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平成11年7月16日
中央障害者施策推進協議会 企画調整部会での配布 資料2−2
障害者に係る欠格条項の見直しに係る検討方針の視点にする報告書
平成10年12月15日
中央障害者施策推進協議会
企画調整部会


欠格条項見直しに係る検討方針の視点

基本方針

 精神障害、視聴覚障害等障害を理由とする各種資格等の制限が「障害者の社会参加」(平成5年に障害者基本法第三条で基本理念として規定)を不当に阻む要因とならないよう、単なる用語改正に止まらず実質的な見直しについて検討を行う必要がある。
 また、見直しにあたっては、最近における医学やリハビリテーション技術、情報通信機器の発達等の科学技術の進歩、向上の成果を十分に勘案すること等により、障害者のもつ可能性を最大限に活かすよう配慮するべきである。

資格等の制限緩和の社会的影響性

 政府として見直しを進めるに当たっては(統一的な対処方針案の策定)、省庁ごとの対応の検討結果を基に対処方針案を取りまとめることとされている。
 このため、各省庁は障害と資格制度等との関係を適正に整理し、欠格条項の必要性を改めて検討した上、制限を緩和した場合の社会的影響性の度合いを客観的に評価勘案していくことが必要であろう。(その場合の社会的影響性とは、「一般国民への社会的・物理的影響力、生命の危険、安全性の保持、業務遂行の可否等」をいう。)

検討方針の視点

 欠格条項の撤廃、緩和が可能か否か。 → 影響性との関係を要考慮。
→ 撤廃・緩和の可能性の確認(改正項目、日程等含む)

I. 撤廃・緩和の視点

1、試験等で確認できるものについては欠格条項を撤廃することの検討

〇 障害の有無を見なくても、実技試験、面接等で業務遂行能力を客観的に測ることが可能である制度については、欠格条項を撤廃すべきではないか。

〇 客観的に障害そのものが真に業務遂行に影響を及ぼすのでないのではないか。
本人の能力等(心身の機能含む)の状況が業務遂行に適するか否かが判断されるべきものであるので、その判断基準を明確にすべきではないか。

2、絶対的欠格事由から相対的欠格事由への改正の検討

〇 客観的な障害程度の判断、補助的な手段の活用(補助者、福祉用具等の活用)、一定の条件の付与等により、業務遂行が可能となる場合があることも考慮されるべきであり、その対応策として絶対的欠格事由を相対的欠格事由に改めることを原則とすべきではないか。(資格取得時及び取得後も同様)

(例)
専門性が特化している職種は、補助者をつければ、経験を生かし業務の継続が可能となる場合があるのではないか。

3、障害を理由とする欠格事由から障害者を特定しない規定への改正の検討

〇 欠格条項を撤廃することが困難な場合は、その条項において「障害、障害者」を表するのではなく具体的心身の状況を必要条件として規定するべきではないか。

(例)
法条項:心身の故障による業務遂行に支障がないこと 等具体規則等で担保

視覚:両眼で・・以上の視力(矯正視力含む)を有すること
聴覚:・・cmの距離での会話ができる聴力(矯正聴力含む)有すること
言語:音声又は言語(補助具利用含む)で意志の疎通ができること
精神:自身を傷つけ又は他人に害を及ぼす恐れのないこと 等

〇 この場合、視覚は点字、拡大器等、聴覚・言語は手話等の活用により、業務遂行が可能な場合もあることを考慮する必要がある。

4、一定の条件を付し条件成就後に資格を付与する規定の検討

〇 既資格者や補助者の下で一定期間試行的に業務に従事した者で、事故等特段の問題がなければ、資格を付与するという「条件付資格の付与」を検討するべきではないか。(資格取得時及び取得後も同様)

〇 一定期間業務に従事することにより、業務遂行能力の有無が判断できることから、障害があると判断された場合であっても、直ちにそれをもって資格を制限する必然性がないのではないか。

