やはり人の問題がかなり大事になってまいります。ですから、そうした手を差し伸べる人の配置といったこともその場合には大事になるだろうというふうに思います。例えば、先ほどから何度か出ておりますように、医師の国家試験に合格して医師になられた場合に、その障害によりましてはお手伝いをする人というのがやはり必要になってくるんだろうというふうに思います。
 機械器具の方もだんだんと発達してきましたから、例えば心電図などをとりましても、昔はただとるだけで自分ですべて判断をしなければなりませんでしたが、最近は心電図をとればちゃんとその心電図で診断名もきちっと出てくるようになってきたわけでございますから、そうしたことを考えますと、レントゲン写真などというのも、これからだんだん発達をしていけばそうしたことも、ただ単に撮るだけではなくて、そのレントゲンに対する診断のようなものもあるいは出てくるのかもしれませんし、そうしたものも開発をしていかなければならないというふうに思います。
 いずれにいたしましても、そこに若干手を差し伸べる人がやはり必要ではないかと思いますし、またその職場におきますいわゆるチームのあり方と申しますか、みんながそこに手を差し伸べ合って、そして一つの医療チームを形成していくというみんなの心構えの問題もございますし、そうしたことを総合的にこれから進めていく必要があるのではないかというふうに認識をいたしております。
○堀利和君 では最後に、内閣府の推進本部の関係でお伺いしたいと思いますけれども、来年度で新長期計画が、そして同時に障害者プランが終わるわけですけれども、これの完全実施をきちんとやっていただきたいことと、その後、これでおしまいということには私はならないかと思いますので、総合的な、そして目標を立てた新たな計画なりプランなりをぜひつくって、これからの二十一世紀に十分な障害者施策を実現していただきたいと思いますので、その辺の御決意をお伺いして、終わりたいと思います。
○副大臣(坂井隆憲君) 先生御指摘のように、障害者対策に関する新長期計画及びその重点実施計画である障害者プランは平成十四年度で終期を迎えることになりますが、これまで、例えば数値目標のある事項に係る進捗状況等をいろいろ見ていますと、おおむね順調に推移しているものと思っております。残された期間においても、目標の達成に向けて、当然のことながら計画の着実な推進を図るよう最善の力を尽くしてまいりたいと思っています。
 また、終わった後のこともありますので、平成十五年度からの新しい計画は、障害のある方や学識経験者など関係者の御意見も当然のことながら十分にお聞きして、障害のある方のニーズに的確にこたえ、新しい時代の要請にも対応したものとすることにより障害者施策の総合的かつ効果的な推進に内閣府としても努めてまいる所存であります。よろしくお願いします。
○堀利和君 ありがとうございました。
 終わります。

