参議院

第151回国会

内閣委員会

平成十三年六月七日(木曜日) 第15号

   午前十時開会
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   委員の異動
 六月六日
    辞任         補欠選任
     鹿熊 安正君     野間  赳君
     小山 峰男君     直嶋 正行君
     市田 忠義君     池田 幹幸君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         江本 孟紀君
    理 事
                宮崎 秀樹君
                森田 次夫君
                小宮山洋子君
                簗瀬  進君
    委 員
                上野 公成君
                仲道 俊哉君
                野間  赳君
                直嶋 正行君
                円 より子君
                大森 礼子君
                池田 幹幸君
                大沢 辰美君
                照屋 寛徳君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        舘野 忠男君
   参考人
       千葉大学文学部
       教授       鈴木 春男君
       美術家      鈴木 共子君
       財団法人全日本
       聾唖連盟副理事
       長        黒崎 信幸君
         (手話通訳 秋間 尋子君)
         (手話通訳 岡安 澄子君)
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  本日の会議に付した案件
○道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

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○委員長(江本孟紀君) ただいまから内閣委員会を 開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、鹿熊安正君、小山峰男君及び市田忠義君が委 員を辞任され、その補欠として野間赳君、直嶋正行君 及び池田幹幸君が選任されました。
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○委員長(江本孟紀君) 道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。
 参考人を御紹介いたします。千葉大学文学部教授鈴 木春男君、美術家鈴木共子君及び財団法人全日本聾唖 連盟副理事長黒崎信幸君、以上三名の方々でございま す。
 参考人の方々にごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 本法律案につきまして、皆様から忌憚のない御意見をいただき、審査の参考にいたしたいと存じますの で、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、参考人の皆様から、鈴木春男参考人、鈴木共子参考人、黒崎参考人の順に、お一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、参考人の御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず鈴木春男参考人からお願いいたします。鈴木春男参考人。

○参考人(鈴木春男君) 御紹介いただきました千葉大学の鈴木でございます。
 本日は、参議院内閣委員会に参考人としてお招きいただきまして、発言の機会を与えてくださったことに心から感謝しております。
 私は、交通社会学というものを専門にしておりまして、これは人、人間というものを中心に、人間科学の立場から交通安全の問題に取り組む、そういう学問でございます。
 例えば、最近の具体的な研究成果といたしまして、 高齢者の交通事故を削減するために、自分たちの町の行動範囲の地図をつくって、自分たちが冷やりとしたり、はっとしたりした場所にシールを張っていくと。
そこでの体験とか、あるいはここをこう直してほしい といった提言について話し合うヒヤリ地図づくりとい うのを私は提案させていただいておりまして、全国各 地で数多く実行していただいております。
 今回の道路交通法の改正につきまして、私はほとんどの項目について賛成いたしておりますが、以下、幾つかの項目につきまして賛成の理由及び私の見解を述べさせていただきます。
 まず第一に、運転免許証の更新を受ける者の負担の 軽減という大きな項目でございますが、その@といた しまして、有効期間を現行の三年から初心者や高齢者あるいは一定以上の違反経歴者を除きまして原則として五年とするという、こういうことに関する件でございます。
 私の考えといたしましては、実は更新制度の効果等の調査結果というのがございまして、それによりますと、免許証更新の前後で事故が五・八%減少している と、そういう数字が出ております。そうした意味で、更新制度というものは事故防止からいっても重要な機能を果たしているというふうに考えます。したがって、免許を取りたての初心者であるとか運転能力に問 題の生ずる高齢者であるとか違反経歴者、こうした 方々に対しては現行の三年を維持する必要があるというふうに思われます。
 ただし、規制緩和という観点だけではなく、減点評価という方式だけで安全を守ってもらうということは、それだけでは私は無理ではないかと。減点評価というのは、刑罰とか行政処分、例えばシートベルトをしていないと行政処分で減点一が加えられるというような、こういった形の減点評価という方式で安全を守ってもらうのではなくて、それももちろん大事なんですが、同時に加点評価による安全への動機づけということも重要だと考えておりますので、そうした意味からも、優良または違反の少ない運転者に対して五年にするということは、加点評価という観点からいっても 大変有効だと考えております。
 次に、更新期間を現行の一カ月から二カ月に延長するという件でございます。
 単に一カ月延ばすという意味ではなくて、現行の誕生日前一カ月というのはそのまま生かし、もう一カ月ふやす分を誕生日の後一カ月としている点に私は大変 共感いたします。自分の誕生日を誕生日当日に思い出したり、あるいは家族から指摘されるといった方も多くて、今回の改正はそうした人にも救いの手が差し伸べられているというふうに思います。誕生日には免許証を必ずチェックするという習慣もこれによって生まれるんじゃないかというふうに思い、更新忘れは大幅に減るのではないかというふうに予想されます。
 三番目に、優良運転者は住所地以外で更新の申請ができるようにするという件でございます。
 更新手続の簡素化、例えば写真なしでも申請ができるといった、こういう簡素化が伴えば、サラリーマンや旅行者、あるいは隣の県の免許センターの方が自分の家に近いといった方も時にはいらっしゃるわけで、そういった方々が大変便利になる、そういう方法でご ざいまして、また、先ほど申しました加点評価による動機づけという観点からいっても大変有効だろうというふうに考えます。
 次に、運転者対策の推進についてでございますけれども、二種免許の取得に関し、路上試験と応急救護等の講習を受けることとし、運転代行業の場合も二種免許を要することとすると、この件でございます。
 お手元にコピーを配付していただいておりますが、これは、あらかじめ本委員会に資料としてお配りしたものからコピーしたものでございます。審査資料四十 ページの別添3というのをちょっとごらんいただきたいんですが、この資料でも明らかなように、我が国で は実はプロドライバーの方が一般ドライバーよりも事故率が高いという状況にあります。ごらんいただけますように、事業用乗用ハイヤー、タクシーの方が自家用乗用よりも高い、あるいは事業用乗り合いバスの方が自家用の乗り合いバスよりも高いというような数字がそこに出ております。
 実は、欧米では、一般ドライバーとプロドライバーの間に大変大きな壁を設けておりまして、一般ドライバーの見本となるべきプロドライバーの資格取得、こういうものに関して大変厳しい関門を設けております。そのことが逆に、そうした関門を通過したという意味でプロドライバーに誇りを与え、安全運転への動機づけともなっていると思われます。その意味で、二種免許取得に路上試験あるいは応急救護等の講習を課すということは大変重要であり、また、きめ細かい指導が行われるためには指定教習所制度の対象とするこ とが必要であると考えます。
 また、お手元にある審査資料三十九ページ、別添2の資料をちょっとごらんいただきたいんですが、この 資料から見ましても、これは一億走行キロ当たりの死亡事故件数を運転代行業のドライバーと事業用普通乗用車のドライバーとを比較してある表でございますけれども、ごらんいただけますとおり、運転代行が事業用普通乗用に比べてはるかに高いという結果が出ておりまして、こういった点から見ましても、死亡事故件数の多い運転代行ドライバーに二種免許を要することとすることは大変重要であり、不可欠なことなのでは ないかというふうに考えております。
 次に、一定の障害がある場合を欠格事由としてきたことを改め、身体的能力及び知的能力についてはすべて試験で判断することとするという件でございます。
 障害の内容や運転能力には個人差がございます。基本的には、個々のケースで指導や評価が行われるべきだというふうに考えます。最初から欠格事由という形で拒否することは、本来、運転可能な人にもその機会を失わせることにもなります。また、仮に最終的には 免許が取れないという方が出た場合であっても、自分で運転教習を受けてみてあきらめるということの方が 御本人にとっては納得がいくのではないかというふうに思います。
 ただ、車というのは、よく言われますように走る凶器という側面も持っておりまして、安全上の観点も考慮される必要がある、そういった意見ももちろんございます。また、それは確かに正しい意見だと思います。それには、あくまで厳密かつ公正な運転技能評価、運転技能の試験ということがなされることが必要になります。
