障害者に係る欠格条項の見直しに伴う
船舶職員法施行規則及び水先法施行規則の一部改正に関する意見


障害者欠格条項をなくす会
(代表 牧口一二・大熊由紀子)
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国土交通省海事局船員部船舶職員課 課長殿

2001年8月20日

意見1. 身体検査基準を、実質的な身体機能、運動機能に着目した「能力基準」にすること、および、船舶職員法施行規則、水先法施行規則の障害者にかかわる用語を適切なものにする方向が出されているところですが、それについて賛成です。

 以下に述べる内容は、国内外の海で最近三年間、ヨットセーリングしてきた経験をもつ人からの意見を反映しています。

 病気や障害をもっていても安全に航行できる状態は多様にありえますが、従来は、病気や障害があることをもって除外するという見方でした。またはその医学的な程度で線引きするありかたでした。今回の見直しで、その点いくらか転換が始まったととらえています。しかしまだまだ十分ではありません。

 「心臓疾患、てんかん、精神障害、言語障害、奇形、四肢の欠損、運動機能障害その他の疾病又は身体障害(軽微なものを除く。)がないこと。 上記の疾病又は身体障害があつても軽症で勤務に支障をきたさないと認められること。ただし、小型船舶操縦士の資格については、身体障害があつてもその障害の程度に応じた補助手段を講ずることにより勤務に支障がないと認められることをもつて足りる。 」(身体検査基準表より要約)については、このように障害や病気を列記するのでなく、「能力基準」に徹底する基準を考えるのが理にかなっているのではないでしょうか。

 用語の検討は当然必要なことですが、言葉をいいかえるだけではだめで、用語が使われてきた発想を基本から見なおし転換する、その中で用語をも適切な言葉をさがす必要があります。

 例えば、色覚も、操船上その人が「色弱」「色盲」があること自体が問題なのではありません。机上の色覚検査ではかるのではなく、「実際のブイの色を識別できればよい。」など、現在すでに五級船舶操縦士では実施されているように、現場で必要なことに応じて基準を設ける考え方でいくということです。
 具体的には、灯標・浮標などの色においては赤と緑、黄と黒を見分けられ、灯光などの光においては赤と緑と白と黄が見分けられれば、操船の場面において殆ど問題がないはずです。
 なお、「色弱」「色盲」といった言葉も、色を識別できないかのような誤解を広めてきたため、これを「色覚特性」とするなどの代案が寄せられているところです。

 自動車に例えれば「ハンドルを握り姿勢を保持できるかどうか。個人にあわせて製作・調整した自動車、運転装置を使用して判定を受けることができる。」といった「基本的にこれができるかどうか」という基準です。

 このような考え方から、現行の「身体検査に合格しない者に対しては、学科試験は行わない。」というシステムを変えて、実技試験+学科試験によって判定することとし、実際の操船ができるかを基準とした実技試験の一部分として、最低限必要な範囲の身体検査を行うようにしてはどうでしょうか。
いうまでもなく、この場合においても、実際上操船できるのに身体検査のみによって不合格にするのは不公正であり、そのようなことがもし行われるとしたら見直しの意味はありません。実際上、必要な補助的手段を活用して操縦できるという判定基準を明確にもつべきです。

 また、小型船舶操縦は、自動車操縦とは異なり、免許の所持者が同乗しているならば、無免許者もハンドルを握ることが実際上可能です。これはおよそボートに乗っている人ならばみな知っていることです。
 たとえば、同乗者にこと細かに点検すべき項目や操縦における技能のコツを伝えることができるほどに、学科・口頭試問が優良な人であれば、その人自身が実際の操船ができないからといって直ちに免許を与えないのは不合理です。なぜならば、船外機程度の運転しか経験のない4級船舶の所持者よりも、1級船舶程度の学科・口頭試問の知識を持っている者の方が、実際の船の上でははるかに有用です。操船運行のみならず、緊急事態という状況下に おいても同様のことが言えます。
 従って、機器や設備の利用によってもその人ができない操船操作がある場合にも、補助者の同乗を条件に免許を与えること、そして補助者は「免許者の指示に適切に従うことのできる(程度の身体機能を有した)補助者」と規定することが可能だと考えます。


意見2. その他の提案として

 見直し後の基準についても、何年ごとといった時期を区切って継続的に検証を加え、検証結果を公開してパブリックコメントを求めることを提案します。

 実際にこれからさまざまな人が航行実績を積む中で、新しい方法・技術も生み出されるでしょう。免許試験は、実際の操縦に必要な技能と知識、その人個人としての適性をはかればよいのであり、必要性のない基準をこと細かく設定する方向や、障害や病気をもつ者だけに対しての限定条件をつける発想・方向をとらないことを求めます。

 検証については、航行経験のある障害当事者や、障害者とともに航行しているセーリング団体などを中心に、具体的にどのような時に、直接に障害による大きな困難や危険があるのか、それらを可能にし、安全にする方法、たとえば、上述した補助者が同乗しての乗船や、音を振動や光にかえて伝達する・その逆といった技術開発と普及についても、さらに検討を進める必要があります。