JD発第00−19号
                          2000年6月12日

厚生省医薬安全局
企画課長 高 山 康 信 様

                          日本障害者協議会
                           代表 調  一 興

薬事関係の「障害者に係る欠格条項」について 

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 私ども日本障害者協議会(以下「協議会」という)は、国際障害者年(1981年)の前年、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」の実現にむけて組織された「国際障害者年日本推進協議会」を前身とする、全国規模の障害者団体や障害関係団体の連合組織です。
 本協議会の欠格条項の見直しに係る基本的な意見は、1998年11月に総理府障害者施策推進本部本部長宛に提出しました「障害を事由とする欠格条項に関する要望」(別添)に述べてある通りです。
 本協議会としましては、障害という属性を根拠とする欠格条項という方法をとらなくても、各資格等で必要とされる業務遂行上の能力等が審査・担保することが可能と考えております。
 つきましては、本協議会としまして、個別の欠格条項ごとに下記の通り意見を述べますので、中央薬事審議会におかれましては、薬事関係の「障害者に係る欠格条項」の全面撤廃にむけてご審議いただきたく、何卒よろしくお願い申しあげます。



1.薬剤師法関係
<欠格条項設置の理由>

 (1)処方箋を確認し医薬品を選別・調合する
 (2)患者・医師等と意志を疎通する

<欠格条項という方法以外の能力の担保の方法>
 理由の(1)につきましては、聴覚・言語に障害をもっていても国家試験に合格していれば問題はないかと考えます。視力に障害をもっている方の場合でも、現実に相当視力が低下した(1mはなれて五指が弁別できる程度)方でも業務が認められている実態を考えると、ことさら規定する必要がないのではないかと考えます。また現状におきまして、まったく視力がない方が業務をすることが困難であれば、そもそも養成課程を修了することが困難と思われ、この場合も、欠格条項としてあえて規定する理由はないかと考えます。
 理由の(2)につきましては、聴覚・言語に障害をもっている方の場合、FAX・筆談・E-Mail・手話など多様なコミュニケーション手段があります。視力に障害をもっている方の場合は、言語コミュニケーションにはまったく支障がありません。さらに「患者・医師等と意志を疎通する」という点で同等の能力を要求される理学療法士・作業療法士の資格においては、精神障害に関する相対欠格しか存在しない点を考えると、この点でも欠格条項の必要性はないと考えます。
 精神障害に関する欠格条項を相対欠格として残すことの問題点は、以下の点にあると考えます。まず、薬剤師法第5条に関する処分は行政手続法第5条第2項が適用され、「できる限り具体的な」審査基準を設定しなければならないと規定されています。しかし、精神障害の定義および能力判定は、精神保健福祉法制定時から現在に至るまで、論議がなされているが結論を出し得ていない問題であり、行政手続法の要求に応えられる基準作りは困難と考えます。さらに、実際に精神病者であることをことを理由に欠格とされた事例はない(仮にあっても非常に少数)と聞いております。実際に機能していない欠格条項は、総理府の「対処方針」が示した「真に必要な」欠格条項とはいえないと考えます。

2.毒物及び劇物取締法関係
<欠格条項設置の理由>
 (1)日常管理の異常が検出できる
 (2)流出・紛失等緊急時に対応し迅速・的確に指示ができ、危害の防止ができる
<欠格条項という方法以外の能力の担保の方法>
 特定劇物研究者に関しては、いずれも相対欠格となっているが、上述のように、行政手続法の「できる限り具体的な」審査基準の設定が困難と思われます。むしろ、日常的な管理がずさんであったり、重大な事故が発生した場合に、許可を取消すというのが現実的な運用と思われます。よって、障害の有無に関わらず、管理上の問題が起きた場合に取消す規定があれば、十分であると考えます。
 毒物劇物取扱責任者については、営業者が毒物劇物取扱責任者を選任する上で、理由の((1)と(2)ができる能力を有しているものを選任しなければならないと規定すれば充分であり、特定劇物研究者と同様に、障害の有無に関わらず日常的な管理問題等が発生すれば、取消す規定があれば、十分と考えます。

3.薬事法関係、麻薬及び向精神薬取締法、あへん法関係
 薬剤師法で述べた、精神病者を欠格とすることの問題点と同様の理由から、欠格条項は不要であると考えます。

(以下、署名)

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