 更新時に高齢者講習の受講を要する者の範囲を現在の七十五歳以上から原則として七十歳以上に拡大するという件でございます。
 これは、別添4の資料をごらんいただきながらお聞きいただきたいと思うんですが、現段階では、高齢者講習の対象となっていない七十歳から七十四歳までの者が起こした自動車等による平成十一年の死亡事故件数は、今から十年前の平成二年の約二倍となっております。さらに、最近の死亡事故件数の増加率は、実は 七十五歳以上の者の増加率を上回っています。
 また、七十五歳以上の高齢者講習、その受講者のその後の事故率は、七十五歳以上のドライバー全体と比べて受講者の方が約二三%低いというふうに言われておりまして、そこに高齢者講習を行うことの効果が明確にあらわれているわけでございます。
 またさらに、高齢者講習を受講した者に対するアンケート調査というのもございますが、それを見させていただきますと、講習を受けてよかったと講習を評価する意見が全体の八七・九%と非常に高くなっているようです。そうしたことから、高齢者講習を七十歳以 上に拡大することはやはり私は重要なことであるというふうに考えます。
 次に、運転免許証の記載事項の一部を電磁的記録でもよいこととするという件に関してでございます。
 免許証の国際化あるいは偽造防止、こういった観点から見ましてもこのことは大変有効だと考えます。また、現在、運転免許証は身分証明書としても使われておりまして、今後、IDカード化というような方向がもし進むとするならば、その意味でもICカード化は 必要になるかもしれないと考えております。またさらに、交通警察業務の効率化、合理化といった観点からもそのことは大変有効であるように思われます。
 次に、大きな三番目といたしまして、悪質・危険運 転者対策等の強化でございます。
 悪質なドライバーに対する罰則が甘過ぎるという評価は確かに大きな世論となっております。道路を使用する者相互の信頼をもとに成り立っている私ども交通社会におきましては、ひき逃げ、飲酒運転、無免許運転、共同危険行為、そうしたものに対する罰則を強化することによって悪質なドライバーを私ども交通社会から一応排除することができますし、またそのことによって安全運転への動機づけ効果ということも期待できると思います。
 ただ、この場合も注意すべきことは、罰則の強化だけが安全への方策としてあるのではなく、安全教育や 道路環境の整備等、この問題は多方面から総合的に検討される必要があると思われます。
 四番目に、交通の安全と円滑を図るための施策につ いてでございます。
 その@といたしまして、肢体不自由である運転者が 自動車にマークを表示した場合に他の運転者は幅寄せ、割り込みをしてはならないこととするという件でございます。
 このことについては、私は当然そうあるべきだと考え、大いに賛成でございます。
 ただ、これから申し上げることは公道でのケースではないので今回の道路交通法改正とは別の問題かもしれませんが、特に車いすを使用するドライバーは、実は車の乗りおりをする場合にドアの横にかなりのスペースを必要とするということがよく言われます。そう したことから、駐車の際の幅寄せにつきましても今後 検討されるべきだというふうに考えます。
 Aといたしまして、交通情報提供に関する指針を定めることとするとともに、交通状況予測を行う交通情 報提供事業者に届け出制を導入するという件でござい ますが、このことについては、特に申し述べることは ありません、賛成でございます。
 以上でございます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(江本孟紀君) ありがとうございました。
 次に、鈴木共子参考人にお願いいたします。鈴木共子参考人。
○参考人(鈴木共子君) 神奈川県座間市から参りま した鈴木共子です。
 本日は、このような席にお招きいただき、発言の機会を与えてくださり、ありがとうございます。
 私は、最愛の一人息子を昨年四月、交通犯罪で亡くしました。息子は一年間の浪人生活を経て、あこがれの早稲田大学第一文学部に合格し、入学式を終えてすぐの事故でした。一番の親友とともに夢を語り合いながら歩道を歩いているところを後ろから、飲酒、無免 許、無車検、無保険、おまけにパトカーの追跡を逃れて百キロのスピードで走ってきた暴走車に激突され、二人とも殺されました。あろうことか、息子もその親友もともに母一人子一人の母子家庭です。息子命とただただ我が子の幸せを願い、我が子のために頑張ってきた私たち母親から一瞬にして最愛の我が子が奪われてしまったのです。
 加害者は、八年ほど前にも事故を起こし、免許を取り消しになっていました。それにもかかわらず、無免許で運転を続けていました。その後、二度ほど無免許運転で捕まるのですが、余りにも軽い罰金刑で加害者は罪の意識を感じることがなかったのでしょう。その二年後、同じように見つからなければいいやという軽い気持ちで運転し、息子たちの命を奪ったのです。
 三十歳になる加害者は明らかに未熟な人間と言わざるを得ませんが、それ以上に彼に罪を自覚させなかった処罰の甘さ、軽さがあったということは確かです。なぜ無免許で罰金刑を受けた者が車を運転していることが見逃されてしまうのでしょうか。また、無車検の 車、これは加害者が事故直前に友人から購入したものですが、その車もまた二年前から無車検状態でした。ということは、その友人も無車検車を二年間乗り回していたということです。走らせてはいけない車、運転してはいけないドライバーが放置され、その対策の甘さが今回の悲劇につながったのです。
 そして、私を一番憤らせたのは、故意に限りなく近く、殺人と何ら変わりがないのに業務上過失、すなわち過失で裁かれ、その最高刑が五年ということです。悪質なドライバーに対してなぜ過失なのでしょうか。こんな体験をするまでは法律は私たちを守ってくれるものと信じておりましたが、実際は普通の感覚で考えて納得できないことが多く、なぜ、どうしてということだらけだということがわかりました。
 素朴な質問から悪質交通犯罪の量刑の見直しを訴えて署名活動を展開したところ、総計で二十六万人もの署名が集まり、法務省に提出しました。この六月二日、三日に上野駅前で東名事故の井上夫妻や多くの遺族の方々、また運動に賛同してくださるボランティアの方々とともに街頭署名を行い、総計で三十万人を超える署名も集まっております。近々、森山法務大臣に提出する予定です。そんな私たちの訴えが形になり、今回の道交法の改正につながったのだろうと思っています。
 私は、余り法律に詳しくなく、専門用語が出てくると全くのお手上げなのですが、それでも、私なりに解釈をし、つたない意見ですが、述べさせていただきたいと思います。
 まず、道路交通法というのは、国民の命を交通事故から守るための法律であるという認識をしております。このたびの道交法改正案を拝見しますと、規制緩和、障害者の人権、罰則の強化等が基本になっているようです。
 規制緩和の一つに免許更新期間の延長問題があります。確かに、多忙な現代人にとって、更新延長や免除というのは時間が節約され、便利となることでしょう。でも、免許更新はドライバーの安全に対する自覚と運転適性の定期的チェックを兼ねた唯一の機会です。そうした機会を減らしてしまうということは、車を運転することの自覚を減少させ、適性を欠いたドライバーを野放し状態にしてしまうことにつながるのではないでしょうか。
 また、免許更新時の講習ですが、視力検査とビデオ講習で済ませていますが、もっと工夫を凝らし、車は使い方次第で凶器になり得るという認識を強く持たせるようにしてほしいと思っています。
 それと、死亡事故を起こしたドライバーには免許証を二度と与えてほしくありません。過失であれ何であれ、人の命を奪ったのだという事実の重みに目を向けてほしいのです。例え何人殺しても、交通事故であれば、現在の日本の法律は加害者が死刑、いや何十年も 刑務所に入っていることなど絶対にあり得ません。罰金かあるいは数年の懲役刑でいずれ社会復帰ができるのです。でも、被害者は二度と家族のもとに戻れず、残されたその家族もまた生き方を根本から変えられてしまうのです。命の重みと比べたら、たかだか免許の永久停止などというのは当たり前の罰則だと私は思い ます。
 それと同時に、てんかん等突然の意識障害で人命を死傷させた場合、それが障害ゆえの無実となるような情状酌量はしてほしくありません。
 何度も言わせていただきますが、車は使い方次第で 凶器になり得るものなのです。運転する人は、健常者であれ障害者であれ、責任を伴うものであるということを明確にしなければなりません。また、悪質運転 は、その法定刑が強化されることは当然のことです。それ以上に、軽微な事故、ありふれた事故にも厳罰化の意向を持って対処してほしいと思っています。なぜなら、ありふれた事故は悪質な交通犯罪につながる可能性が大きいのです。息子の事故の加害者を初め悪質ドライバーのほとんどが累犯者であるということが証明しているからです。
 交通事故・犯罪をなくすためには、法律や制度の見直し、あるいは分離信号等の環境の整備とさまざまなアプローチがあります。それらをハード部門としてとらえるとしたら、私は今、ソフト部門として、人の心に働きかける運動を他の遺族の方々とともにスタートさせています。
 お渡しさせていただきました資料にありますように、「理不尽に生命を奪われし者たちへのレクイエム 生命のメッセージ展」という展覧会を全国各地で開催する予定です。犯罪や交通事故あるいは医療ミス、いじめによる自殺等で理不尽に奪われた命をキーワードに、犠牲者たち一人一人の人型に故人の写真、生い立ち、事件の概要を記したメッセージボードを取りつけ、足元に遺品の靴を置くという設定です。記号化され、数字の中に埋没され、いつしか忘れ去られてしま う犠牲者たち一人一人に光を当て、世の人々に、犯罪 にしても交通事故にしても決して他人事ではないということと、命の重みをずしりと心に響く形で訴えていきたいと企画しました。
 混沌としたこの時代、生命軽視の風潮はますます人々の心をむしばみ、その結果、痛ましい事故や事件を招いていると言っても過言ではありません。特に交通犯罪・事故の場合、少しでも人の痛み、悲しみに思いをはせることができたならば、交通ルールを無視したり、飲酒運転をしたり、死亡事故を起こしても保険屋任せという自分勝手な行動の歯どめとなるのではないでしょうか。
 息子の死をむだにしたくないという母の一念がかき立てる行動ですが、母親としての視点で世の中の理不尽さに対して素朴な問いかけをし、命の重みを訴えていきたい。今、また決意を新たにしています。