○小池晃君 内閣府にまずお伺いしたいんですけれども、九九年に六十三制度の見直しを決めて、先ほど御答弁で残りは二十二制度、十九法令だというお話でした。これは二〇〇二年までにやるんだというお話でしたけれども、これは必ず、そして早急にやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(江崎芳雄君) 御質問にございましたように、今国会にも厚生労働省それから警察庁から法案が提出されてございますし、こういうものが終わりますと残りが二十二制度でございます。
 内閣府といたしましては、平成十一年に決めましたもので十四年度中にはやるということになってございますので、引き続き格段の努力を重ねていきたい、かように思ってございます。
○小池晃君 さらに、現行の新長期計画の中で欠格条項の問題を見てみますと、行数も非常に少なくて、位置づけとしては非常に低かったのかなというような印象を私は受けたわけでありますけれども、これから策定が予定されている二〇〇三年度からの新たな障害者基本法に基づく計画、ここでは包括的な目標を盛り込むべきじゃないか、障害者の差別禁止、権利の擁護の目標、これを新しい次の長期計画にはきちんと盛り込むべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(江崎芳雄君) 現在の新長期計画でございますけれども、その中で、精神障害、視聴覚障害等を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう、必要な見直しについて検討を行うということが言われております。これに基づきまして、先般御議論になってございます欠格条項の見直し等を行っておるということでございます。
 それで、先生の御質問の包括的な差別禁止等を盛り込むべきではないかということでございますけれども、こういった包括的な差別禁止でございますとか、それから権利擁護に関するこういったものが一体どういう内容になるのか、どういう具体的なものを想定するのかということによるわけでございますが、例えばアメリカのように一般の企業なり事業者に差別禁止を義務づける、こういった制度を我が国に導入するということでございますと、なかなか検討すべき課題が多いのかなというぐあいに考えてございます。
 ただ一方、障害を持つ方の権利が尊重され、社会、経済、文化といったあらゆる分野の活動への参加機会が確保されるということを基本に障害者施策が推進されるべきであるというのは、これはもう当然のことでございまして、平成十五年度からの新たな障害者基本計画の策定に当たりましてはそのような観点を十分踏まえて検討してまいりたい、かように考えてございます。
○小池晃君 さらに、これまで障害者団体が参加をして障害者施策について議論する場が、中央障害者施策推進協議会があったわけですけれども、この一月に省庁再編で廃止をされている。この新長期計画の策定も含めて、こういう組織、障害者団体や専門家が集まって継続的に議論して政府の施策に反映させていく場をやはり設けるべきではないかというふうに考えるのですが、内閣府の方ではいかがお考えでしょうか。
○政府参考人(江崎芳雄君) 申し上げるまでもなく、障害者施策は障害のある方々の多様なニーズに的確にこたえて推進する必要がございます。そのためには、障害のある方々の御意見をお聞きするということが特に大切である、大事であるというぐあいに考えてございます。このため、先ほど御質問にございましたように、中央障害者施策推進協議会が廃止されたわけでございますけれども、現在、内閣府におきまして、障害者施策を推進する上で障害のある方の意見をどのような形で反映させるのがよいのか、その具体的な方法について鋭意検討しておるところでございます。
○小池晃君 ぜひ中央障害者施策推進協議会のような恒常的な議論の場をつくっていただきたいということを申し上げたいと思います。
 厚生労働大臣にお伺いしたいんですが、この欠格条項の見直しの議論を進めてまいりまして、やはり包括的なものが必要なのではないだろうかと。先ほどの参考人質疑でもアメリカのADAの問題が出ましたけれども、雇用の申し込み手続、雇用、昇進、解雇、研修、報酬、こういう一切の問題についてアメリカでは障害を理由とした差別を禁止しておるわけであります。日本でもこの問題を一歩前に進めるためには、四十カ国を超える国でもう既にそういう包括法ができているというお話も先ほどありましたし、障害者に対する差別を禁止して、そして権利を擁護する包括的な法律の制定が我が国でも求められていると考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂口力君) 差別のない社会、障害者に対する差別のない社会を目指していかなければならない、そういう社会を実現しなければならないということにおきましては、先生の御主張、私も同感だというふうに思います。ただ、それを進めていきます場合に、アメリカ方式の最終的にはすべて裁判でという行き方が、日本の文化と申しますか、日本の行き方にそれが合うかどうかといったようなことは私はよく考えていかないといけないという気がいたします。
 そちらの方向に向かっていかなければならないことだけは間違いがないわけでありますが、それを進めていく進め方につきましてはいろいろの御意見があると思いますので、私はそのいろいろの御意見を踏まえながら一歩一歩前に進めていくべきだろうというふうに思っておる次第でございます。今回のこの法律ができるということも、これも大きな一歩の前進でございますし、そうしたことの積み重ねによって障害者の皆さん方をお守りしていくということにしていかないといけないというふうに思います。
 ただしかし、ほかにいろいろなことをやってみたけれども、やはり最終的に何か強い罰則でも設けないことには、あるいは裁判でもやるということにでもしなければこれが進まないというようなことになれば、それはそうしたことも考えなければならないというふうに思いますが、私は、最初からそうしたことよりも、もっとみんなで前進をしていくような方法がないのか、そのこともやはりよく検討をしていかなければならないのではないかというふうに思っております。
○小池晃君 最後に、この法案について修正案が後ほど提案されるかと思うんですが、五年後の見直しということもあるようであります。
 医政局長にお伺いしたいんですけれども、私どはもうちょっと早く、三年ぐらいでいいんじゃないかという意見を申し上げたんですが、やはり実施するといろんな問題が出てくるだろうということは容易に想像できるわけです。ぜひ運用に当たっては障害者の皆さんの声に謙虚に耳を傾けて運用していただきたいと思いますし、見直し規定ができたとしても、これは別に五年と見直し規定を置いたらば五年たつまで絶対いじっちゃいけないということではないわけですから、運用においてさまざまな問題点が出てくれば、それはその時点でやはり見直すということも含めて取り組んでいくんだということを確認させていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) この法律の運用に当たりましては、今回の法律改正の趣旨を踏まえて、障害者の関係者の団体はもちろん、いろいろ関係団体の御意見などに耳を傾けながら運用してまいりたいと考えております。
○小池晃君 終わりますが、私は、やはりこの問題、新しい道を開くに当たって、実施すればいろんな問題が出てくるだろうし、本日もいろんな問題を指摘させていただきました。そういった問題点が出てくればぜひ可能な限り早期に見直すということも含めて求めたいというふうに思っております。
 以上を申し上げて、質問を終わります。

