聴覚障害者を差別する法令の改正を目指す中央対策本部のパブリックコメント
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2001年3月2日
厚生労働省
社会・援護局障害保健福祉部様

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聴覚障害者を差別する法令の改正を目指す中央対策本部


「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律試案」に関し、聴覚障害者に限って意見を記します。


第1.法律事項についての意見

1.『業務を適正に行うことのできない者』との部分について
 (1) 業務を『適正に行う』とは極めて抽象的であって、主観的な解釈を認める結果となりかねないと考える。
 概念範囲として広すぎ、欠格条項廃止の精神からして権利を制限する法律条文の規定としては、不明確に過ぎるのではないか。

 (2) 単に『業務の遂行ができないことが明らかで、省令で定める者』とすれば足りるのではないか。


第2.的確な運用(省令事項)についての意見

1.省令の具体的内容について
 (1)『業務を適正に行うに当たって』『適切に行うことができない者』との部分の『適正に』『適切に』との文言(特に前者)が抽象的・主観的で、賛成できないこと、上記第1記載の通り。
 試案を前提にすれば、ここでも、省令が定める者とは『業務遂行に必要な認知、判断及び意思疎通ができないことが明らかである者とする』となろうか。

 (2) 但し、本来的には、省令である以上、法律をより具体化した条項とする必要があると考える。
 この点から言うと、業務遂行上の『認知、判断及び意思疎通』とは何か、具体的内容も規準も不明確であり、このままでは解釈次第となりかねない (判断にあたる者の主観的評価を認める結果となりかねない)。
 省令であるから、例示等の方法を用い、より具体的・客観的に明らかにすべきではないか、と考える。

 (3) また、このような包括的な規定の下で、なおかつ業種を3分類する必要があるか、どうかは疑問である。
 特に資格等取得にあたって『当該者が現に利用している障害を補う手段・・・により障害が補われ又は軽減されている状況を考慮する』として、個々の『当該者』についての状況を具体的に考慮すると言うのであれば、その都度の具体的考慮に加えて、なおかつ業種区分が必要か、疑問である。
 業種3分類というイメージが一人歩きし、業種の位置付けに社会的誤解が生じないか懸念する。

 (4)『適正な』という抽象的文言を除けば、労働安全法試案例が『…必要な〇〇(作業の内容)の操作又は〇〇(作業を行う周囲の状況等)の認知若しくは判断』としているのは、客観的かつ具体的で、支持できる。


第3.省令の資格等の取得についての意見

1.資格取得の規定試案について
 (1) 『当該者が現に利用している障害を補う手段・‥により障害が補われ又は軽減されている状況を考慮する』としているのは、個々の『当該者』に
ついて具体杓に考慮することであり、賛成する。

 (2) 但し、『現に利用している』と利用を現状の範囲に限定しているかのような記載と『障害を補う手段』という文言については賛成しがたい。
 聴覚障害者の場合、通訳者等の『補助者』による場合が多く、これは社会的には手話通訳者が中心であるが、教育機関のレベルでは筆記通訳により、社会に出てから手話通訳に移行する例も多い。そして「補助者」を「手段」という物的イメージのことばで表現することには抵抗がある。
 従って、『当該者が障害を補うために、現に利用し、または今後の利用が可能な補助者もしくは補助手段』等とするのが正当かと考える。


第4.資格毎の判断方法(省令又は運用(通知)事項)についての意見

1.資格毎の判断方法
 (1) 医師の場合の聴覚機能の障害者についての説明は、具体杓であり、発想としては賛成できる。

 (2) しかし、臨床実習での補助的手段で、かつ普遍的・実用的と判断される範囲と限定することには疑問がある。
 第一に、『補助者もしくは補助的手段』とするべきこと前記の通り。
 第二に、障害者の場合、個々の工夫と努力に頼る面も強く、普遍的なものと限定されると実情に合わない場合がでてくると思われる。
 第三に、臨床実習と明言すると、本人の力量と関係なく、実習機関の設備・配慮の有無で決定されてしまうことを懸念する。

2.判断者は誰か
 (1) 判断者は免許権限者であり、免許権限者が可否を評価・判定するが、薬剤師等の場合、『厚生労働省の担当者及び医師等の専門家』が立ち会い・確認して判定する場合があるとしている。

 (2) しかし、法律上の判断権限者はともかく、現実に判断・確認する者は誰か、ということが重要である.
 現実に判断・確認する者によって、評価・判断が左右されることのない客観的担保が必要となる。
 この点について、資格分野での専門家のみでなく、『当該』障害の問題について十分な理解・経験を有している専門家が加わり、客観性を保障する必
要がある。


第5.意見聴取手続きについて(法律事項・省令事項又は運用(通知)事項)の意見

1.意見聴取者について
 (1) 免許権限者の指定する職員が意見を聴取することがあるが、この職員は、資格分野についての専門的知識を有する者だけでなく、『当該』障害問題について十分な理解・経験を有している職員が加わる必要があること、前述の場合と同様である。

 (2) 二次的聴取機関設置
 意見聴取は一回限りというイメージのようであるが、判断の正当性について不服がある者に対して、この一次評価の可否を審査する機関(中央審査機関)を設置するのが望まれる(メンバーは、第4.2.(2)のとおり、資格分野での専門家と障害者問題の分野での専門家とし、第三者委員を加えるのが望ましい)。

 (3) なお、意見聴取についても補助者・補助手段が認められなければならないこと、前述のとおり。


第6.付言

1.教育保障
 (1) なお、この法令の改正と並行して、教育機関での入学・就学保障が必要となる。『障害が補われ又は軽減され』る状況を確保しようとする態勢が、教育機関に必要である。

以上

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