 どうもありがとうございました。
○委員長(江本孟紀君) ありがとうございました。
 次に、黒崎参考人にお願いいたします。黒崎参考人。
○参考人(黒崎信幸君) 私は手話を言語としていますので、座ると手話に不便ですので、立ったまま話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○委員長(江本孟紀君) はい、いいです。どうぞ。
○参考人(黒崎信幸君) このような場所に私ども聴覚障害者の代表を呼んでいただいて、ありがとうございます。
 私たちは、去年四月に、全国の仲間でもって運動をしまして、耳の聞こえない人たちをいろいろ差別している欠格条項の撤廃を求めて、二百二十三万六千人ほどの署名を衆議院と参議院の議長さんにそれぞれ提出しました。また、別に、全国の千三十の議会から、障害者を差別する法律をなくすように意見書をそれぞれ関係の部署に提出しました。
 そういうふうな立場から、本日は、私、耳の聞こえない人たちの運転免許の欠格条項について意見を述べたいと思っています。
 私たち全日本聾唖連盟は、昭和二十二年に創立されまして、それからずっと五十年以上、耳の聞こえない 人たちの福祉の向上と社会参加を目指して頑張ってまいりました。特に最近は、先ほど申し上げたように、障害者の差別条項、差別的な欠格条項をなくすための取り組みを続けてきたわけです。その中でもって、今回、障害を理由とした欠格条項を廃止するという審議を皆さん方にやっていただけることをとてもうれしく思っています。
 ただ、私たちにとって気がかりなことは、皆さんにもお配りになっていると思うのですけれども、この審査資料の中でもって、十ページの一番下の方から十一ページの初めの方にかけては、「耳が聞こえない者、口がきけない者等に係る免許の欠格事由を廃止する」とありますけれども、次のページの適性試験の項目を見ますと、聴力検査に当たっては十メートル離れて九十デシベルの聴力が必要と書いてあります。このことは何か矛盾するのではないか。耳の聞こえない者、口 のきけない者は、その欠格条項を廃止するといいながらも、次に適性試験ではこれはだめだというのは、私たちとしてはとても残念なことに思っています。
 私たち耳の聞こえない者の運転免許の経過については、一九七三年、昭和四十八年ですけれども、警察庁交通局の通達がありまして、補聴器で十メートル離れて九十ホンの音が聞こえれば運転免許の試験が受けられるというふうに変わりました。そして、それから現 在まで二万八千人ほどの聴覚障害者が運転免許を獲得しています。そして、この免許を取った人たちの場合、日常的に生活の中で、通勤とかまたあるいは自分の業務の中で、運転免許のおかげで生活の中で役立っております。
 ただ、今回まで二十八年間にわたってずっと耳の聞こえない人たち二万八千人が免許をいただいて毎日運転してきた、これに対して警察の方でもっていろいろ調査研究も進めてきたと私ども思っていますけれども、その調査研究を進めてきたことが今回の改正の中でほとんど生かされていないようでとても残念に思っています。
 私たちとしては、もう一歩踏み込んでこの法律の改正を検討していただきたいという意味でもって、例えばこの資料の十二ページのところで、「運動能力」のところがありますね。「運動能力」の中でもって、体幹の障害があるが、その者の身体状態に応じた補助手段を講ずることができると書いてあります。私たち耳の聞こえない者に補聴器だけが補助手段なのかどうかと思うのです。
 実際、考えていただければわかることだと思うのですけれども、例えば足の悪い方がふだんの生活の中ではつえをついて歩く、または車いすに乗って行動する。しかし、車に乗ったときはつえはつかない、車いすも使わない。けれども、耳の聞こえない人たちに限っては補聴器の装着を求める。けれども、本当に音というのは耳だけで聞くものでしょうか。手で聞いてはだめですか。振動でもって、ここのところをブルブルブルとやってもらってはだめでしょうか。実際、私は 今、携帯を持っているのですけれども、着信を振動で知らせてくれます。また、中に書いてある文字でいろいろ連絡ができます。
 実際、昭和四十八年、一九七三年ごろ、補聴器を警察庁が求めたころは、まだ私たちが電話という機械を使えなかった。耳が聞こえないと電話は難しかったの ですけれども、その間に、二十七、八年の間にファクスが広がった、また携帯電話も広がった。そういうと きにずっと補聴器だけというのはいかがなものかと私は思うのです。もっと補助手段というのは幅広く考えていただきたいと思っています。
 それからまた、日本の場合、障害者をいろいろ制限した私たちにとっては差別的な法律がたくさんあるのですけれども、アメリカの場合は、障害者を差別することそのもの自体が禁止されています。また、ヨーロッパ諸国でも聞こえない人たちが運転免許を取るのは当たり前だと。また最近では、アジアの国々でも、韓国とかタイの方で聞こえない人たちに運転免許が認められるようになりました。
 前に伺った話ですと、外国の交通事情と日本の交通事情は違うから日本の場合は日本のルールでやるという話があったのですけれども、日本の道路交通事情がアメリカ、ヨーロッパと比べてそんなに劣っているのかどうか。そんなに劣っていないと私は思うのです。また、アジアの国々と比べても日本の交通事情というのはすぐれていると私は思っています。日本のルールというのは、私たち聞こえない者にとってはとても恥ずかしい。耳の聞こえない人が運転免許を認められないということは、国際的に見ても私たちは恥ずかしいと思っていますので、そういう面も検討していただければうれしいと思っています。
 それからまた、私たち耳の聞こえない者だけではなくて、聞こえる人たちの場合も、今の社会で車から全く切り離して生活ができるかどうかということを考えていただきたいと思うのです。また、私たち耳の聞こえない人たちの職業の中で、大工さんをやっている人もいる、印刷をやっている人もいる。けれども、この大工さんとか印刷をやっている人たちが、実際に道具箱を担いで現場を移動できるかどうか、また、これは一枚だけの紙ですので軽いのですけれども、これが千枚または一万枚印刷したものをどうやって届けるか考えていただければ、私たち耳の聞こえない者にとって も運転免許が必要だと、こう思っています。
 最後に、私たちは、運転免許を取った後、耳が聞こえない、だから危ないという声を聞こえる人たちからよく言われます。確かに、聞こえるという人たちを一〇〇%にした場合、聞こえないというのはハンディがあるのは間違いないと思いますので、私たちとしても、手話通訳をつけてたびたび講習会を開いて安全運転に努めるように聞こえない人たちに呼びかけており ます。
 先ほどお二人の方がおっしゃっているように、交通のルールを厳しくと言いますが、厳しくということはともかくとしても、私たちがその交通ルールをきちんと守っていた場合は本当に事故が起こるのかどうかということも考えてほしいと思います。私たちも、手話通訳をつけた学習活動の中でもって安全運転に努める努力はやっております。
 以上で私の話を終わりにしたいと思うのですけれども、耳が聞こえない、または体に障害があるということを理由にして、先ほど鈴木先生もおっしゃってくれたのですけれども、個人の能力まで否定するというふうなことのないように、皆さんで十分審議していい法律をつくっていただけるようにお願いして、私の話を終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(江本孟紀君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○森田次夫君 自由民主党の森田次夫と申します。
 参考人の皆様方には、本日は大変お忙しいところを 御出席いただき、まずもって厚く御礼を申し上げたい と存じます。
 それでは、時間も少のうございますので、早速質問の方をさせていただきたいと思います。
 道交法の改正につきましては、七千四百万人を超え るすべての運転免許の保有者を対象とするもので、その制度のあり方は交通安全の確保と国民の利便に大きな影響を与えるということになることは言うまでもないと思います。こうした認識につきましてはお三方も共通しておられるのじゃないのかなと、このように思うわけでございます。
 そこで、まず最初に鈴木春男参考人にお尋ねをしたい、このように思っておったわけでございますけれども、鈴木参考人につきましては、運転免許制度の懇談会のメンバーでもいらっしゃるものですから、本法案につきましては法制化からかかわっておられただろう、また、交通社会学の御専門家でもございますものですから熟知されておられると思いますので、そして、各項ともおおむね賛成だという今お話等もございました。こういったことを勘案いたしまして、後ほど お二方の御意見を聞いた後で、また今までいろいろと議論の中で出てこられたこと等もあろうかと思いますので、そういった考え方についてお話を承りたい、こんなふうに思っておりますので、大変勝手なことを申し上げて恐縮でございますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。
 そこで、最初に鈴木共子参考人にお伺いをいたしますが、その前に、一人息子さんを亡くされたということで、心から息子さんの御冥福をお祈り申し上げたいと思います。
 交通事故の御遺族などには、今回の見直し案について交通安全の観点から危惧する声があるわけでございます、今、参考人もおっしゃっておられましたけれども。そして、全国交通事故遺族の会からは、この法案については規制緩和の対象外とし、むしろ強化すべきとの要望が出ておるわけでございます。最愛の肉親を亡くされた者として、その気持ちというものは十分私としても理解ができるところでございます。鈴木参考人も一人息子さんを亡くされ、その刑罰が余りに軽いので愕然としたと、ちょっと新聞等を見せていただきましたら、そういったこともお述べになっておられるわけでございます。
 そこでお伺いするわけでございますけれども、今回 の見直しでは罰則規定を大幅に引き上げておるわけで ございますね。例えば、罰金等については二・五倍から六倍ぐらいまでに引き上げておるわけでございます。このことについて参考人はどのように見ておられるというか、評価しておられるか。まあまあかなと、こんなものでは全然不満だよと、こういうふうに思われるか、その辺についてお聞かせをいただきたいと思いますし、またそのほかに、ぜひ言っておきたい、こういうようなことがあれば、お聞かせを願いたいと思 います。