○大脇雅子君 欠格事項の見直しの経過におきましてパブリックコメントを募って意見を聴取されたということは評価できます。非常に多岐にわたる当事者団体からの要望や意見が今回の改正案に寄せられましたが、そうした声がどれだけ反映されたのかというと、いまだ不十分ではないかと言わざるを得ません。
 要望の一つに、資格付与に際しては、障害者団体からは資格付与の判定に携わる者の人選への配慮、また資格を与えない決定が出された際の不服申し立て制度の明文化及び申し立てのための第三者機関の設置というような意見が出されておりますが、これらについて厚生労働省が答弁をしている事項を見ますと、当該障害について十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞く、あるいは不服申し立ての際の意見聴取には十分な理解がある医師等の専門家を同席させるというような回答が出されております。
 そこで、資格付与についてお尋ねをしたいのですが、この資格付与判定の際の専門家、あるいは不服申し立て意見聴取の際の専門家、これらは同一人であるのかあるいはそうではないのか、具体的にどのような人たちを考えていらっしゃるのでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 例えば医師免許について障害者に係る欠格事由の判断を行うに当たりましては、専門的見地から免許拒否の原因となる事実の認定及びその評価を行うため専門家による合議を行うこととしております。
 この合議は、同一申請者について、まず免許の申請があったときとそれから免許を与えないこととする場合の二回行うこととしているわけでございますが、免許を与えないこととする場合の合議につきましては、より慎重な判断を要することから、免許の申請があったときの合議に係る専門家にさらに別の専門家を加えて合議を行うことが適当ではないかと考えております。
○大脇雅子君 どちらの場合でも専門家の人選というのは免許権者が行うわけでしょうが、選任の基準となる十分な理解がある人たちというのは具体的にどのような内容の人たちというふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 当該障害について十分に理解がある専門家について、例えば医師の場合でいいますと、医師資格に係る専門家、それからまた申請者が視覚障害を想定した場合にはこの視覚障害に精通した学識経験者、また三番目といたしまして、医師を想定いたしましたときに、この医師の養成教育に係る専門家、これらのそれぞれの専門家などが適当ではないかと考えているところでございます。
○大脇雅子君 今回の改正で、拒否の処分をしようとするとき、事前に通知をして、そのことに対して本人からの求めがあった場合には意見の聴取を行わなければならないとする規定が導入され、いわゆる意見表明権が加わったことは大きく評価できると思いますが、この手続はいつの段階で行われるのでしょうか。
 また、処分決定後の不服申し立てについては行政不服審査法の枠組みで行われる、こういう趣旨でしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の欠格事由の見直しに当たっては、免許申請を拒否された方についてその権利を保護するための手続を整備することが重要であると考えております。
 このため、改正法案におきましては、免許申請を拒否しようとする場合には、申請者にあらかじめその旨を通知し、本人が異議を申し立てた場合には厚生労働大臣の指定する職員が意見を聴取する手続を置くこととしているところでございます。そしてさらに、その結果、免許申請を拒否された場合には、行政不服審査法によって訴えるといいますか、その判断の取り消しを求めることは可能でございます。
○大脇雅子君 先ほど金子参考人も、本人の状況は本人が一番よくわかっていると。そして、その本人の状況を最もよく把握している医師等、あるいは家人その他も入るかと思いますが、そうした人たちの意見聴取ということはやはりきめ細かくされる必要があるというふうに思うのですが、この点についての配慮についてはどうでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 本人からの意見聴取の際には、個々の申請者が有する障害について十分な理解がある部外の専門家が共同でこの事実の認定及び業務を行うために必要な認知、判断及び意思疎通ができるか否かに関する評価を行うこととしておりまして、判断の客観性を確保するという観点から、本人の希望する者をその場に同席させるということは考えておりませんが、しかしながら最終的な判断を行うに当たりましては、当該申請者の状況を最もよく把握しているかかりつけの医師等、またこの診断書を書いた医師等から事情を聴取することは当然必要なことと考えております。
○大脇雅子君 欠格を理由として免許拒否処分の決定がなされた後でも、補助的手段の技術的進展とかあるいは心身状況の改善等、先ほども障害は変わるもの、補助具は進歩するもの、そういった観点から考えますと、そうした改善等によって適切な業務遂行が可能になる場合というのもあると考えられますが、そのときはどのような対応になるのでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 委員御指摘のとおり、一度欠格事由を理由とした免許拒否処分の決定がなされた場合でも、その後の補助的手段の技術的進展や心身状況の改善などによりまして適切な業務遂行が可能となる場合も想定されるところでございます。このような場合には再申請していただくことになり、再申請された時点で改めて欠格事由に係る事実の認定及び業務を行うために必要な認知、判断、意思疎通ができるか否かに関する評価を行うことになるものと考えております。
○大脇雅子君 先ほど参考人のお二人、金参考人と金子参考人から、ガイドライン策定等の第三者機関、委員会のようなものを恒常的に設置したらどうかという意見がありましたが、それを検討していただくということは将来いかがでしょうか。担当者の方と大臣にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(伊藤雅治君) 先ほどから御説明しておりますように、この専門家のグループによる合議という手続を経ることによりまして大臣の処分の客観性というものが保たれるというふうに考えておりますが、委員御指摘の点につきましては、今後この法律の施行状況を見ながらまた改めて検討すべき課題かと考えております。
○国務大臣(坂口力君) これから幾つもの例を積み重ねていくことというふうに思いますが、意見聴取等を行いました結果、御指摘のような結果、いわゆる拒否処分の予定が変更されるというようなケースも将来は起こり得るものと考えます。
○大脇雅子君 また、改正案は目が見えない者、耳が聞こえない者といった欠格事由が法文に明記されなくなった、しかし各省令で定める運用事項には障害を特定する規定を用いるということになっております。このために、実質上、障害者を排除する社会的な障壁が十分に取り除かれたのかどうかという観点から考えますと、一定の進歩はあるといえ、そうした障害は取り除かれたとは言いがたいというふうに考えざるを得ません。
 多くの障害者団体から、欠格条項そのものの撤廃とか、補助的手段の導入と整備、あるいは本人の心身状況を踏まえた社会的、医学的判断に基づく付与制度の実現というようなことが強く求められているわけであります。補助的手段の導入について、どのような補助的手段を用いれば業務遂行が可能になるかということを検討して、条件を整えた上で免許付与の審査をすべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の改正の結果、新たに資格等を取得した方が適正に業務を遂行できるように必要な措置を講ずることは、今回の改正の趣旨を実効あるものにする上で重要であると考えております。
 このため、こういった方を雇用または配置する事業者が配慮すべき事項につきまして、個々の資格や業態の実態に応じまして厚生労働省令により規定する予定でございます。
 具体的には、例えば聴覚に障害を有する薬剤師さんが勤務する薬局等におきましては、情報提供や疑義照会などの薬剤師としての業務を円滑に行うことができるよう、例えば補助器具としてファクスですとかEメールなどが考えられるのではないかと思います。
○大脇雅子君 欠格条項に何々の障害という、心身の障害という形が残るということに対して、障害者団体の方たちのみならず私どもも、障害の個別性を考えた場合に、やはり重要なのは個別的な適性であると。例えば男女差別におきましても、それは性によるいわゆる輪切りはなくて、人間としての適性という形で性差別排除ということが基本原則になっているわけでありますし、現在検討されつつある年齢差別でも、年齢によってさまざまな多様な能力を持っている人たちを一律に切り捨てていくということはやはり年齢差別で、個別的な適性というようなことが一番大事だということになりますと、心身の障害ということは、なお差別的な用語、差別的な内容を含むということは否めないと思うんです。
 こうした言語の検討といいますか、それはまた一つ理念の示し方だと思うんですけれども、この心身の障害という、そういう規定方法を将来検討していかれる可能性があるのかないのか、それについてどのような意見をお持ちか、お尋ねしたいと思います。
○政府参考人(伊藤雅治君) 今回の改正におきましては、再三繰り返して申し上げておりますが、現行法におきましては、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者は例えば医師法におきましては絶対的欠格事由としていわゆる門前払いになっていたわけでございます。それを今回、政府の統一方針によりまして、絶対的欠格事由を相対的欠格事由に改めまして、その表現ぶりにつきましても、「心身の障害により」、例えば「医師の業務を適正に行うことができない者として」と。つまり、これは、心身の障害という障害を特定しているというよりは、障害によりその業務を適正に行うことができない者と、いわゆる能力に着目した法律上の表現になっているわけでございます。
 そしてさらに、この省令におきましては、相対的欠格事由におきますその書きぶりといたしまして、心身の障害により、例えば医師の場合ですと、医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるものとは、何々の障害により医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする、こういう形になっておりまして、基本的な考え方は、障害そのものというよりは障害による業務を遂行する能力に着目した法律改正の趣旨でございまして、私どもといたしましては、この改正の趣旨を生かしまして、あくまでも個別具体的にその障害者の持っている能力、そして職種のそれぞれ要求される水準といいますか、それらを個別に厳密に評価をして運用していくということが重要ではなかろうかと思っております。
○大脇雅子君 今回の改正は平成五年から十年間にわたる障害者対策に関する新長期計画に基づく障害者プランの総仕上げとして行われるものと思われますが、やはりいまだに障害のゆえをもって社会参加の門戸すらわずかしか開かれていないというのが現状ではないかと。したがって、二〇〇三年三月末をもって施策を終わらせるということではなくて、引き続き新障害者プランを策定して障害者の完全参加と平等に向けた努力を一層促進していく必要があると考えます。
 私も障害者という言葉を使いましたが、これはハンディキャップパーソンというのをチャレンジャーというふうに呼ぶべきだという国際的なコンセンサスも今形成されつつあることですので、私自身も、どういう言葉を使うべきかということは、心身の障害にこだわりながら新しい言葉を発見できずにおりますが、そうしたチャレンジャーとしての人間の可能性を追求していくという基本的な視点がこれからは大切であろうかと思います。
 大臣の御見解を伺わせていただきまして、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 今御指摘をいただきましたように、チャレンジャーあるいはチャレンジドという言葉が最近言われるようになってまいりまして、そうした表現に変えるべきだというお話があるわけでございます。
 その趣旨を私たちも十分に理解するわけでございますが、現在のこの障害者プランは平成十四年度を目標として、そして一応幕を閉じることになっているわけでございます。そこで、それまでにできるだけのことをしていかなければならないというふうに思っておりますが、しかしそこでもしも全部できないことがあれば、当然のことながら、平成十五年度以降におきましても今まで同様あるいはそれ以上にピッチを上げてこのチャレンジドの問題、チャレンジャーの問題をこれから積み重ねていかなければならないものというふうに認識をいたしております。

