医師法等に係る欠格条項の見直し試案対する意見書について、厚生労働省からの返答です。

日本障害者協議会
代表 調 一興 様


 平素より障害保健福祉行政に格別のご協力を賜リ、感謝申し上げます。
 去る3月2日、厚生労働省の「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案」試案に対し、貴重な御意見をいただき、どうもありがとうございました。
 制度所管部局とともに、いただいた御意見を検討しました結果、厚生労働省としては、以下の通りとしたいと考えております。

1.について
 本法案の趣旨は、ご指摘のとおり、障害者の社会経済活動への参加の促進等を図るためのものであり、この旨は、法律の閣議決定の際の法案の「理由」において明記いたします。
 なお、こうしたことを法律上規定することは、それぞれの法の趣旨、目的等にかんがみ、困難であることをご理解願います。
 また、法律の見直し規定については、今回の見直しは、障害者の社会参加を進めるためにできる限りの内容としており、見直しについて規定することは困難でありますが、障害者に係る欠格条項の運用に当たっては、医学・医療の水準や障害を補完する機器の発達等の科学技術の水準等に応じて柔軟に対応してまいりたいと考えております。

2.について
 試案のような表現としましたのは、対象となる者を明確に規定すべきという法制上の観点に鑑み、「心身の障害により」という規定を設けなければ、どのような人を対象とした欠格事由であるかが不明確な規定となり、その結果、省令で定めることができる者の範囲が、現在の範囲に比べても無限定に広がりすきることから、「心身の障害により」として、相対的欠格事由に該当しうる者の範囲を明確にする必要があるとの考えによるものです。ご提案のありました規定案に関しましては、対象が広がりすぎ、かえって不明確になりかねないと考えており、原案のとおりとすることにつき、ご理解いただきたいと思います。

3.について
 医療・薬事関係等のそれぞれの資格等に必要とされる機能は、業務により異なりますが、いずれの業務遂行にも必要な能カは「認知、判断及び意思疎通」であり、その旨省令に規定することとしたいと考えております。
 その場合、そもそも欠格車由の対象とならない人をできるだけ明確にするため、それぞれの資格等ごとに必要な機能(相対的欠格事由)を省令で列挙することとしております。
このそれぞれの資格等に必要とされる機能の範囲については、その業務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体又は精神の機能であるかどうかという観点から決めているものでありますが、これらの機能の障害があっても、それを補う補助手段や治療等による障害の軽減により、業務が遂行できる場合があるとの考え方に基づき、免許取得の判断においては、それらを考慮することとしております。
 また、免許を取得できるかどうかの判断に当たっては、当該障害について十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞いて判断することとし、さらに、免許を与えないこととする場合には、求めに応じて本人からの意見聴取を行い、当該障害について十分な理解のある医師等の専門家を同席させることにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、適切な判断ができる仕組みとしたいと考えております。
いずれにしても、判断方法については、判断事例の積み重ねも踏まえつつ、できるだけ明確にしてまいりたいと考えております。

4.について
 不服申立のための第三者機関を設けるべきとのご意見ですが、欠格を理由とする免許拒否処分には、行政不服審査法が適用され、免許権者に対して不服申立できることとなっております。
 なお、免許を取得できるかどうかの判断に当たっては,当該障害について十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞いて判断することとし、さらに、免許を与えないこととする場合には、求めに応じて本人から意見聴取を行い、当該障害について十分な理解のある医師等の専門家を同席させることにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、適切な判断ができる仕組みとしたいと考えております。

5.について
 障害を補う手段に関しては、業務の適正性を確保するため、現に用いている補助手段を前提として判断する必要があると考えておりますが、具体的な運用については、実態も踏まえながら、柔軟に運用してまいりたいと考えております。


 いただいた御意見に対する厚生労働省の検討結果は以上の通りであり、法律条文案に関しましては原案の通りとさせていただきたいと考えております。
省令その他の運用事項に関しましては、引き続き、皆様の御意見を十分にお聞きしながら、円滑な運用に努めてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

平成13年3月12日
厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部企画課長 仁木 壮