○参考人(鈴木共子君) 私の考えとしては、いろんなことはよくわからないんですけれども、ただ、一つの法律が決められてしまって、それを改正するには何十年と言ったらおかしいけれども、それがおかしいからといってまたすぐ新しい法律をつくるとかということは今までの例から見てもあり得ないものですから、その罰則の上げ幅についても、わずかではなくて、かなりの部分で上げてほしいというのが私の気持ちなんです。
 これで、おかしいからといって、一年、二年後にはじゃまた改めましょうという、そういう展開の仕方ができるのであれば今回の罰則の案は妥当だと思います。でも、今までの事例からいっても、法律って一度決めちゃうと次の改正まではかなり年月や時間がかかるというふうに私は思うので、その辺のところがちょっと疑問かなというふうに感じています。
○森田次夫君 将来のことを考えれば、まだちょっと 不満だと、こういうことで大体よろしゅうございます でしょうかね。
 そのほかに何かお述べになりたいことはございますでしょうか。
○参考人(鈴木共子君) ですから、先ほどもお話しさせていただいたんですけれども、ともかく人の命ということを非常に明快にしてほしいというか、人の命 の重みということを考えていただきたいというのが私の一番の願いと。
○森田次夫君 時間もないので進ませていただきたい と思います。
 次に、黒崎信幸参考人にお伺いいたしますけれども、このくらいのしゃべり方で別に問題はございませんでしょうか。
 今回の見直し案で特に問題としているのが障害者にかかわる欠格条項ではないかと思います。障害者の立場からすれば当然のことであろうかと思います。
 そこで、御承知のとおり、現行法では、一定の身体障害者には免許を与えない、受験もできないと定めているわけでございますけれども、改正案では、てんかん、精神分裂症以外は試験に合格すれば免許を与えるとしていますが、全日本聾唖連盟の要望書を見ますと、既に事実上死文化している条項を削除するだけだと、このように厳しく批判をされておられるわけでございます。
 そこで、先ほどもちょっとお述べになっておられましたけれども、道交法の施行規則の二十三条の改正を強く求めておられると、このように受け取ったわけでございます。いわゆる十メートルで九十デシベルということでございます。これは耳の聞こえない方でございまして、その他の障害者につきましてはかなり緩和をされているのではないか、このように私は見ておるわけでございます。そうした中でもって、試験に合格すれば免許は与えられるわけですから、相当緩和されたし、問題はそんなに今ないのではないのかなと。逆に、お気の毒なことを申し上げれば、十メートルで聞こえないというようなことになると、確かに生活の面等では不便だと思いますけれども、やはり交通安全というようなことを考えますとやむを得ないのかな、こんなふうにも思うわけでございます。
 私も障害者に対して不勉強でございますので、その辺は全然問題ないんだということも先ほどお述べになってはおられましたけれども、もう少し詳しくその辺 をお聞かせいただければと、このように思います。よろしくどうぞ。
○参考人(黒崎信幸君) 今のお尋ねですけれども、 道路交通法八十八条の欠格条項が門だったとした場合、今この門の扉が開かれました。私たち、門から入ることもできるようになったと喜んでいます。けれども、肝心の玄関から先へは入れないということになります。ですから、とても残念に思っています。
 ただ、先ほども申し上げましたように、耳が聞こえないということについての補助手段が、なぜ耳だけに頼らなければならないのかという問題。目で見ることもできる。例えば、今お話があったこと、私の耳には全然入ってきません。けれども、手話通訳という手段によって、おっしゃったことがすべて私に伝わっています。ですから、車を運転するときに、ほかの車のクラクションまたは緊急自動車のサイレンというのが、あれが聞こえないということを問題にされる人もおられるのだろうと思うのですけれども、その場合も、音をキャッチしてそれを振動に変える、または光に変えるなど、さまざまな方法がなぜ考えられないかというのが私どもの訴えです。ぜひ御理解いただければうれしいと思っています。
○森田次夫君 ありがとうございました。
 それでは、時間も余りございませんので、鈴木参考人にお伺いをいたします。
 先ほどお願い申し上げましたとおり、ただいま鈴木共子、黒崎両参考人の御意見をお聞きいたしまして参考人の方はどのように思われたか。また、こういった問題につきましては懇談会の場でも相当議論されたのではないのかな、こんなふうに思うわけでございますが、鈴木参考人のお考え等も含めましてお話をいただければというふうに思います。
○参考人(鈴木春男君) 今、鈴木共子さんともうお一方の参考人のお話を伺いまして、大変重要なことをおっしゃっていただいていると思います。
 飲酒運転、暴走行為運転などによりまして起こされる交通事故が大変後を絶たないわけでございまして、 御遺族、被害者の気持ちは察するに余りあります。そういう中で、刑事罰がどうあるべきかということを検討する、この重要性はもちろん理解できます。
 ただ、この点につきましては、交通事故を防止していく上でどのように対応するのか、どのように対応するのが最も適当かということを、私は刑事法の専門家ではございませんが、刑事法の専門家を含めて、有識者を交えて十分に検討することが必要ではないかというふうに考えております。刑事罰に関しましては、ほかの場合とバランスがとれているか、刑事体系全体の中で整合性があるかどうかということも大変重要じゃないかと思います。
 今回の改正につきましては、私は罰則の強化ということで大変結構だというふうに考えておりますし、懇談会でもそうした意見が主流を占めておりましたけれども、ただ、先ほど申しましたように、交通事故の防止を図るためには、刑事罰だけがそれを可能にするわけではなくて、行政処分の強化であるとか交通安全教育の推進等、各種の交通安全対策をバランスよく総合的に講じていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
 また、欠格条項の件に関してでございますけれども、私どもが運転をするというのは、周辺の状況をまず認知して、そしてその認知したところからその後どういう状況になるかということを予測して、そして自分がその予測の結果をもって決断する、そして具体的に車の操作に入る、こういう四つの側面があるわけでございます。
 私は、この四つの側面が本人に備わっているかどうかということを厳格に運転能力があるかどうかということでチェックしていただくという、そういうことが可能であれば、そしてそれが十分にチェックできるということであるならば免許を与える、しかし、そこに何がしかの問題があり、不安があるとするならば、やはり免許を与えることは差し控えるということが正しいのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
○森田次夫君 では、あと一分しかございませんので、鈴木共子参考人と黒崎参考人にお伺いをいたします。簡単で結構でございます。
 今回の道交法の改正、点数をつけたらば大体何点ぐらいか、それだけで結構でございます。
○参考人(鈴木共子君) 五十点ぐらいです。
○参考人(黒崎信幸君) 欠格条項の廃止を私たち聴覚障害者から見た場合、これはもう零点、全く何にも変わっていないということになります。頑張ってください。
○森田次夫君 どうもありがとうございました。
○円より子君 民主党の円より子です。
 本日は、鈴木春男さん、鈴木共子さん、黒崎信幸さん、お忙しい中をおいでいただきまして、本当にありがとうございました。また、大変いいお話を聞かせて いただきまして、私どもこれからいろいろ参考にさせていただき、また御意見を生かしていけるように努力していきたいと思っております。
 昨年の秋だったと思います。鈴木共子さんからお手紙をいただきました。そして、本当にひどい、飲酒、ひき逃げ、無免許といった悪質な危険な運転行為の結果、それも無車検で、先ほどもおっしゃっておりましたが、保険も入っていないというようなそういった車によって、親友の方と息子さんが大学に入ったばかりでこれからの将来の夢を語って夜道を歩いているところをその車によって命をなくされたという、そういうお手紙をいただきまして、この委員会の、今回の法律ではないんですけれども、犯罪被害者給付金のときに その鈴木さんのお手紙とお話を紹介させていただきまして、それでも業務上過失致死にしかならないということの不当さを私も訴えさせていただきまして、過失の中でも悪質なものは未必の故意という適用をすべきではないかというふうに申し上げました。
 民主党では、危険運転致死傷処罰法というものを出 させていただきました。ただ、残念ながらこれは衆議院で廃案になってしまいましたが、これからも刑法の方できちんとした対応をしていきたいと思っているところでございますが、きょうは道交法の参考人質疑ということで。
 実は、私は今まで一度も車を運転したことがございません。免許証も持っていないんです。といいますのは、私がちょうど運転免許を取りたいと思っていたころ、多分今の日本での車両台数の六分の一しかないようなまだ昔のことでございますけれども、うちの父親が、被害者になることはあっても加害者には絶対なるなと申しまして、いかに車が必要なものだといえ、本当に走る凶器だ、加害者になったときの大変さというものを考えれば、車に乗りたかったらバスだとかプロの運転手に任せろと、そう言われたものですから。
 ただ、東京にいますからそういうことが言えますけれども、今のような社会の中でそれは極端な意見だということはよくわかっておりますし、地方に行けば本当に車が必要な方たちがいらっしゃることも、また黒崎さんのお話にありますように、障害を持って一人で暮らしているような方々は車が必要だということもよくわかりますので、欠格条項を廃止して、そして、おっしゃったように、音が聞こえなくても振動を利用できるような、そういった形で、きちんと厳正なルールを守られるような障害を持つ方々が試験を受けてきちんと運転ができるようにすることは本当に大事なことだと私は思っております。