○西川きよし君 どうぞよろしくお願い申し上げます。
 坂口大臣にはもう何度か御質問をさせていただきました。そして、いつも一つ一つ真心で御答弁をいただいて本当にありがとうございます。そして、御答弁の中では何度かノーマライゼーションというお言葉が出てまいりますが、本日も一番最初の阿部先生の御質問のときにも御答弁でノーマライゼーションというお言葉をお伺いいたしました。ノーマライゼーションの理念に基づく施策を進めていかれようとする熱いお気持ちが本当に十分に伝わってまいりますし、今回の欠格事項の見直しについても、その結果と今後の取り組みに大変に大きな期待が寄せられております。
 しかし、その一方で、今日までこれらの法制度の障壁によりまして多くの方々の社会参加に大変困難をもたらしたことも事実であります。そうした過去の反省というものも明らかにした上で新しい一歩を踏み出すことが大変必要ではないかなというふうに思います。
 私自身そう思うんですが、まず冒頭、大臣からこれに対してのお考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) きょう午前中の質疑におきましてもお答えをさせていただきましたとおり、ノーマライゼーションという言葉がもう語られて久しいわけでございますが、その中で一歩一歩前進はしてきているというふうに思っております。
 しかし、今までは、ややもいたしますと障害者の障害部分により多くの着目が寄せられてきた。そこが着目されまして、そして町づくりにいたしましても、あるいはまた公的な建築物や施設にいたしましても、障害者の皆さん方のその障害が乗り越えられるように、一般の健常者の皆さん方と同じようにこの社会で活躍をしていただけるようにということで今日を迎えてきたというふうに思います。
 しかし、考えてみれば、障害をお持ちの皆さん方は、体の一部に障害はお持ちでございますけれども、しかしその他の部分におきましては非常にすぐれた能力をお持ちの皆さん方が多かったわけであります。そのすぐれた能力を引き出す、その能力を使っていただける社会を形成していくということがより大事な問題でありますが、そこまで今まで至っていなかった。そのことを今回のこの法律で、ぜひ皆さん方がお持ちになっているそのすぐれた部分をより引き出していこう、そのすぐれた部分で社会貢献をしていただき、そしてより生きがいのある生涯を送っていただけるようにしていこうというのが今回のこの法律の大きな理念と申しますか趣旨ではないかというふうに思っております。
 けさからも御議論がございましたとおり、いささか遅過ぎたではないかという御指摘もございますし、見方によりましてはそれは甘んじて受けなければならない御批判であるのかもしれません。しかし、ようやくにしてここまで到達をいたしました以上、おくれているとするならばそれを取り戻していく努力というのをこれからしていかなければならないものというふうに考えております。
○西川きよし君 どうもありがとうございました。
 それでは次に、絶対的欠格事由から相対的欠格事由への改定に対しましての評価からお伺いしたいと思うわけですが、厚生労働省が所管している資格制度、免許制度の中で既に欠格事由の適正化が行われているものが幾つかあると思いますが、その内容と適正化後の評価について政府参考人の方から御答弁をお願いいたします。
○政府参考人(今田寛睦君) 御承知のように、平成五年の三月に障害者対策に関する新長期計画が策定されまして、その中で各種の資格制度が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう必要な見直しを検討すべしと、このような御指摘がなされたわけであります。
 これらを踏まえまして、まず平成五年でありますが、精神保健法等の一部を改正する法律によりまして、栄養士、診療放射線技師、調理師、製菓衛生師、ケシの栽培の許可につきまして、精神障害者に係ります欠格事由を絶対的欠格事由から相対的欠格事由に改正をいたしました。それから、平成七年でありますが、理美容師法の一部を改正する法律によりまして、理容師と美容師につきまして、精神障害者に係る欠格事由を絶対的欠格事由から相対的欠格事由に改正したところであります。
 こうした絶対的欠格事由から相対的欠格事由に改正したことによりましてどうそれを評価するかという御質問でありますが、私ども、精神障害のある方も障害の程度や治療の内容などによってはこれらの資格の取得が十分に可能なのだということを障害者の皆様方が御認識され、資格取得に積極的に取り組もうとする意識が育ってきたのではないか、あるいは精神障害者に対する社会的な偏見というものがなくなっていく一つの役割を果たし得たのではないか、このような評価をいたしております。障害者のノーマライゼーションの推進にそれぞれそのような役割が果たされることを今後も期待したいと思っております。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 そこで、平成七年に議員立法によりまして理容師法及び美容師法の改正が行われておりますが、このときには、欠格事由の緩和、そしてまた中学卒業であった受験資格を高校卒業にという措置がとられたわけですけれども、その際、参議院の厚生委員会におきまして二点の附帯決議がなされております。
 その一つといたしまして、「理容師又は美容師の養成課程を有するろう学校高等部卒業者の理容師試験又は美容師試験の受験資格については、これらの者の置かれている状況にかんがみ、特段の配慮を払うこと。」、こういうふうにされておられます。
 この対応について、ぜひ副大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。
○副大臣(桝屋敬悟君) 私へのお尋ねでございます。
 私も床屋出身でありまして、我が家で聾唖者の方が何人も資格を取られたのを見ておりまして、前回の七年の法改正のときの附帯決議のお話も今ありましたけれども、そこまで配慮していただくということは本当に感謝を申し上げたいと思います。
 先生おっしゃるとおり、附帯決議におきまして聾学校高等部卒業者の受験資格に特段の配慮が求められたところであります。平成十年の四月施行でありますから、今の附帯決議を踏まえまして、旧厚生省におきましては、改正法施行前の平成十年二月でありますが、聾学校高等部の理容師あるいは美容師養成課程への進学資格を中卒程度とする、こういう通知を発出いたしまして、聾学校高等部の卒業後に直ちに理容師試験、美容師試験を受験できるというふうにいたしたところでございます。
○西川きよし君 ありがとうございました。床屋さんをということは存じ上げなかったもので。
 もう一点、そこでお伺いしたいと思います。
 「中学校卒業者の就業機会が狭められることのないよう適切な措置を講ずること。」、こういうふうにされておりましたわけですけれども、最近は高校進学率が大変高いわけですし、しかしそうは申しましても高校に進学しない子供たちもたくさんおります。昨年は約一万三千人ほどいるということをお伺いしております。そうした子供たちの就業機会の幅を狭めることのないようにぜひよろしくお願いしたいと思うわけです。