(例)
精神障害者の場合は、補助者がおり服薬管理すれば安全性の担保は可能である場合が多々あり、症状が軽度で症状が寛解状態の場合であれば障害があっても業務遂行能力は確保できるのではないか。

5、資格等の回復規定の明確化(資格取得後の制限への対応)の検討

〇 欠格事由が止んだときは、再免許を与えることを明記すべきではないか

(例)
1) 薬剤師免許は絶対的欠格事由である視力、聴覚、言語の障害及び相対的欠格事由である精神病についていずれも欠格事由が止んだときは、再免許を与えることができることを明記している。

2) 医師免許は相対的欠格事由である精神病については欠格事由が止んだときは、再免許を与えることができることを明記している。


 II. 撤廃・緩和にあたっての留意点

1、判定方法、基準の改正の検討

〇 資格の判定方法、基準について、次の点についてどう考えるか
・画一的な医師の診断書(一般健康診断書)のみでの判定
・行政のみによる任意の判定
・医師の診断書に基づく行政による判定
・当事者間による任意の判定等の改正の可否はどうか。

・試験、検査
・日常生活動作能力調査
・面接、医師・家族・第三者の意見聴取等の総合的な判定の実行が可能かどうか
→・規制緩和の観点に逆行との批判にも考慮する必要がある(煩雑な手続きになりかねない)
→・科学的客観的な基準を設けることにより簡便な手続きとなり得ることもある。

2、障害程度の明確化が可能か検討

〇 資格任務遂行に必要十分な程度の心身状態を確認し確保するために客観的な障害状況を確認しなければならないという観点から、各制度毎如何に対応できるか。

・検査項目
1)肢体、視覚、聴覚、言語別
2)精神障害(含む精神薄弱、てんかん)の障害程度の判定方法

・検査基準において障害及び障害者を特定せず業務遂行能力を判定できるような検査項目の策定が必要ではないか。
・身体障害は障害を特定しない具体的「程度規定」が可能であろうと考えられるが、精神病、てんかん等の精神障害、及び精神薄弱において障害を特定しない具体的程度規定をいかに行うか。

(備考)
1)これまで精神疾患については治療法が判明しなかった等から一部の資格制度において、 精神疾患と診断された場合その症状に関わりなく一律に制限されている
2)しかし今日の医学の進歩等により、精神疾患を有するものの一部は障害を有しないものと同様の日常生活を営むことが可能となってきており、一律に資格取得を制限する合理的理由は乏しいという観点から、厚生省関係の職種は絶対的欠格条項から相対的欠格条項に改めたといわれている経緯がある。

この改正により厚生省関係職種は「毒物危険物取扱責任者」を除き全て精神は相対的欠格事由となった

平成5年 栄養士、調理師、製菓衛生師、けし裁培の許可、放射線技師
平成7年 美容師、理容師


3)これらの経緯から、各種資格制限見直しにあたって、厚生省には、障害者に関する医療等専門的知識の蓄積、過去の見直しの作業にあたっての検討状況、関係機関・団体との調整状況、見直し後の各制度の施行状況、支障の有無、社会参加の度合い等に関する情報の蓄積が多数あり、これらの情報が開示され活用していくことが必要である。

3、絶対的欠格事由が相対的となった場合、行政の裁量権が増すがその場合の影響を考慮することの検討

〇 裁量で欠格ではないと認め、事故が起こった場合の民事責任、行政責任及び裁量で欠格であると認め、該当者が不服として訴訟等となった場合等において行政責任が増大することの対応方策についてどう考えるか。

・ 客観的科学的判断基準の策定及び行政の公明性の確保が必要であろう。
・ 裁量権を客観的な方法(裁定委員会の設置等)で担保することが可能か。
→ ・規制緩和の観点に逆行との批判にも要考慮(煩雑な手続きになりかねない)

4、条件付き資格付与の場合の条件策定の検討

〇 試行期間等の条件は、障害者個々が有する可能性や能力と業務の特性を加味して策定すべきではないか。


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