 そしてまた、鈴木春男さんのお話にありましたように、プロの運転手の方が今事故を多く起こしていることを考えますと、いかに安全教育、そういったものが必要か、それからまた罰則の強化も必要か、そういったことがあるんですが、きょうは道交法の関係ですからお話には余り出なかったかもしれませんけれども、お三方にお聞きしたいと思っておりますのは、交差点でも信号なしの交差点での事故が多いとか、それからしょっちゅう事故を起こす道というのは、やはり視界が悪かったり、いろいろ道路の整備のあり方というものに大変関係があると思うんですね。
 そこで、まず黒崎さんには、大変必要なものであり、運転をすることができるようになることは大事なんですが、本当に加害者になることだって障害を持つ方もあり得るわけです。そうした場合に、道路の整備とかそういったものがどうあるべきか、交差点がどうあるべきか。先ほどおっしゃった音を振動に変えるということもありますが、交差点、信号等、どういった形であるべきか。また、車自体の運転のあれも、どういう形であれば事故を起こしにくいものなのか。やはり、それは障害を持つ方々から言っていただかないと わからないと思うんですね。それをお聞きしたい。
 それから、子供がおなかにいる妊婦の方、それから子供を連れて歩いている方や高齢者の方、そういった人たちから見ると、運転の方だけではなくて、歩いている側から見ても本当に車が怖いこともある。でも、それは車が悪いわけではなくて、やはり道路の関係もあるかもしれない、交差点の関係もあるかもしれない、いろんな面で直すべき面が、もちろん先ほど罰則のことをおっしゃいましたから、それはもう十分私どもこれから配慮していきたいと思いますが、鈴木共子さんからは、そういう点で、何か被害者の側から車を凶器とさせないための方法がないのかどうか。
 また、鈴木春男さんは、先ほどもおっしゃっていましたように、交通社会学を専門になさっておりますから、そういった道路事情ですとか交差点のことを。
 私なんか、歩行者が通るとき、なぜあんなに信号が早く変わってしまうのかと。ちょっとでも足が悪かったり年をとっていたりすると、真ん中でもう点滅してしまって、怖くて横断歩道を渡れないなどということがしょっちゅうあります。それから、歩道橋が上にあって、なぜ車が下を通ってくれなくて、人間が階段を上らなきゃいけないかと思うことがたびたびございまして、もちろんこれは予算の問題とかあるんでしょう が、ぜひとも、歩く側、運転する側、障害を持つ側、それから被害者になった側、そういった側から走る凶器にさせないための方法というものをこれから私たちは考えていかなきゃいけない。
 そういう点からお三方からお話を伺えればと思っておりますので、黒崎さん、鈴木共子さん、そして鈴木春男先生という順番でお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○参考人(黒崎信幸君) 走る凶器という言葉があったのですけれども、私たち障害者にとっては、走る凶器ではなくて、一歩間違えると同じ仲間をふやすことになる。今の日本の場合、障害者に対して優しい町とは言えないと思うのですね。まだまだ生活する中ではさまざまな困難がたくさんあります。ですから、私たちの仲間をふやしたくはないという気持ちを私どもは 肝に銘じております。
 ただ、交差点についてという具体的な質問ですけれども、今まで私も、私自身も運転するのですけれども、交差点でもってはっとした経験があると言いますと、大体私も焦っていた。早く目的地に行きたいとかいうふうな場合、はっとするんですけれども、落ちつ いてルールをきちんと守っていた場合はほとんどどのような交差点でも大丈夫といいますか、安全に通行が できたと思うのです。
 ただ、ここでもって気をつけてほしいのは、交差点というところはほとんど赤、黄色、青の信号があります。けれども、これが目の見えない人たちのためには、音楽とかまたは小鳥のさえずりとかいうふうに音に変えて障害者も安全に渡れるように工夫されているということを考えると、今の質問に対して私、どう変えたらいいかという答えはできないですけれども、やっぱりルールを守るということが一番大切ではないか と思っています。
○参考人(鈴木共子君) 本当に、ルールを守るというのは、やはり基本的な、一番根本的なことだというふうに思っています。もちろん道路の幅が狭かったりとかという、そういう不備はもう至るところにあるんですけれども、そこに行ってみれば、無断駐車があったりとか自転車がとまっていたりとかして、制度上よく整備されていないところにもっともっと加速するような状況をつくっているというのが、やっぱりルールを守らない人の気持ちというか意識だというふうに私 は認識しています。
 ですから、罰則だけでこういった交通事故を防ぐことには絶対にならないんですけれども、やはり基本的に、どうしても人間って非常に愚かな動物だというふうに私はすごく思うんです。
 と申しますのは、やはり車に乗ると何かすごく気持ちが強くなって、もうそこのけそこのけ車が通るという感じでもってすごく威張った状況に、私は本当に恥ずかしいんですけれども、やはり息子がこういう事故に遭う前まではそういう意識、やっぱり車に乗ると少し気分が高揚してしまって、非常に高みのところから歩いている人たちを見ていたというふうに今とても反省して思います。
 それだけ人間って愚かなんじゃないか、だからやっぱり罰則というのは一つの大きな歯どめになるというふうに、それだけではないけれども、強いものだというふうに思っています。
○参考人(鈴木春男君) 御指摘のとおり、危険な交差点というのは大変数多くあると思います。私ども研究者もそのことについてはいろいろ検討し、改善案を出していかなくちゃいけないというふうに考えておりますが、私は基本的には、そのことに対して一番発言すべきはそこを利用する方たちではないかというふうに思っております。
 私は、参加による動機づけということを基本に考えておりますけれども、やはり主体的にそこを利用する方々が参加的にいろいろ提言をしたりするという場をつくって、それが実は改善に結びついていくという方向性が、一番方向性としては安全を守ろうという気持ちになってもらうために重要じゃないかというふうに 考えております。
 先ほど陳述のときに申し上げましたヒヤリ地図というのも、冷やりとした体験を地図の上にみんなであらわしていって、それを材料に、例えば交差点の改善だとかそういうことを考えていこうという、そういう趣旨でございまして、きょう御審議いただいている法律 なんかを改正したりする場合も、やはり民間の知恵というのが結構あるわけで、そういう知恵をどう吸い上げるか、そしてそこへどう反映するかということが非常に重要なんじゃないかなというふうに考えております。
○円より子君 お三方、どうもありがとうございまし た。
 ルールというものを守ることは本当に大事なんですが、それでもこれだけの、今まで原爆で亡くなった方の数よりも多い交通事故死の方たちがいらっしゃるわけです。
 そこで、例えば東京都では、荷物をおろすための車 が駐車するために緑のところをちょっと減らしてでも 中に入れて渋滞を防ぐとか、それは多分渋滞を防ぐためだけではなくて、人命尊重のためのそういった形にもなっていくんじゃないかと思いまして、今、鈴木春男先生がおっしゃったように、いろいろ民間の知恵を利用しながら、車を走る凶器にさせないための方策を本当に講じていかなきゃいけないと思いますので、黒崎さんからも、また鈴木共子さんからも、被害者の立場、障害を持つ人の立場からどう改善していけばうまくいくかといういろんなお知恵をこれからいただいて いきたいと思うんです。
 もう一つ、交通事故の死亡者を、鈴木共子さんの息子さんのような、その場で二十メートルもはね飛ばされて即死なさったりということはもう本当にあれなんですが、少しでも減らすために、例えばドクターヘリをもっと活用すればいいんじゃないかということがよく言われます。諸外国では、それによって、もちろんそれは物すごく予算がかかることですが、一人一人の 命の重さから考えれば、すぐにドクターヘリが来てくれて、そこで治療ができれば随分死者が減るというち ゃんと統計が出ているわけです。
 そういったことについて鈴木春男先生はどう思われ るか、御意見を伺いたいと思います。
○参考人(鈴木春男君) 全く私も賛成でございます。そのことは大変重要だと考えております。
 具体的にそういうことが少しずつ我が国でも行われ始めておりますが、そのことによる効果というのは大変大きく期待されますし、一層そのことが進むように 私も念願しております。
○円より子君 今ドクターヘリについても賛成で、交通事故のルールを守ることは大事だけれども、そして少しでも事故を減らすことは大事ですが、事故が起きた場合の死者を減らしていく、そういった策を私ども立法府の人間がきちんとやっていかなきゃいけないことだと思います。
 黒崎さん、何か、先ほどおっしゃった音を振動に変えるとか以外に、車なり道路なりにこういったものをしてほしいということがありましたらどんどんこれから御意見を言っていただきたいんですが、今も、ほかにもございましたら最後にいかがでございましょう か。
○参考人(黒崎信幸君) 私たちの運転というのは、耳に頼らないで目でもって運転します。ですから、見通しというのがとても重要になるのです。
 そのために、この見通しをよくするといいますか、 例えば私が今走っている段階で、この先に何があるか、交差点があるとか次のところでどういうふうに曲がるとかいうふうな予知といいますか、前もって知るというふうなことがもっともっと整備されれば、私たちの運転もとても楽になると思うのです。特に、私たちが運転する車の前に大きなトラックとかバスがあって、その後ろを走っているときはほとんど目をふさがれたも同じですので、私としては離れて走るのですけ れども、それでも全く何もない状態から比べると見通しが悪いので、前もっていろいろな案内板や何かをふやしていただければと思います。ただし、余りふやし過ぎるとどれを見たらいいのかわからなくなるので、その適切な配置もお願いしたいと思います。
○円より子君 どうもありがとうございました。
 終わります。
○大森礼子君 公明党の大森礼子です。どうぞよろし くお願いいたします。
 最初に、鈴木共子参考人にお尋ねするのですけれども、実は、今回参考人になられるということで、これは神奈川新聞ですか、二〇〇〇年四月二十五日付の 「息子の死無駄にはしない」というタイトルの新聞ですが、読ませていただきました。
 実は、私も検事をやっていたことがありまして、業務上過失致死罪、捜査の方も、それから公判の方も多くやりました。そのときに、過失の領域に入るわけですけれども、やはり遺族の方にとっては殺人であろうが交通事故であろうが同じ死であるということで、私自身も本当に、検事ですからやっぱり刑法理論に従って適用するわけですが、なぜこう扱いが違うのかということも実は思っていたわけなんです。