 個人的には大変こういった問題に危惧をしておりますが、この欠格条項とは直接関係はございませんけれども、ぜひこういった点にも対応をお願いしたいなと。再度、副大臣に御答弁をお願いします。
○副大臣(桝屋敬悟君) 重ねてのお尋ねであります。
 先ほどの附帯決議の前の附帯決議をいただいたわけでありますが、「中学校卒業者の就業機会が狭められることのないよう適切な措置を講ずること。」、こういう附帯決議をいただいているわけであります。これを踏まえまして、旧厚生省におきましては、省令で特例を設けるとともに、平成十年二月に通知を出しまして、中学校卒業者であっても、理容師、美容師の養成施設において高等学校で学ぶべき保健などの三科目を修得すれば理容師試験、美容師試験を受験できるというようにいたしたところでございます。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 それでは次に、国家公務員の就業規則についてお伺いをいたします。
 内閣府の取りまとめによりますと、欠格条項の見直し対象となっている六十三制度のうち二十二制度が検討中ということでございますけれども、その中の何点かについての進捗状況をお聞かせいただきたいと思います。
 まず人事院に、国家公務員の就業禁止規定中の欠格条項についてぜひ御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(大村厚至君) ただいまお尋ねがありました国家公務員につきましては、公務の職場における職員の保健及び安全保持を図る観点から設けられました人事院規則一〇―四及び船員を対象としました人事院規則一〇―八に障害者に係る就業禁止規定がありましたことから、障害者が社会活動に参加することを不当に阻む要因とならないよう見直しの対象としてきたところでございます。
 その結果、一般の職員を対象とする人事院規則一〇―四につきましては、昨年十二月に障害者に係る欠格条項の見直しの方針を踏まえて所要の改正を行ったところでございます。
 また、国家公務員でございます船員を対象とする人事院規則一〇―八につきましても、現在、船員の一般規定でございます船員法の見直しの動向を踏まえつつ検討を進めているところでございます。
○西川きよし君 事前に問い合わせました国土交通省の船員関係の見直し動向という部分もお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(鶴野泰孝君) ただいまお尋ねのありました船員の欠格条項についてでございますが、船員法におきまして、船舶所有者は伝染病等の疾病にかかった者を作業に従事させてはいけないということとされているところでございます。
 現在、これにつきまして、海上労働の特殊性も勘案しながら検討を行っているところでございますけれども、障害者施策推進本部決定に従いまして、関係者の御意見を伺いつつ、できる限り早期に結論を得まして所要の措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 どうして行われなかったのかなとちょっと疑問に思ったものですから御答弁をいただいたわけですけれども、それでは、今人事院の御説明にもございました船員関係について国土交通省より御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(鶴野泰孝君) 私、国土交通省の者でございますが、先生の御質問を伺っておりまして、船員の見直しの状況について今お答えを申し上げた次第でございます。
○西川きよし君 済みません。大変御無礼をいたしました。私の方でちょっと後先になりまして、大変御無礼をいたしました。
 次に、今後こういった就業規則のあり方について民間企業に対してもその改善を求めていかなくてはならないというふうに思うわけですけれども、そういった意味で国家公務員の就業規則についてはできるだけ早く改善をしていただきたい、こういうふうに思うわけですけれども、改めまして人事院の方から御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(大村厚至君) 人事院規則一〇―八につきましては、先ほど国土交通省の方から御答弁あったように、海上勤務の特殊性ということもございます船員に関する規定でございます。したがいまして、国土交通省における船員法の見直しの動向を踏まえつつ検討を進めたいというふうに思っております。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 これまでの御議論でもありましたように、今後何よりも大切なのは、困難なことがあったといたしましても、どのような補助や工夫があればできるのか、いかにそれをまた支援していくのか、そうした観点が大変必要であるというふうに思います。
 その意味では、障害を補う機器の開発、また事業主への助成、就業環境の整備、さらには教育機関での環境の改善、欠格条項の見直しを実効あるものにしていくという努力が大変重要であるというふうに思います。
 最後に、厚生労働大臣に御見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 先ほどもお答えを申し上げたところでございますが、これから障害を持つ皆さん方があらゆる職場に進出をされるということになってまいりますと、やはり施設それから建物、そうしたものにも配慮をしていかなければなりませんし、今まで使用してまいりました機械器具等につきましても改善を加えていかなければならないというふうに思います。
 それにも増して大事なのは、それを介助する、介助をしてくれる人がやはり必要でございますが、そうした人をこれからどのように育成していくかということにも力を入れていかなければならないというふうに思います。そうした介助をしていただく人をつくることによって、職場内におきます、例えば医療でありますればチーム医療がスムーズに進むようになるでありましょうし、また他の職場でございましたらその職場としての環境が整うことになるのであろうというふうに思っております。
 ですから、これから先、先ほどのチャレンジドという言葉を使わせていただければ、チャレンジドの皆さん方が働いていただきますためには、その人の周辺にお手伝いをする人、それから機器の開発、そして施設の改善、そうしたことがその周辺で行われて初めて実現をするわけでございますので、そのことに十分な配慮がこれからなされなければならない。これは各職場において同様のことが、どの職場におきましてもそうしたことがこれから大事になってくるのではないか、そのことはこれからの教育におきましても非常に大きな変化をもたらすのではないかと考えているところでございます。
 そうしたことに十分な配慮をしてこれから進めなければならないというふうに思っております。
○西川きよし君 ありがとうございました。

