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                      JD発第00−75号
2001年1月23日

警察庁交通局運転免許課
課長 田 村 正 博 様

日本障害者協議会
代表 調  一 興

「道路交通法改正試案」に対する意見

 日頃より、わが国の障害者施策の充実にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげ ます。
 さて、先般貴課においてまとめられた「道路交通法改正試案」につきまして、本協議会として下記のとおり意見を述べさせていただきます。
 つきましては、今後の道路交通法改正案の検討におきまして、当該意見を 十分にご勘案いただきたく、よろしくお願い申しあげます。



1.道路交通法改正試案(2)障害者に係る欠格事由の見直し等(以下「見直し」)の(1)において、現行法の欠格条項を廃止し、「現行の運転免許試験に合格すれば、すべて免許を与えること」とした点は賛成である。しかし「見直し」の(2)において、「てんかん、精神分裂病等にかかっている者」は「政令の基準に従い、原則として、免許を拒否する」という方針は、大きな問題を含んでおり、絶対反対である。第一に、「見直し」の<備考>にあるように精神分裂病者の寛解者及びてんかんが治癒した者を除いて一律に欠格としているが、精神分裂病が寛解していなくても、またてんかんが治癒していなくても、服薬など適切な医学的ケアを受けていれば、安全な運転に何ら支障がない者の免許取得を不当に排除しているからである。第二に、法の文言に「てんかん、精神分裂病等にかかっている者」という疾患を有する者を包 括的に表す規定を残しており、平成11年の障害者施策推進本部が決定した対処方針の内、「障害者を表す規定から障害者を特定しない規定への改正」への配慮がまったくなされていないからである。

2.現在の道路交通法下においても、実際の運用においては、「精神病者」や「てんかん病者」が一律に免許を拒否されている訳ではなく、相対欠格として運用されていると聞いている。また今回の法改正においても、「見直し」の<備考>に示されたように「安全な運転に支障を及ぼすおそれがなければ、免許の拒否の対象としないものとする」としており、実際の運用において実態に即した弾力的な取り扱いがなされる可能性もある。しかし問題は、なぜ「原則として、免許を拒否」され、例外として「拒否の対象としない」のかという点にある。「法の下の平等」を考えれば、原則拒否ということは「てんかん、精神分裂病等にかかっている者」はすべて「道路交通の安全」に支障を及ぼす者であるという前提の下でしか正当化されない論理である。こうした前提が成立しないことは、現行の運転免許行政が相対欠格として運用していることを見ても明らかである。とすれば「てんかん、精神分裂病等にかかっている者」であっても、あくまで原則は「現行の運転免許試験に合格すれば、すべて免許を与えること」であり、道路交通の安全上、真に必要最低限な制限を例外的に課すとすべきである。

3.以上のことから「見直し」の(2)を、以下のように変えることを提言する。
「運転免許試験に合格した者が、過去1年間に自動車の安全な運転に支障を及ぼすような精神機能の変調があった場合は、政令の基準に従い、免許を拒否することができる」。なお政令の基準としては、過去1年間のてんかん発作、過去1年間の被害的な妄想などの高度な思考障害などが考えられるが、具体的な基準の作成には、関係団体とのさらなる協議を経た慎重な検討が必要である。

4.「見直し」の(3)で、「免許を取り消し、又は免許の効力を停止する」とあるが、(2)に該当する場合は、1年間の免許の効力停止とすべきである。

5.今回の改正案には適正試験及び適正検査について述べられていないが、「耳が聞こえない者」の免許取得を原則容認する方針から、当然聴力検査は 廃止するべきである。

6.「見直し」の(5)で、「聴聞等の手続」を行うということは、道路交通法113条の2を改正し、精神保健指定医が診断した場合でも、聴聞を行うという意味と思われるが、ぜひこの点は試案の方向性で改正すべきである。

7.最後に、今回の法改正により、障害を有する人の運転免許取得が拡大し、安全な運転が行えるようにするために、自動車教習所や運転免許試験における障害を有する人への配慮を要望するものである。

(以下問合せ先 略)

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