 それで、交通事故の場合ですと、これはどこでも起こり得ることなんだから、よく交通事故にでも遭ったと思ってという表現がありますけれども、加害者の側がやはりそういう意識が少ないということを私は感じております。
 例えば、四十年ぐらい前と思いますが、子供のころに、私の小さな町で電気屋さんをしていた方が死亡事故を起こしました。そのころは保険もきちっとありませんでしたので、人を殺した、死なせたという罪の意識がありまして、結局それが加害者の一家にのしかかって、そのお店も畳んでしまってという、こういうような責任というのがあったんですね。
 これは、やっぱり保険制度ということで、だんだん お金で解決するようになって、それから遺族側の方と加害者側との接触も保険の関係で余り接触できないようになっておりますと、非常に変な関係になってきたと思うんです。
 それで、この新聞の中で私の目にとまってしまったのは、こういう記事があります。鈴木さんの言葉として、男性、加害者ですね、取り調べのときには息子の無残な姿を撮った写真を男性の目の前に置いてほしいと警察の方に言ったと。これは事実でございますね、今うなずいておられますから。
 このときの心境といいますか、嫌なことを思い出させてしまうんですけれども、どういう思いだったのか。なかなかこういう言葉というのは実は出てこない ものだと思うんですね。そのとき、どういう思いでおっしゃったか、少しお聞かせいただければと思います。
○参考人(鈴木共子君) その当時のことというのは、今も自分の中でフィードバックすると何かとてもつらいんですけれども、確かに最初に警察の方から説明があったときに、犯人というか加害者はどんな男なのかと聞きましたときに、やはり私に詳しく教えていただけなかったんです。と申しますのは、いわゆる加害者の人権という観点からだったと思うんですけれども。うちの息子の場合は、結局、橋の上の事故だったものですから、後ろからぶつけられて十九メートル下に落下したんです。ですから、もう一人の子は、確かに犯人はそこで彼の遺体を見ている、でもうちの子の場合は彼は見ていないんですよ、すぐにそこで警察の方に連行されましたから。
 また一つ、ちょっとそのときにとても憤ったことがあるんですけれども、加害者に警察が事情聴取をするのに、そういう刺激的なことをしてしまうといわゆる真理というか事実がわからなくなってしまうと、そこでも否定された。
 そういうこともありましたので、何かその辺の流れが今ちょっとよく思い出せないというか、あれなんですけれども、ともかく二人の人間を無残な形で殺したんだということをその加害者にはっきりと認識させたかったというふうなことでそういう言葉が出てきたと思うんです。でも、そのお願いは認められませんでした。
○大森礼子君 それは多分認められないと思う。
 実は私も、仕事ではなくて雑談の中で、その行為によってこんな人がこのような死に方をしているということでやっぱり写真を見せた方がいいんじゃないかと思ったこともあるものですから、お気持ちはすごくわかります。要するに、自分のやったことを、もう亡くなったということは取り返しがつかないけれども、正しく認識してもらいたいという多分お気持ちと思うんですね。
 それで、例えば刑罰、今回重くなりましたけれども、多分これはやっぱり十分ではないと思うんですね。ですから、みんなが運転しますので、こういう悪質な場合を類型化して特別に重く処罰するという、こういうことが必要なんだろうと私自身も思っております。どうもありがとうございました。
 そこで、次に、時間の関係で鈴木春男参考人に伺うのですが、例えば、高齢者の問題、それから障害者といいますか、黒崎さんとか、非常に難しいんですね、この構図というのは。高齢者の方も、やっぱり都会地でない場合では足になってしまう、バスなんかありませんので。生活することに必要です。それから、聾唖者の方も確かにそうだと、バリアフリーにつながりますので。一方で、安全という事故防止等がありまして、それで簡単に、許された危険なんだとかと言って済まないことは今、鈴木共子参考人の言葉からしても そのとおりだと思うんですね。この調和点をどういうふうにしていくか、非常に漠然とした大きな問題になるんですが、先生はいかがお考えでしょうか。
○参考人(鈴木春男君) 本当に大変難しい問題で、私も即座にどうしたらいいかという回答を今、正直言って申し上げられません。
 ただ、必要なことは、もちろん今、障害者の方にとってもまた高齢者にとっても車というのは社会参加の大変重要な手段だと思いますから、それが十分安全に運転できるという能力をお持ちであれば当然それは与えるべきだ。しかし一方で、やはりどうしても無理をなさるというケースが、例えば高齢者なんかでも、都会の高齢者はほかに公共的な交通があるものですから 比較的運転免許を返上される方が多いんですけれども、地方へ行きますと実は免許を返上する高齢者はほとんどいらっしゃらなくて、皆さん多分無理をして運転をされている。そういった社会的基盤といいますか、そういうものがやっぱり大変事故とかいうようなことにも結びついていると思いますので、一方でそういうものをどう整備していくかということが重要じゃないかというふうに考えております。明確なお答えにならなくてまことに申しわけないんですが。
○大森礼子君 非常に難しい問題。ただ、能力という問題と、それからやっぱり資質といいますか、例えば鈴木共子さんのここのケースなんかは、もうこれ以上悪い態様はない、酒気帯びで無免許でということですね。だから、こういう人をどのように厳しく抑制、なくしていくかということが大事なんですね。
 一つには刑罰の強化もあるんでしょう。それから、交通事故というと大抵執行猶予がつくんですが、どんどん実刑にもしていくという方法もあると思います。それと同時に、そういういいかげんな資質を持っておる人間に対してやっぱり抑制力を持たせるためには、こういう悪質な者については、免許停止とか免許取り消しとかありますね、実はこれがいいかげんな若者にとりましては一番困るわけなんです。ある意味では刑罰以上の抑止力になるかもしれません。
 そこで、例えば悪質な場合には、鈴木さんのケースの場合にはもう半永久的に免許を与えないとか、こういうことまでいかないとドライバーへの悪質運転の抑止力にはならないのではないかと私は思うんですが、先生はいかがお考えでしょうか。
○参考人(鈴木春男君) 私もある意味では議員の意見に賛成でございます。
 やはり、刑罰というのは先ほどの減点評価だとある意味では思うんですが、同時にそのことは、先ほどもちょっと申しましたように、今の交通社会というのはお互いの信頼の上に成り立っているわけで、そこに信頼を損なうようなドライバーがいたとしたら、それは排除していただかないと困るというふうには確かに思います。
 ですから、その意味で、めり張りをつけて、本当に悪質なドライバーはある意味では排除するという、これは終身にわたるということがよろしいかどうかはわかりませんが、排除するという方向性は重要だろうというふうに考えております。
○大森礼子君 本当にお互いの信頼で成り立っているわけですから、場合によってはそういう厳しい政策も 必要ではないかなと私自身思っております。それによって初めて、先ほどの高齢者、障害者の調和がとれるのかなという気もいたします。
 最後に、黒崎参考人にお尋ねいたします。
 お話を伺っていまして、とても難しい問題だなと思ったんです。それで、例えば耳の聞こえない方、ある意味で、自分が注意していても、やっぱり交通事故というのは周囲との関係で起こるものですから、本人だけが安全運転をしていたから大丈夫か、そうでもないと思うんです。
 そこで、結局、一つ具体的に考えることができるこ ととするならば、今、十メートルの距離で九十デシベルの警音器の音が聞こえるものと。例えばこのデシベ ル数をもっと上げるといいますか、広くするとか、これは一つの具体的な考え方としてあるだろうと思うん です。ただ、耳の能力、聴力というものが交通の安全にですけれども、例えば警笛が聞こえるかは周囲の状況を判断することで必要なんだと思うんです。ですから、ここのデシベル数を例えばもう少し上げて結果的に免許を取られる方を広げることができるかどうかという、これは一つ考えてみるべき必要があると思うん です。
 それから、あともう一つ、補助手段というのが当初 聞いたときよくわからなかったんですが、質問に答えられたときに、周囲の音をキャッチする、振動でそれを伝えられるような、これは装置ということですね。またそれも、どちらの方向から来た音かとか、ここまでしないといけない、こういう装置もやっぱり必要になるだろうと思うんです。ですから、こういう開発をすることでバリアフリーが広がるということは非常に傾聴に値することかなと思うんです。
 ですから、私としては、今すぐすべての方に、補聴器がなくても耳の方すべてにということはいささかのちゅうちょをいたしますが、ただ、非常に重要な問題提起をしていただいたと思いますので、何とかしなくてはいけないというふうには思っております。
 先ほどのデシベル数とか、そこら辺でもう少し検討するとか、こういうことについては黒崎さん、いかがお考えでしょうか。まずそこら辺から、してほしい検討ということがあれば当然するべきことだと私は思っ ておりますが。
○参考人(黒崎信幸君) 逆に私は考えます。
 私たち、聞こえないというのが当たり前の生活を毎日やっております。ですから、聞こえないために、さまざまな音をキャッチする工夫が進歩しているといいますか、進んでいるように私は思うのです。けれども、聞こえる人たちの場合、どうしても耳に頼る。なぜ耳でなければだめなのかというのが私たちの疑問。ただデシベルを上げるとか下げるとかという問題ではなくて、これは完全に廃止してほしいというのが私の願いです。
 といいますのは、私自身も先ほど申し上げましたように免許を持っています。けれども、全く聞こえません。ですので、私が免許を取ってからかれこれ三十年以上になると思いますけれども、先ほどおっしゃったように、もらい事故といいますか、交差点で信号待ちでとまっているところに、曲がって交差点に入ってきた車が自転車をはねてそのまま私の車にぶつかったというふうな事故はあります。これは避けようがないといいますか、そういう事故があったのですけれども、耳が聞こえない、だから事故が起こったとは私は思っていないのです。