    ─────────────
○委員長(中島眞人君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、田浦直君及び大島慶久君が委員を辞任され、その補欠として亀井郁夫君及び世耕弘成君がそれぞれ選任されました。
    ─────────────
○黒岩秩子君 障害者にとっての就職という問題は一般に大変厳しいものがあるということについては、私自身さまざまのケースとおつき合いさせていただく中で実感してきているところです。まず就職ができたとしても、その後なかなか定着しない。ようやく定着しても、今回の不況によるリストラなどでは一番先に首を切られてしまう。
 そのようなことに立ち会ってきた中で、大変象徴的な事件に私はかかわらせていただいております。御存じの方も多いと思いますけれども、水戸で水戸事件という裁判がもう四年間続いておりますが、これは先ほど参考人質疑のところでちょっと触れたんですけれども、一年半の障害者雇用促進法による助成金、その助成金目当てに障害者を雇っている会社、この会社はたくさんの表彰状が張りめぐらされているそうです。つまり、優良企業で、障害者をたくさん雇っているということで表彰を受けているわけなんですけれども、実はその助成金が目当てなもので、一年半たったらやめてもらわないと次の人の助成金が入らないということで、やめてもらうための暴力が始まり、その暴力がどんどん拡大していって性的暴力になり、たくさんの被害者が出ている、そういう事件なわけなんです。
 この実態について、その障害者たちの親はよく実態を知っているにもかかわらず、会社に対して抗議することもなく、また裁判になってもそれを訴えることもなく、実はそれをだれが告発したかというと、その被害者たちが習っているダンスの先生が告発したことによってこれが事件化されたという事件なんですね。
 なぜ親たちがそのことを告発しないかといえば、もしここを首になったら、後、勤める先がないというのが現実だということなんですね。それほど障害者にとっての就職というのはとても厳しくて、もうたたかれようとレイプをされようと何をされようと、置いてくれているだけでありがたいというのが親たちの実感であると。
 こういう状況の中で、今回このような欠格条項の見直しが行われ、それによって障害者の雇用が少しでも広がればとても喜ばしいことだと思っております。そして、私はまだ本当に新米で一カ月にもならないので、これまで皆さん方がどんなに努力をなさったか、少し伺っております。実際に障害者の方々がNPOという形でこの法案をつくるのにかかわってきた御苦労も、そしてまたお役所の皆さんの御苦労も伺っております。
 そういう中で、しかしこの改正案を読んだとき私はとても不安になったことは、省令に委任するという形で相対的欠格事由、省令に委任したということなんです。これも私は余りよくわからないことで、今、大脇先生にお伺いしたんですけれども、法律というのは、私どもいわゆる国民の皆さんの委託を受けていろいろ発言していくことができるわけですけれども、省令というのはそういうことができないというようなものなのではないでしょうか。
 そのようなものに委任したのはなぜなのかということをお伺いさせていただきたいのですが。
○政府参考人(伊藤雅治君) なぜ具体的な欠格事由を省令に委任するかというお尋ねでございます。
 まず最初の方から御説明させていただきますと、今回の欠格事由の見直しに当たりましては、絶対的欠格事由から相対的欠格事由への改正、それから障害者をあらわす規定から障害者を特定しない規定への改正という、政府全体にわたる基本的対処方針に従いまして必要な法令改正を行うこととしたものでございます。
 見直し後の相対的欠格事由を運用するに当たりましては、資格等に応じて業務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体または精神機能が異なることから、どのような機能の障害であれば資格の取得等が可能かどうかを明確にする必要があること、またそういった身体または精神機能の範囲については、今後の障害についての医療の進歩、障害を補う手段に係る科学技術の進歩等を踏まえながら柔軟に検討を加え必要な措置を講じていく必要があること、このような理由から具体的内容を省令において規定することとしたものでございます。
○黒岩秩子君 ありがとうございました。
 具体的にはどのような内容を省令で定めていこうとなさっているのか、お伺いします。
○政府参考人(伊藤雅治君) ちょっと長くなりますが、心身の障害により業務の、例えば医師でございますと、医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるものに該当する者には免許を与えないことがある、これが法律の規定でございます。
 そこで、具体的にどういう方が厚生労働省令で定めるものに該当するのかということにつきまして省令で定めるわけでございますが、そこで文言の表現ぶりといたしましては、心身の障害により、例えば医師でございますと、医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるものとは、何々の障害により、ここには例えば聴覚、視覚等いろいろ入るわけでございますが、の障害により、医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする、こういう表現ぶりになります。
 そこで、今回、厚生労働省全体といたしまして二十七本の法律を改正させていただくことになっておりますが、大きく分けまして、資格の性格等によりまして三つのグループに分けさせていただいております。
 具体的には、医師、歯科医師、診療放射線技師等につきましては、視覚、聴覚、音声もしくは言語または精神の機能の障害を相対的欠格事由として具体的に厚生労働省令で定める。さらに、二番目のグループといたしましては、薬剤師、臨床検査技師等の資格につきまして視覚または精神の障害を相対的欠格事由とさせていただき、三つ目のグループといたしまして、理学療法士、作業療法士、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師等につきましては精神の障害のみを相対的欠格事由という形で決めさせていただく、このような整理をさせていただいたわけでございます。
○黒岩秩子君 どうもよく理解できないのは、相対的と言われながら障害を特定するわけなんですね。障害を特定するということは絶対的欠格事由になるのではありませんか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 今申し上げました省令に規定する障害をもって直ちに免許を交付する欠格事由とするものではございませんで、それらの障害を持つ方の個別の能力を医師の診断書、また厚生労働省におきましてプールさせていただく予定の専門家によりまして個別に具体的な能力を評価していただき、そしてその結果に基づいて厚生労働大臣が免許を付与するか否かということの決定をしていただくということになるわけでございます。
○黒岩秩子君 その個別に判断するのはだれが判断するんですか。
○政府参考人(伊藤雅治君) 個別に判断いたしますのは、免許の申請者から申し出がありました場合に、厚生労働省の職員及び専門家でございます。
 先ほどから御答弁申し上げておりますように、例えば医師免許を例にとりますと、医師の業務についての専門家、それからその障害が例えば視覚障害であれば視覚障害についての専門家、そしてさらに、医師の場合を想定いたしますと、医師の教育養成に関する専門家、これらの専門家の客観的な判断と、それからその障害者の診断書を書いていただきました個別具体的なそれぞれのかかりつけ医といいますか、診断書を書いていただいたお医者さんの意見を聞いて、専門家が合議によって最終的な評価と判断を行うということを考えているわけでございます。
○黒岩秩子君 申しわけありません、ようやくいろんなことがつながってわかってまいりました。午前中から何か個々にばらばらにしか耳に入ってこなかったのが今になってわかりました。そういう形で今までよりは前進して、さまざまな雇用がふえていくだろうということは大変期待できると思います。
 そして、今まで皆さん、いろんな方がおっしゃっていましたように、パブリックコメントという形でいろんな意見を聞かれてきたということも伺っておりますけれども、これもどなたかおっしゃったように、あくまでもそれはインターネットが使える人たちの範囲でしかそれにかかわれなかったのではないかと思われるのですけれども、これからさまざまなことをやっていく上に当たって障害者の方たちの実際の声を反映できるようなシステムをよろしくお願いしたいと思います。
 私自身、私の家に目の見えない方が来られたときに、トイレに行くんですがと言われて、手をつないでトイレに行って、ここがスイッチですなんて申し上げましたら、私は電気と無関係な生活をしていますと言われて、一緒につき合っていないということはこんなにも想像力というのが欠けているものだと思わせられてきました。いかにふだんからつき合っていることが大事だなということを思わせられてきまして、なるべくいろんな障害を持っている人も保育所へ入ってきてもらおうということをやってきたわけなのです。
 先ほどからいろんな方たちが言っておられましたけれども、障害者と一くくりで言われても、知的障害と精神障害に対する特別な差別というのがあると思います。これはやはり、ばかな人が言っているとかあるいは頭が狂っている人が言っているというような形で、いわゆる人間が言っている言葉として理解してもらえないというところが大変ありまして、先ほど申し上げました水戸事件では、刑事裁判の方では全然うまくいかなかったものですから、今、民事裁判になっておりまして、この民事裁判では恐らく日本で初めて知的障害者の方たちが原告になってこの裁判を進めております。これも、被害者がたくさんいるのにやっと三人だけが原告になれているという、そんな事件なんですけれども、障害者の雇用の問題で言うなら、これから知的障害者それから精神障害者のところに特に光が当たるような形でやっていただきたいと思いまして、そこら辺のところに関して大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 今ずっと黒岩議員のお話をお聞きいたしておりましたが、大変重要な点を幾つか御指摘になっているというふうに思います。
 議員になられて一カ月ということをおっしゃいましたけれども、一番最初御指摘になりました、なぜ省令にするのかというような御指摘も、これもやはり法律であります以上、重要な点は法律に書かなければならない、省令あるいは政令ではなくて法律に書かなければならないという大変基本的な大事な点を御指摘になったわけでありまして、感銘しながら、心して私たちもかからなければならない問題だという自覚を持って聞かせていただいた次第でございます。
 障害者の中にもさまざまな方がおみえになる。その中で、この日本の中で障害者として手がけられてきた順番で申しますと、やはり身体障害者の方々が一番先でございました。続いて知的障害者の皆さん方の問題が取り上げられてまいりまして、かなり進んでまいりました。まだ完全ではございませんけれども、かなり進んでまいりました。一番後に残りましたのが精神障害者の皆さん方の問題でございます。
 それにはそれなりの理由も私はあるのだろうという気もいたします。それは、身体障害者やあるいは知的障害者の場合には症状が固定をするということがございまして、固定をいたしますから障害者としての扱いが非常にしやすいという側面もあったのではないかというふうに思いますが、精神障害の皆さんの場合には、よくなられたり、あるいはまた症状が進行したりといったようなことがございますので、固定しにくいというような側面もあると。そうしたことも非常におくれた原因の一つになっているのではないかという気がいたします。しかし、精神障害者の問題も、あわせてこれから同じ障害者としてすべての問題で取り上げていかなければならないことは間違いがございません。
 今、厚生労働省の中にも検討会を設けまして、そしてこの精神障害者の皆さん方の雇用の問題をあらゆる角度からどういうふうにして進めていくかということで検討をいたしておりますけれども、これから先、それらの御意見もいろいろ踏まえながら、一日も早くこの精神障害者の問題にも取り組んでいかなければならないと思っている次第でございます。
○黒岩秩子君 ありがとうございました。
 最後に、この欠格条項の見直しというのは欠格条項の撤廃ということで事が始まったと思うんですけれども、撤廃ということを目指して活動されてきた障害者の皆さんにとっては、省令に委任したということがとても残念なことで、何としても撤廃のところまで頑張ってほしいと言われておりますので、どうか今後、欠格条項の撤廃のところへ至るまで、大臣のおっしゃるのでいえばノーマライゼーションというのが完全になるところまで、私も含めてみんなで努力してまいりたいと思います。
 これで私の発言を終わらせていただきます。

○委員長(中島眞人君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本案の修正について亀谷君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。亀谷博昭君。
○亀谷博昭君 私は、ただいま議題となっております障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、二院クラブ・自由連合及びさきがけ環境会議を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
 以下、その趣旨について御説明を申し上げます。
 障害者の社会経済活動への参加を促進するという本法律による改正の趣旨をより確実なものとするためには、改正後の障害者に係る欠格事由のあり方に関し、今後の障害についての医療の進歩、障害を補う手段に係る科学技術の進歩などを踏まえつつ、検討を加え、必要な措置が講ぜられることが必要であります。そのような認識のもとに、本修正案を提出するものであります。
 その要旨は、「政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律における障害者に係る欠格事由の在り方について、当該欠格事由に関する規定の施行の状況を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」との検討条項を附則に加えるものであります。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますよう、お願いを申し上げます。
○委員長(中島眞人君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、亀谷君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(中島眞人君) 全会一致と認めます。よって、亀谷君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(中島眞人君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、柳田君から発言を求められておりますので、これを許します。柳田稔君。
○柳田稔君 私は、ただいま修正議決されました障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、二院クラブ・自由連合及びさきがけ環境会議の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一、障害者の社会参加と平等、人権の尊重という今次制度改正の根本理念の具現化に向け、政府は終期の迫った「障害者対策に関する新長期計画」及び「障害者プラン〜ノーマライゼーション七か年戦略」を完全達成するとともに、引き続き次期計画及び整備目標を策定し遅滞なき総合的な障害者施策の推進に最大限の努力を講ずること。