 ですから、聞こえない人たちがどういうふうに耳ではなくて音をキャッチする工夫をやっているかということを理解いただいて、ぜひ、このデシベルや何か、十メートル離れているとかどうかではなくて廃止していただければと思っています。
○大森礼子君 非常にきょうはお話ができてよかったと思います。本当にバリアフリー、しかしやっぱり車を運転する場合には危険ということも十分考えなくちゃいけませんので、十分考えさせていただきます。
 もう時間がありませんので、これは質問ではありませんが、鈴木春男参考人がおっしゃったヒヤリ地図づくりですけれども、これは私、本当に大事なことだと思うんです。
 実は、警察庁の方と話したときに、危険な箇所、曲がり角でもどこでも、これを一番よく御存じなのはその町の方なんですよね。ですから、そういう情報、今インターネット社会ですから、こういう町のヒヤリ地図情報みたいなものを寄せて、それでお互い気をつける。と同時に、そこでまた事故が起こるようなら、それは国の方もそこを直さなきゃいけないというやり方が必要だと思います。ただ、これをやりますと、国がちゃんと直さなかったら責任が生ずるということになりますので難しい問題だと思うんですけれども、やはりこういう形でお互い危険な場所を知らせ合って、国もまたこれについて対策を講じていくという、このヒヤリ地図づくりというのはとてもいい方法だと思いま す。これを最後に感想として述べさせていただきま す。
 以上です。
○大沢辰美君 参考人の皆さん、御苦労さまでござい ます。
 今の道路交通法の審議をしている中で皆さんの指摘 された問題点がとてもよくわかったわけですが、ちょ っと数点、質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、黒崎参考人にお尋ねをいたします。
 この欠格条項の存在によって、本当に今日まで障害 者の皆さんがいろんな点で不利な立場にあった、免許 を取りたいけれども取れなかったという、そういう状 況が長年にわたってあった。やっと今回、条文上はな くなったけれども、あと施行規則の点でという指摘が あったわけです。
 私は、今日までやはり連盟に所属されているそうい う方たちの人権そのものが侵されているという点も指 摘があろうかと思いますけれども、そういう方たちの 経験というんですか、まずそういう点での指摘があり ましたらお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(黒崎信幸君) 交通法規だけではなくて、 さまざまな法律の中で欠格条項という言葉が使われて います。けれども、私たち、耳が聞こえないというだ けでなぜ欠格なのか。それは、障害を一つ持ってい る。障害だけは私たちも理解できるのです。けれど も、人格まで欠格といいますか、人間的な欠格がある ような社会的なとらえられ方、これが一番悔しいで す。そうではないと思うのです。耳は聞こえないけれ ども、個人個人、能力を持っています。けれども、聞 こえる人たち、また障害のない人たちから見ると、障 害が重く見られて一人一人の人格が見えないというこ とを一番残念に思っています。
 ですから、今回、運転免許などの場合も、最初に鈴 木先生がおっしゃったように、個人の能力ということ をどう見るのか。聞こえないということは、これは事 実。けれども、聞こえない上でさらに頑張って聞こえ る人たちに負けないような生活をしている仲間もたく さんいます。ですから、私たちが、欠格条項という言 葉一つをとらえて、まず法律で制限される、社会的な 参加が認められないということはとても残念なことだ と思うのです。
 この欠格条項、また社会的な参加が認められないと いうことは、社会全体の一般の人たちから見ると、そ の程度の人としか見ない。ですから、私たち個人個人 が努力して頑張ってもなかなか認めてもらえないとい のが今までの社会でした。ですから、個人個人の人 格が尊重される、また人権が守られる社会をつくるた めに欠格条項をきちんと整理してほしいと思うので す。
○大沢辰美君 やっと欠格条項が外されたけれども問 題が非常に起こっているという指摘は同感でございま す。
 先進国である日本がやっとこういうところに到達し たわけですけれども、まだこれでは解決しないと。先 ほど述べられた中に、外国の例を少し述べられました けれども、本当に国際的な欠格条項の廃止は流れにな っていると思うんですね。そういう点で、アジアの問 題、それから欧州の問題、アメリカの例を挙げられま したが、具体的に私は、最近特にやられましたアジア の内容など、もし詳しくわかっていらっしゃいました ら教えていただけませんか。
○参考人(黒崎信幸君) 韓国の場合は、二年前に聞 こえない人たちに運転免許が認められたと記憶してい ます。
 また、タイの場合は昨年認められるようになりまし た。ただ、タイの場合は、聞こえないという耳のマー クを車につけるということが義務づけられています。 それからまた、タイでは、安全運転のために、手話に よるビデオテープが聞こえない人たちに配付といいま すか、提供されています。
○大沢辰美君 今、世界的な流れの中で日本が恥ずか しい状態になっているということも指摘をされたと思 うんですけれども、私もそう思います。
 それで、今回の改正によって条項が取られたわけで すけれども、十メートルで九十デシベルの問題が残っ ていれば一緒だという指摘をされました。この点につ いては今日までの経過があるんだと思いますけれど も、そこを改正しなければ今、聴覚障害を持っていら っしゃる方が希望している免許を取ることができない と。門を入ることができたけれども玄関に入れないと いう表現をされておりましたけれども、今後免許取得 に対する支援のあり方、光だとか振動だとか、いろん な対策をこれから研究していかなければならない点が ありますけれども、ほかに本当に免許取得に対する支 援をどうしていかなければならないかという点でお考 えがありましたら教えてくださいますか。
○参考人(黒崎信幸君) 十メートル離れて九十デシ ベルが聞こえる、聞こえないということではなくて、 すべての人たちに、能力に応じてきちんと免許を与え てほしいということを強くお願いしたいと思っていま す。
○大沢辰美君 よくわかりました。
 それでは、次に鈴木共子さんに一点お聞きしたいと 思うんですが、新聞記事を読ませていただきまして、 大変なこの間、御苦労をされたことに、そして、きょ うこういう形で参加をしていただいたことに感謝を申 し上げます。
 私は、遺族の方にとって、自助グループですか、い ろんなカウンセラーをしてくださる、その果たす役割 は非常に大きいということを記事でお書きになってい らっしゃいましたが、これは本当に重要なことだと思 うんです。
 その点について行政がなかなかそういう役割を果た していないという点があるんですが、そういう支援要 請がありましたら、どうぞ教えていただけますか。
○参考人(鈴木共子君) 私は現実に、個人的にすぐ に東京都の都民センターの犯罪被害支援センターの方 がすぐそばについていてくださったものですから、も う本当にラッキーなケースとして、私がおかしいなと 思うことに関して説明がありましたし、それから、検 事さんにも警察にもこういう書類を出した方がいいと かという、すべてアドバイスがあったんです。ですか ら、法律のことに関して、おかしいことに関しては、 どういう働きかけをしたらいいのかというのも相談し ながらできたので、心のケアとしては、今申し上げま したように、カウンセリングを受けられましたから、 非常に早い時期に、決して一〇〇%の立ち直りではな いんですけれども、自分がどういう方向で生きていっ たらいいのかというアドバイスは受けられました。
 今、孤立無援の方がほとんどなんですよ。たまたま マスコミに登場したことでもっていろんな遺族の方か らお電話をいただいたんですけれども、今までもう何 をしていいかわからない、どこに訴えていいかわから ない、たまたま私の電話番号が出たので必死になって お電話をかけてくださった方が大勢おりました。です から、こういった支援のそういうシステムの強化とい うか充実というのは、いわゆる交通事故をなくすとか そういうことと並行して非常に大事なことだというふ うに考えています。
○大沢辰美君 鈴木さんが息子さんを亡くされた場所 は橋の上であったとお聞きしたわけですけれども、今 の交通事故の発生率というんですか、本当にひどい状 態の中で、交差点付近、それが圧倒的に多いという数 字が出ているわけなんです。そういう中で今、交通事 故をなくすることが亡くなる方をなくすることになる わけですけれども、そういう点で、先ほど分離信号な どをやはりハード面で促進していただきたいという点 も述べられました。
 そういう道路整備面で、今もちょっと質問がありま したけれども、具体的にこの間、事故の後、いろんな 方との交わりの中で、こういう点はやっぱりやっても らわないとさらに事故が発生するという点でお気づき の点がありましたら教えていただけますか。
○参考人(鈴木共子君) さまざまな角度から遺族と なった方々が、少しでも交通事故をなくそう、自分た ちと同じ被害に遭う人を少なくしようということでも って活躍されているというか、活動されています。
 分離信号というのも、一つの遺族の方が起こした運 動で、今本当に全国的に広がっているというふうに聞 いています。ただ、私自身としては分離信号というこ とに詳しいわけではありません。本当に遺族の方が自 分の立場で、私の場合は橋の上でしたから、分離信号 の運動を起こされた方は交差点でお子さんを亡くされ た方が、ですから、自分の体験したところから交通事 故を少なくするための運動を展開しているというふう に聞いています。
○大沢辰美君 ありがとうございました。
 最後に、鈴木春男参考人にお尋ねしたいんですけれ ども、この法案については賛成という立場で報告を受 けました。特に、欠格条項の問題で、もちろんこの点 についても賛成をされたわけですけれども、個別の判 断という点で今回の改正で問題点が今聴覚障害の方か らも指摘をされましたけれども、そういう点で、総合 的に考えまして、この欠格条項を外す今日の到達の上 に立って、これからどうあるべきかという点を含めま して、御意見がございましたらお伺いしたいと思いま す。
○参考人(鈴木春男君) 先ほどもちょっと申し上げ たことと関連するんですけれども、私は欠格条項とい う形で外したことは大変重要なことだろう、それ自体 が大変意味のあることだろうというふうに思います。