 二、我が国の本格的なIT社会への展開に際し、新たな技術革新が障害者の資格取得や就業における格差を生起することのないよう、デジタル・ディバイドの解消とユニバーサルデザインの普及・普遍化に努めること。

 三、各種資格試験等においては、これが障害者にとって欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないよう、点字受験や口述による試験の実施等、受験する障害者の障害に応じた格別の配慮を講ずること。

 四、大学・専門学校等の教育・養成機関が、受験と教育の両面において必ずしも障害者に開かれてはいない現状にかんがみ、これら教育・養成機関での障害者に配慮した受験制度及び就学環境の改善を進め、障害者の資格取得支援のための条件整備について所要の措置を講ずること。

 五、本法改正を実効あるものとする観点から、障害及び障害者の機能を補完する機器の開発、職場介助者等の職場における補助的手段の導入に対する事業主への助成など、関係行政機関が一体となって総合的な障害者の就業環境の整備に努めること。

 六、現在の厳しい雇用環境にかんがみ、障害者に対する差別・偏見を除去するための啓蒙・啓発を更に進め障害者雇用の促進を図るとともに、障害を理由とする解雇を無くすよう厳しく指導すること。さらに、とりわけ立ち遅れている精神障害者雇用の進展のため、障害者雇用促進法における雇用率の制度の在り方も含め、雇用支援策の充実について早急に検討を進めること。

 七、本法改正に伴う省令等の策定に当たっては、医療関係者はもとより障害者関係団体など幅広い分野からの意見聴取等を図り、相対的欠格事由の的確な運用に齟齬の生じないよう努めること。

 八、免許を与えないこととするときの不服申立てについては、専門家の意見を聴くことを含め、適切な措置を講ずること。

 九、障害者の自立を促進するため、所得保障及び雇用確保の在り方について速やかに検討を進めること。
 
  右決議する。
 
以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(中島眞人君) ただいま柳田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(中島眞人君) 全会一致と認めます。よって、柳田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。坂口厚生労働大臣。
○国務大臣(坂口力君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力をいたします。
○委員長(中島眞人君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中島眞人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十一分散会

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