 ただ、先ほど申しましたように、運転というのは、 認知し、そして予測をし、そして決断をし、そして操 作をする、この四段階があるわけでございますから、 この四つの段階が十分できるかどうかということをど うチェックするかという問題が非常に大きな問題とし てあるんだろうと思います。その評価のためのシステ ム、あるいは評価のための基準、こういうものがどう いう形でできていくかということが非常に重要な問題 であろうというふうに考えております。
○大沢辰美君 ありがとうございました。
○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。
 きょうは、参考人の皆様方には、貴重なお話を聞か せていただきまして、心から感謝を申し上げたいとい うふうに思っております。
 私は、鉄軌道の全くない沖縄県に住んでおります。 沖縄は鉄軌道がないだけに、いわゆる車社会という か、日常的に交通手段として車に頼らざるを得ないと いう状況にございます。一方で、私、三十年ぐらい弁 護士をやっておりまして、交通事故に絡む犯罪、いわ ゆる業務上過失致死傷の被告人の事件を担当したこと もございますし、逆に被害者の民事事件を担当したこ ともあります。そういう私の経験を踏まえて何点かお 聞かせいただきたいのであります。
 最初に、鈴木春男参考人にお伺いをいたしますが、 私は、この車社会にどう向き合っていくかということ を根本的なところで考えないと、道交法の刑罰の引き 上げだとか、そういうことも大事でしょうけれども、 なかなか言われている交通戦争という言葉があるぐら いの今の状況を解決していくのは難しいのではないか なというふうに思っているわけです。
 車は確かに便利です。同時に、人間の何千倍もエネ ルギーを持っているわけですから、悪質な運転をした やつは免許を取り消せ、あるいはもう生涯、免許を取 れないようにしろといっても、一たん車の便利さとい うのをわかった人にとっては、無免許でも運転するわ けですよね、間違いなく。そうすると、鈴木参考人の 御専門である交通社会学というトータルな面で、今、 車社会と言われる日本で、国民一人一人が免許を持て ば加害者にもなり得る、同時に免許を持たなくても今 度は被害者にもなり得るという二つの立場を常に私た ちは持っているだろうと思うんですね。
 私たち一人一人の人間の生き方として、この車社会 にどう向き合っていったらいいものか、そこら辺を先 生の御専門の立場でお聞かせいただきたいと思いま す。
○参考人(鈴木春男君) 一つは、やはりこれからの 車社会の中で、私的な交通の便利さを味わった者がな かなか公的交通に全部行くということはまずあり得な いだろうと思います。したがって、公的交通と私的交 通のバランスをどう保つか、そのことに対して当の運 転をされる個人がどう考えるか。これは、環境の問題 もありますし、いろんな問題がありますが、そういう ことも含めて考えなくちゃいけない問題だろうという ふうに思います。
 私の専門、冒頭申しましたように、人間というもの を中心に置きながら人間科学的な観点で交通の問題を 考えておりますけれども、私は、今までの交通に対す る対策というのは、減点評価といいますか、そういう 減点主義がどうも中心であったようにすべて思いま す。安全を守るためにはやっぱり減点方式でという感 じがどうもあるわけです。
 それで、私は、もちろんそれは大事ですし、今度の 罰則の強化ということも、そのことについてはもちろ ん賛成でございますけれども、しかし本当の動機づけ をするのは減点評価だけではだめで、どう加点評価し ていくかということが非常に重要なんだろうというふ うに思います。
 その意味では、優良運転者に対するある種のメリッ トを与えるという、そういう方式というのは非常に重 要だと思いますし、それから、ある種の資格のような ものをもっと、例えばセーフティー・ドライビング・ カードというのがございますが、十年無事故ですとゴ ールドのSDカードが与えられるわけです。これには 幾つか段階があるわけですが、そういった資格という のも社会がもっと基本的に認めていって、それでもっ てより高い資格を取ることによって安全を守ろうとい う動機づけをしていくとか、そういった加点の方の部 分のメリット制のようなことが非常に重要なんじゃな いかなと。
 今までの交通行政というのはどうも減点方式だけで 安全を守ろうというところにあったという、そのこと が少し問題なんじゃないかなというふうに考えており ます。
○照屋寛徳君 それからもう一点、鈴木春男参考人に お伺いいたしますが、先ほどの意見陳述の中で、更新 の前後で事故が五・八%減少していると、こういうお 話でございましたが、この更新制度の効果等の調査と いうのはどういう調査だったのか、なぜ更新の前後で 事故が五・八%も減るというように考えておられるの か、簡潔にお教えください。
○参考人(鈴木春男君) この調査は、私がやった調 査ではなくて、たしか警察庁さんの方のデータではな かったかというふうに考えておりますが、私は、明確 なことをお答えできなくて申しわけないんですが、な ぜ更新の前後にそれだけ減るかということは、やはり 更新というものが持っている御本人、ドライバーにと っての重さというのがあると思うんです。
 その前の方に事故がなくなるのは、やはり更新の 前、例えば先ほど申しましたようにゴールドの五年の 免許を今まで持っておりますと、次の免許更新のとき に五年の免許が取れるところを、ここで例えば事故を 起こしてしまったら三年になってしまうというような ことがあるんだろうと思います。これは、多分先ほど のメリット制というのが生きているんだろうと思いま す。
 それから、更新後に事故が少なくなるというのは、 やはり更新というものの中でいろんな学習をしてそれ が効果を持つということではないかなというふうに考 えております。
○照屋寛徳君 それでは、鈴木共子参考人にお伺いを いたします。
 最愛の息子さんを亡くされて大変つらかっただろう と思いますが、今、鈴木春男参考人からありましたけ れども、運転免許の有効期間、これは更新とも関連す るわけですが、これが今度法改正になるわけですね。 わかりやすく言うと、原則三年から原則五年になる と、こういうことのようですが、交通事故の被害者遺 族の立場で、それから参考人が経験をされたことを踏 まえて、この免許の更新期間の延長、有効期間の延長 ということについてはどのように考えておられるでし ょうか。
○参考人(鈴木共子君) 免許の更新ということは、 先ほどもお話しさせていただきましたが、安全運転を するための一つのチェック期間というか、自分自身の 意識をチェックする期間だと思いますので、簡単に長 くしたりとかというふうなことは少し考え物ではない かなというふうに思います、確かに更新期間が長くな ったりすれば便利にはなると思うんですけれども。
 それと、優良運転手に対しては長くても、それなり のいろんなメリットがあってもいいと思うんですけれ ども、やはり何らかの罰則というか、そういうルール 違反を犯した者に対しては免許の更新というか、いわ ゆる講習を受けたりとか意識改革というか、そういう 機会をちょくちょく与えてほしいというのは思ってい ます。
 それと、やはり死亡事故を起こした加害者というか ドライバーに対しては、それ相応の処罰というか、免 許を永久停止というぐらいまでの幅で考えてほしいと 思っています。何年かすればまた取れるというのは非 常に心外です。
○照屋寛徳君 黒崎参考人にもお伺いをいたします。
 きょうは大変いいお話を聞かせていただきまして、 本当にありがとうございました。
 黒崎参考人からは、耳の御不自由な方にとっては今 度の法改正、評価すると零点だという話でございまし た。この零点の評価を受けた法案を審議している私も 大変情けないなという思いをしておりますが、先ほど 意見陳述の中で、耳は不自由でも目でそれはカバーで きるんだ、振動で音は聞けるんだと、こういうお話を 聞いて大変私も感動いたしました。そして、具体的な 陳述された意見の内容から、なるほどというふうに思 ったわけでありますが、一方で、耳の不自由な方にと っては、公的な交通機関を整備するということも私は 大事だろうと思うんです。しかしながら、公的交通機 関の整備だけじゃなくして、やっぱり行動範囲を広げ る、社会的に参加をし活動をし生きていくという点で は確かに車も必要なわけでありますから、見通しをよ くするとか補聴器以外の補助手段の必要性、これはよ くわかります。
 そこで一点だけ。補聴器以外の音を光に変える、振 動に変えるという、外国ではどういうふうな手だてと いうか補助手段が現につくられておるのか、おわかり でしたらお教えいただきたいと思います。
○参考人(黒崎信幸君) 外国では、運転免許に関し てはそういうふうな補助手段というのは全くありませ ん。補聴器をやって運転している人はいるだろうと思 うのですけれども、これは法律の中で命ぜられてやっ ているというわけではなくて、本人が自分で自発的に 補聴器をやっているだけです。ですから、全く耳の聞 こえない人たちが運転するに当たって補助手段という のは考えていないようです、外国では。ただ、私とし ては、本来ならば補助手段というのは一切合財廃止し てほしいというのが私の願いですけれども、やっぱり 皆さん方にとっては音というのにこだわるようですか ら、音にこだわるならば、足の悪い人が車を改造する のと同じように私たちの耳のかわりになる工夫をやっ てくれないかという訴えを出しているわけです。
 ただ、法律の改正に当たっては、私も賛成したいと 思います。といいますのは、私たち、耳が聞こえな い、聞こえるということに関係なく、やっぱり一定の ルール、きちんと交通のルールを厳しくして、先ほど 鈴木さんがおっしゃっているように、責任感のない人 たちにもう少しきちんとけじめをつけるという意味 で、私も賛成です。
○照屋寛徳君 終わります。

○委員長(江本孟紀君) 以上で参考人に対する質疑 は終了いたしました。
 参考人の方々には、本日は大変御多忙な中、貴重な 御意見をお述べいただきまして、まことにありがとう ございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げま す。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十五分散会